「大谷2世」の言葉はまだ使わない 無限の可能性を秘めた山崎隆之介(東京城南ボーイズ)
2018年8月、U-15日本代表に選出された金井慎之介投手の取材に訪れた際、東京城南ボーイズの大枝茂明監督は興奮気味に一人の1年生を名前を挙げた。
「今年、ジャイアンツジュニア出身の山崎隆之介という選手が入ったんですよ。すでに身長は180センチくらいあって身体能力抜群です。大谷翔平選手みたいになれますよ」
その山崎選手は今、身長は187センチまで成長して3年生たちに混ざって春の全国大会にも出場を果たした。今回は、そんな山崎選手のこれまでの歩みや野球観などから、その将来性に迫っていく。
小学校を卒業する時には身長は180センチ近くまで成長
山崎隆之介(東京城南ボーイズ)
ジャイアンツジュニア出身の山崎は、小学校時代から目立つ存在であった。小学校6年時にはすでに170センチに達しており、投手としても球速は120キロを記録。小学校を卒業する時には身長は180センチ近くまで成長し、都内でも名の知れた存在であった。
「小学校の頃はずっとピッチャーだったので、やっぱりピッチャーとして自信を持っていました。ジャイアンツジュニアには、ジャイアンツの方の推薦で選んでいただき、すごく豪華なチームで野球ができてとても嬉しかったです」
また山崎選手はジャイアンツジュニアでの経験を振り返ると、楽しかった一方で「自分も負けられない」といった闘争心も芽生えたと振り返る。選手たちは皆、技術や力を持っているだけでなく高い意識も持ち合わせており、そういった環境の中でプレーできたことは非常に有意義なものとなった。
「みんなすごい力を持った選手たちが集まっていたので、自分はまだまだだな、もっと頑張らないといけないなと思いました。特にバッティングなんかは、みんな本当に意識が高いなと思いました」
キャッチボールをする山崎隆之介(東京城南ボーイズ)
ジャイアンツジュニアでも活躍を見せた山崎選手は、中学に進学する際には都内の強豪・東京城南ボーイズへの入団を決めた。数あるチームの中から東京城南ボーイズを選んだ理由について、山崎選手は次のように語った。
「家は板橋の方なのですが、どのチームに入団するかすごく迷っていました。入団する時期も周りより遅れていて、どうしようかなと思っていた時に東京城南ボーイズを見学に行ってとても雰囲気がいいなと思いました。
みんな楽しそうに野球をやっていて、チームのレベルもとても高いです。ここなら成長できるなと思って入団を決めました」
山崎選手は、この決断が結果としてとても良かったと振り返る。山崎選手がそのように感じることができたのは、東京城南ボーイズの独特の育成方法があったためだ。
ゆっくり楽しく野球に取り組めたチーム方針
一塁守備につく山崎隆之介(東京城南ボーイズ)
東京城南ボーイズの大枝監督は、山崎選手が入団したときのことを振り返り、次のように語る。
「すごい選手が入ってきたなと思いました。すぐに上級生に混ざっても遜色なくプレーできると思いましたが、ウチは1年生の間はサッカーなどをさせながらゆっくり休ませる方針があります。山崎も例外ではなく、いつもサブグランドでサッカーを楽しんでいましたし、投手として一切ピッチングはさせませんでした」
山崎選手は、この東京城南ボーイズの指導方法が自身に非常に合っていたと振り返る。ゆっくりと楽しく中学野球がスタートしたことで、ストレスも無く楽な気持ちで野球に取り組め、なおかつ身体的にもリフレッシュできたのだ。
「自分もサッカーからのスタートでした。小学校の頃はずっと投げていたので、そこでゆっくりでき、またしっかり頑張ろうと本格的に野球に取り組めるようになりました。怪我も成長痛もここまで一切ありません」
ゆっくりとした環境の中でリフレッシュできた山崎選手は、この春から遂に大器の片鱗を見せ始めた。
3月に行われた第49回春季全国大会では、ヒットこそ放つことは出来なかったが、ライトポール際へあわやホームランかという大飛球を放ち、観衆の度肝を抜く。
またこの春からは投手としても本格的に復帰し、少しずつ強度を上げながらのピッチングも始めた。
この春からは投手の練習も再開した山崎隆之介(東京城南ボーイズ)
まさに満を持しての始動に、周囲の期待も高まるばかりであるが、意外にも山崎選手本人は冷静な目で自身を俯瞰して将来を見据えている。
「将来的には大谷翔平選手のような、投手としても打者としてもプロの世界で1番になれる選手になりたいと思っています。なので中学野球も高校野球も、あくまで通過点と考えています。もちろん全国大会や甲子園にも行きたいですが、やはり最終的な目標が一番大事なので」
また大枝監督も、山崎選手と全く同様の考え方を示す。
「僕がイメージしているのは、まさに大谷翔平選手です。投げても打っても良い選手なので、大谷選手のようになって欲しいなと思いますね。そのためには今は本当に無理をさせず、ゆっくり育てていきたいと思います」
「大谷2世」
あえてその言葉はまだ使わない。
だが、いつかその「キャッチコピー」を心のままに使える日が来ることを楽しみに待ちたい。
文=栗崎 祐太朗