韮澤雄也(花咲徳栄)が初の国際舞台でも活躍できたのは、徹底的な自己管理にあった【後編】
ドラフト注目選手の1人してあげられる花咲徳栄・韮澤雄也。前回までは夏の埼玉大会から甲子園までの出来事を振り返ってもらった。今回は代表戦での日々、そしてドラフトへの想いを語ってもらった。
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韮澤雄也(花咲徳栄) 仲間に支えられ、ともに駆け抜けた最後の夏【前編】
コンディション、そしてメンタルの両輪がベストナインという結果に繋がった
韮澤雄也(花咲徳栄)
初めての日本代表に選出された韮澤にとって、国際試合は苦戦を強いられることとなった。
「日本人と違ってボールが少し動くので、なかなか打ちにくい。また、スピードボールがほとんどだったので、対応するのが難しかったです」
また外国人特有の投球フォームにも苦労したが、韮澤は自分なりに考えて対応策を考えた。その対応策がタイミングだった。
「今までは自分の間でタイミングを取っていましたが、早めにタイミングを取るようにして間を作るようにしました」
自分のペースではなく、相手にペースに合わせる。この作戦がハマり、韮澤は活躍することが出来た。
「速球や動くボールをしっかり打てた。絶対に打てないような投手はいなかったですし、自分の思うようなバッティングに近くて良かったです」と納得の内容だった。
しかし、これだけが韮澤の活躍を支えていたわけではなかった。それはコンディション、そして気持ちの2つだった。
「コンディションは体重と睡眠ですね。睡眠はチームで『7時間以上寝よう』、と徹底しました
そして体重。日本ではホテルが良かったので、食べ過ぎないように。逆に韓国だと時々辛い食事もあって食べられない時もありましたが、栄養士さんもいたのでそういったところに気を付けながら体重維持に努めました」
そして気持ちについて、「試合では挨拶の整列がなかったですし、攻守の切り替えや整備はゆっくりで、引き締まった空気感がなかったです。なので、花咲徳栄の時から自分のゾーンは大事にしてきましたが、代表でも自分のゾーンを大事にしてきました。高校野球と同じように気持ちを入れて、集中力を高めて全試合に挑んでいけたからだと思います」
自分のルーティーンを大事にしっかり試合に入る。そのためにも自分の時間を作り、準備を整えてきた。その姿勢はまさにプロそのものだ。
試合のための練習をすることが韮澤雄也を大きく飛躍させた
色紙を掲げる韮澤雄也(花咲徳栄)
こうした技術だけではなく、体調とメンタルの両方を準備してきたからこそ、韮澤はチーム最多の10安打。そしてベストナインという結果を残すことが出来た。「発表されたときはびっくりしましたが、嬉しかった」という韮澤は現在、自主練習をメインに次のステージに向けて準備を進めている。
「国際試合を通じて、パワーとスピードが課題だと思いました。なので、トレーニングなどをして身体を大きくしてパワーをつけています。ただ、技術に関しては国際試合で結果を残せたのは自信にしたいです」
そう語る韮澤だが、技術に対して慢心はない。大学日本代表との壮行試合で対戦した、森下暢仁の伸びのあるストレートを打席で体感し、「ああいった投手を打たないといけない」と感じた韮澤はさらなるレベルアップに余念がない。
ドラフト会議まであとわずか。「緊張とワクワクが半分半分くらい」だと語る韮澤に3度の夏の甲子園を振り返ってもらった。
「日本一を経験するなど、大舞台を3度も経験できた。そこでしっかりとプレーできたので次につながると思います」
また、最後の夏は副主将という立場でチームを引っ張ったことで、「自分の結果ばかりではなく、周りを見て声をかけられるようになりました。周りを見る力や、人を思う力を意識し始めるようになりました」と語る。
そんな花咲徳栄での3年間を、「いろんな人に支えてもらって3度の甲子園に行けました。チームメイトや指導者、親。さらには先生方にも応援に来てもらえたので、感謝の気持ちが強いです」とコメントを残した。」
将来は子どもたちに夢や希望を与える。球団に愛されるような選手を目指す韮澤。最後に色紙に一言を書いてもらうと、『練習は嘘をつかない』と書いた。その理由を聞くと、韮澤の一番の強みが見えてきた。
「岩井先生にこういった言葉を言われて、自分が思うだけなのですが、『練習のための練習ではそれなりの実力しかつかない。それでは試合では活躍できなくて、いろいろ考えて練習しないと試合で結果を残せない。だから高い意識をもって練習をしよう』と思ったんです」
韮澤は目的意識をもって1つ1つの練習を取り組んでいるのが印象的な選手。けれど、その背景には試合で結果を残すことを念頭に置いた、高い意識が隠されていた。この姿勢こそが韮澤雄也の最大の魅力なのかもしれない。
(取材=田中 裕毅)