「野球が上手くなるための才能」を備えたU-15日本代表 小畠一心(オール住之江ヤング)【前編】
中学野球のトップレベルの選手が集まるU-15侍JAPAN。昨年の8月にパナマで開催された、WBSC U-15ワールドカップでは惜しくも4位という結果に終わったが、中学野球最高峰の選手たちが日本代表の名に恥じないプレーを披露した。
その中で主に5番打者として活躍し、高い身体能力を見せつけたのがオール住之江ヤングの小畠一心だ。185センチ80キロと、中学生離れした屈強な体格を武器にパワフルな打撃を見せ、オール住之江ヤングでは投手としても、140キロを超えるストレートを武器にチームを牽引した。
今回は、そんな小畠の成長の過程やU-15日本代表の経験から得たものについて迫っていく。
1年生の間は走っている記憶しかない
小畠一心(オール住之江ヤング)
小畠一心の野球ルーツは、ソフトボールからスタートした。当時は全くの無名だったと謙遜する小畠だが、小学生にしてすでに身長は170センチをゆうに超えており、自然と目につく存在であった。
「地域の小さなソフトボールのチームで、大会でも優勝などはあまりありませんでした。中学校も部活の野球部でやろうかなと考えていましたが、今の監督さんにお誘いいただいて入団することになりました」
ソフトボールではキャッチャーを務めていた小畠だったが、オール住之江ヤングの太田忠男監督は小畠の恵まれた体格に大きな魅力を感じ、投手をさせる前提で声を掛けた。太田監督は、小畠が入団した際の経緯を振り返って、次のように語る。
「体もとても大きかったので、ピッチャーさせるからウチに入って来いと言いました。ボーイズとかに行くのが普通かなと思いましたが、ウチに入ってきてくれて良かったですね。入ってきた初日からピッチャーとして練習させました」
キャッチボールを行う小畠一心(オール住之江ヤング)
こうして大きな期待を背負う中で、オール住之江ヤングの一員となった小畠であったが、いざ入団するといきなり中学野球の洗礼を浴びることになる。
高校野球での活躍を見越して、体作りや体力作りを重要視しているオール住之江ヤングでは、平日でもみっちりと走り込みを行っている。体は大きかった小畠だが、はじめは先輩たちのペースについて行くことが出来ず、体力不足を痛感したと話す。
「入ってからの練習は地獄でしたね。1年生の間は走っている記憶しかありません。
体力がある方ではないですけど、それなりについていけるかなと思っていました。でも、先輩たちと一緒に走るとどんどん差が開いていくので、そこを埋めようと必死にやっていました」
洗礼を浴びたのは、体力面だけでは無い。ソフトボール出身の小畠にとって、牽制やクイック、変化球への対応などは初めて経験することだった。投手を始めた当初は、ミスをすることや苦労も非常に多かったと小畠は語る。
「けん制もクイックも全く分からない状態だったので、そこが一番苦労しましたね。試合で何回もボークをしました。コーチと一対一でひたすらクイックの練習したり、バント処理の練習も繰り返しやって何とか出来るようになりました」
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オール住之江ヤングの仲間と共にガッツポーズを見せる小畠一心(右から3番目)
ソフトボールとの違いに大きな戸惑いがあったことを告白した小畠であるが、実はこの時、小畠のあまりにも早い成長スピードにとても驚いていたと太田監督は明かす。
「とにかく上達が早い子です。普通1年かかるところを3カ月くらいで完璧に仕上げてくるんで、次のステージを教えるのが楽しかったですね。できるのが早すぎて、本当にできてるのかなという感覚でした」
小畠自身が、技術向上の一助になったと話すのがメモを取ったことだ。その日に言われたことや技術のポイント、大事だなと感じたこと全てノートにメモすることを習慣にしたことで、グランドで教えてもらったことも忘れず、自分にとって大事だと思う事が整理されると小畠は強く語る。
「教えてもらって自分が大事だなと思ったことは取り入れて、違うなと思ったり、試してダメだなと思ったら、それはやらないようにしています。
自分は野球が好きなんです。人に言われたことを自分で考えて聞き分けていくところが、自分の一番良いところだと思います」
打撃練習を行う小畠一心(オール住之江ヤング)
また太田監督も、小畠の成長スピードの源になっているのは「野球を純粋に楽しむ気持ち」ではないかと推測する。野球を心から楽しんでいるからこそ、向上心も高く、自ら進んで情報を取りに行き、その情報を確実に自分のものに出来ているというのだ。
「インターネットでも情報を集めて、それ見てシャドーをしたり、繰り返し練習をしているようです。
ある時、小畠に『体もでかいから広背筋をつけたらとんでもない選手になるよ』と言ったことがありました。そしたら自分で色々なトレーニングを調べてきて、『これでいいですか』と自分から聞いてくるようになりました。こちらが言ったことに対して、倍くらいの情報を他で探してくる子です」
これほどにまで野球を楽しめることは、「才能」と言っていい。小畠には、「野球が上手い才能」ではなく、「野球が上手くなるための才能」が備わっていたのだろう。
前編はここまで。後編ではU-15日本代表でのエピソードや、高校野球に向けた意気込みを伺いました。後編もお楽しみに。
◆投手として打者として「打倒・大阪桐蔭」を目指す 小畠一心(オール住之江ヤング)【後編】
文=栗崎 祐太朗