宮里優吾(岩倉)目標は千賀。伝家の宝刀・フォークを手にプロ入りの夢を目指す【後編】
最速147キロのストレートに落差の鋭いフォークを武器に東京の高校野球を牽引した岩倉・宮里優吾。今後のステージでの活躍が期待される剛腕に、高校野球3年間を振り返ってもらった。
後編では高校野球ラストイヤーを中心に話を聞いてみた。
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宮里優吾(岩倉)最速147キロの剛腕は下積みを重ね、飛躍の瞬間を待ち続けた【前編】
飛躍を迎えた2年生の秋
2年生の秋・八王子戦で先発した宮里優吾(岩倉)
2年生の夏は初戦の修徳に敗れ、早々に新チームが始まった岩倉。その中でエースという立場になっていった宮里。責任と自覚が大きくなったことで、同じ投手陣の中で誰よりも練習に取り組み、周りからの信頼を勝ち取ることを大事にしてきた。
そして迎えた秋、岩倉はベスト8進出。春のシード権を確保し、大きく躍進する大会となった。宮里もエースとしてチームを牽引してきたが、そのなかで最も大きかったのがフォークボールを使えるようになったことだった。
「1年生の秋からも使っていましたが、今ほどの落差やスピードはなかったんですし、抜けてしまうこともありました。ですので、リストの強化を2年生の夏の大会前からやって強化してきましたが、それで抜けてしまうことがなくなりました」
このフォークのポイントは「真っすぐと同じ軌道で落としたいので、抜くというよりも腕をしっかりと振り切ること」だと宮里は語る。しかし、豊田浩之監督はより明確に分析してくれた。
「2年生の秋ごろに牽制が早くなったんです。当時の宮里は左足を踏み出した時、右腕を下ろしたままだったんです。それだと腕が遅れて出てしまうので、ボールが抜けてしまうんです。そこで腕を回すようにしてトップを作るようにしました。そうしたら腕を上から叩けるようになりました」
宮里優吾(岩倉)
こうしたフォームの微妙な変化を続け、フォークが伝家の宝刀にまで昇華した。宮里はこの武器を擁して秋を投げ抜いた。
「一番ポイントになった大会ですかね。フォークが通用するとわかりましたし。ただ東海大菅生戦では、点数を取られるときは甘いボールを打たれたので、そういったチームが上位行くチームなんだと思いました」
こうして宮里はベスト8で秋を終えたが、その後は12月からのキューバ遠征に行く東京選抜に選出された。「遠征があることを知ってから選ばれたかったので、嬉しかった」という遠征で海外の強打者に向かって確かな手ごたえと課題を見つけてきた。
「フォークで空振りを取れたので通じると思いましたが、浮いてしまうと打たれました。なので、決めに行く時こそコントロールが大事だと思いました。
それとストレート。どうやったらスピードが上がるのか。話を聞いたりしましたが、谷(幸之助)のボールは重かったので聞いてみました」
豊田監督も「良い投手はストレートが低めのストレートが決まりますが、宮里はそういうのがない。低めに決まっても質が悪い」と言うようにストレートを課題に挙げている。宮里もそれを理解したうえで、オフシーズンはストレートのレベルアップをテーマに過ごしていた。そのきっかけになったのが谷の教えだったのだ。
[page_break:千賀滉大のような投手を目指して]千賀滉大のような投手を目指して
トレーニングをする宮里優吾(岩倉)
「谷は指が短いので、切るというよりも握っていたんです。そこからチームに戻って豊田監督にも指導してもらいました。
今はリリースの直前まで親指を離さないで、リリースの時にまずは親指で回転を掛けて浮かせます。その後、人差し指と中指の2本でもう1回スピンを掛けるようにしています」
こうしてストレートに磨きをかけつつ、トレーニングで体力向上を図った。満を持して春の都大会で勝ち、夏へ弾みを付けたかったが、岩倉は部内の問題で不参加。これで夏はノーシードとして甲子園を目指すこととなった。
夏までの最後の数ヶ月間について、「冬場のトレーニングの延長と、ドリルで体力の強化に充てました」という宮里。この時期の宮里のことを豊田監督は「本当の意味でしっかり練習に取り組めた時期だった」と語る。
「1年生と2年生で登板していますが全て初戦敗退。本来なら大会を通じて課題を見つけられるはずですが、早々に負けてしまいました。
2年生の秋は結果を残せましたが、体力づくりすべき冬場は選抜チームなどで満足にできていない。加えて春の大会に出られなかったので、危機感が薄かったんです。けどプロのスカウトからの評価を伝えると目の色が変わりました。そうすると強豪相手にもしっかり結果を残せるようになって、意識が変わりました」
宮里優吾(岩倉)
こうしてノーシードから頂点を目指した岩倉。初戦の東洋を2対0で下すと、2回戦では「チームとして勝てたので印象深い」と宮里が振り返った朋優学院に延長12回の末に2対1。接戦を制するなど5回戦まで勝ち上がった。
5回戦の都立高島戦では6回途中から登板して無失点の快投。チームの勝利へ右腕を振り続けたが1対4で敗戦。最後の夏はベスト16で姿を消した。
宮里自身も、「悔しかった」という最後の夏を終えて、現在は大学に向けて準備を進めている。
「体づくりとボールのレベルアップがプロで戦うためには必要だと思いますので、しっかりやっていきたいです」
フォークを決め球にし、スタイルが似ている千賀滉大投手のような投手を目指していくことを語った宮里投手。豊田監督はそんな宮里投手に関して、期待を持っていた。
「下半身の使い方がまだまだですが、もっと良くなると思います。性格的にも、強いチームに対して向かっていく姿勢ですので、プロ向きなんだと思います。しっかり鍛えれば可能性があると思います」
4年後のドラフト会議で宮里優吾の名が呼ばれるのを楽しみにしたい。
(取材=田中 裕毅)