Interview

柳田悠岐、糸井嘉男を凌ぐスケールを持つ、ホームランの求道者・佐藤輝明(仁川学院-近畿大)【前編】

2019.10.20

 大学球界を代表する飛ばし屋スラッガーとして名を馳せる近畿大・佐藤輝明(3年)。来秋のドラフト1位候補にも挙がる逸材を直撃すべく、近畿大野球部グラウンドが位置する奈良県生駒市を訪ねた。

お金を払ってでも見る価値がある打撃練習

柳田悠岐、糸井嘉男を凌ぐスケールを持つ、ホームランの求道者・佐藤輝明(仁川学院-近畿大)【前編】 | 高校野球ドットコム
インタビューに答える佐藤輝明

 「グラウンドのライト後方に民家があるんですよ。普通はそこまで届かないんですけど、佐藤が打つと民家まで届いてしまうんです」
 取材の窓口となり、グラウンドで出迎えてくれた近畿大野球部・湯佐凌大主務がそんな話をしてくれた。

 「高い防球ネットの設置を学校にお願いしたところ『今まで必要なかったのに本当に必要なの?』と言われ、業者が調査に来たのですが、打撃練習で佐藤が打った打球がいきなり民家の屋根の瓦を直撃してしまって。『これは必要だ!』となり、即、ネット設置の認可が下りました」

 関西大学球界を代表する飛ばし屋スラッガーであることを裏付けるかのようなエピソードをいきなり聞くことが出来、とてつもないワクワク感に襲われた。「正直、お金を払ってでも見る価値のある打撃練習だと思います」。

 実際、打撃練習で目の当たりにした打球のスピード、飛距離は圧巻だった。プロの世界でもここまで飛ばせる日本人打者はそうはいない。大学生の中に外国人スラッガーが一人紛れ込んだかのような錯覚に陥ってしまった。

 近畿大・田中秀昌監督は「大阪の[stadium]南港中央公園野球場[/stadium]で関西大の山本隆弘(現・日本生命)から打ったホームランが忘れられない」と語った。「ライトの高い防球ネットを超えていったんです。あの球場のネットを超す打球なんて初めて見た。140メートルは軽く超えてたと思う。すごいホームランでした」

プロを代表するスラッガーに引けをとらないド迫力ボディ

柳田悠岐、糸井嘉男を凌ぐスケールを持つ、ホームランの求道者・佐藤輝明(仁川学院-近畿大)【前編】 | 高校野球ドットコム
バッティング練習をする佐藤輝明

 「佐藤です。今日はよろしくお願いします!」

 すべての練習メニューが終了した後に室内練習場でおこなわれたインタビュー。至近距離で見る佐藤の体躯はまるで重量級の格闘家のようだった。打球も規格外なら、ボディも規格外の迫力だ。

 「今の身長、体重ですか? 187センチ92キロです。体脂肪率は10パーセントくらいですね」

 ド迫力ボディを誇るスラッガーとして知られるソフトバンク・柳田悠岐選手、阪神・糸井嘉男選手の公称数値がそれぞれ188センチ92キロ、188センチ97キロだが、まったく引けをとっていない。

 ドラフト候補だった大学4年生時の柳田と糸井に取材をする機会があったが、当時の柳田は187センチ88キロ。投手だった糸井は186センチ80キロと現在と比べるとかなり線が細く、アマチュア時点のボディの迫力度合いは、現在、大学3年生の佐藤に軍配が上がる。

 「中学を卒業した時が175センチ65キロ。身長は高校に入って10センチ以上伸びました。高2の冬からウエイトトレーニングを始めたのをきっかけに筋肉量が増え、体重がどんどん増えていって。練習後にジムに週6くらいのペースで通っていたのですが、高3の夏の時点で85キロ。高校野球を引退してから大学入学までの数ヶ月でさらに95キロまで増え、高校3年間で30キロ増。元々飛距離は出る方でしたが、筋トレをするようになってからはものすごく飛ぶようになりました」

 現在の課題は「確率を上げること」と語った佐藤。

 「飛距離は出るんですけど、まだまだ確率が低い。打ち損じも多いし、ボール球に手を出して自分からカウントを悪くしてしまう打席も多い。とらえる確率をもっと上げたいし、シーズンで3割打ったくらいじゃ満足できない。最低でも1シーズンでホームラン3本、打率は3割5分以上はないと納得できないです。まだまだです。もっともっと打ちたいです」

 プロの熱視線が注がれる逸材スラッガーのあくなき貪欲さがインタビュー序盤からビンビン伝わってきた。

[page_break:プロへの思いは皆無だった中学時代/ホームランの魅力にとりつかれた高校時代]

プロへの思いは皆無だった中学時代

柳田悠岐、糸井嘉男を凌ぐスケールを持つ、ホームランの求道者・佐藤輝明(仁川学院-近畿大)【前編】 | 高校野球ドットコム
佐藤輝明

 兵庫県西宮市で生まれ育った佐藤。地元の軟式少年野球チーム「甲東ブルーサンダース」に入団したのは小1の時だった。
 「ポジションは主にピッチャーとキャッチャー。ホームランもわりと打っていましたし、小学生の中では遠くへ飛ばせていた方だったと思います。身長、体重は小6の時が162センチ65キロくらい。この頃は少しぽっちゃりしてました」

 ところがタイガースジュニアに選出された直後の小6の夏にヒジを故障。剥離骨折により、約1年間のノースローを強いられた。
 「タイガースジュニアでも結局、ランナーコーチしかできなくて。投げられない期間、友達らと公園でのサッカーに明け暮れているうちにどんどんサッカー熱が上がっていきました」

 甲陵中では軟式野球部に所属。主にキャッチャーを務めたが、「野球に対する熱はそんなになかった」という。

 「当たったら飛ぶので最上級生になったら4番を打ってましたけど、家で素振りしたりということも一切なかった。中学の頃はサッカーの方が好きでしたし、野球に対する熱はあまりなく、プロ野球選手になりたいなんて思いも全くなかった。ただ、打ったボールが遠くへ飛んだ時はものすごく楽しかったです」

ホームランの魅力にとりつかれた高校時代

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佐藤輝明

 高校は自宅にほど近い、私立・仁川学院に進学。「この時ばかりはサッカー部への入部を真剣に考えた」そうだが、迷った末、最終的には硬式野球部への入部を決めた。「甲子園出場に対する執着は全くなかった」と佐藤。
 高校球児としての目標、モチベーションはどこにあったのか。そう尋ねると「目標は…ホームランを打つことでした」という答えが返ってきた。

 「高校生になって使用するボールが軟式から硬式になり、より飛ぶようになったことがものすごく気持ちがよくて。遠くへ飛ばすことに対する快感に完全にはまってしまったんです。『ホームランを打つという世界を追求したい。もっと遠くへ飛ばしたい。試合でホームランをたくさん打ちたい』という強い気持ちが芽生え、まるで『ホームランの求道者』みたいな状態で毎日を過ごしていました」
 前述した週6ペースのジム通いもホームランと飛距離を追求した先に定着した習慣だった。

 「体重が大幅に増えたことで遠くへ飛ばせるようになった。高3になった頃、自分の中で謎の自信が湧いてきたんです。『もしかしたら自分はプロにいけるんちゃうか?』という謎の自信が」

 4番・サードで迎えた最後の夏は兵庫大会1回戦敗退。
 高校通算本塁打は20本。体重が大幅に増えた高2の後半以降に放った本塁打が大半を占めた。

 仁川学院卒業後は近畿大に進学。田中監督は佐藤のプレーを初めて見た際の印象を次のように語った。
 「全国的には全く無名の子だったけど、スイングの強さがケタ外れでした。飛距離がとにかく規格外。指導をしてどうなるもんじゃない、持って生まれた『天性の飛ばす力』だなと。肩も強いし、足も速い。将来、トップレベルにいける選手だと思いました」

 前編はここまで。後編では佐藤選手の打撃論などをさらに深堀していきます!後編もお楽しみに!

(取材=服部 健太郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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