Interview

軽く投げる感覚を掴んだからこそ厳しい夏の大会を投げ抜けた 玉村昇悟(丹生)【後編】

2019.10.12

  最速147㎞/hを投げる本格派左腕として、ドラフト候補に挙げられている丹生玉村昇悟。主将・エースとして臨んだ最後の夏はセンバツ出場校の啓新、甲子園通算12度出場の強豪・福井工大福井を破って決勝進出。敦賀気比に敗れて甲子園出場とはならなかったが、2009年の敦賀気比山田修義(オリックス)が保持していた大会通算49奪三振を超える52奪三振をマークした。今回は最後の夏の大会を振り返ってもらった。

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無名の高校だからこそじっくり成長できた 玉村昇悟(丹生)【前編】

力を抜く感覚を覚えて強豪校を翻弄

軽く投げる感覚を掴んだからこそ厳しい夏の大会を投げ抜けた 玉村昇悟(丹生)【後編】 | 高校野球ドットコム
トレーニングに励む玉村昇悟(丹生)

 最後の夏は「福井に玉村あり」と印象付ける大会となった。全5試合に先発して、大会記録を更新する52奪三振の大活躍。さらに準々決勝で啓新、準決勝で福井工大福井といった強豪を立て続けに破り、初の決勝進出を果たした。特に一番良い投球ができたと振り返るのが。準決勝の福井工大福井戦。秋の優勝校を相手に5安打11奪三振で完封と素晴らしい投球を見せた。

 この試合で良かった点を「軽く投げることができるようになったこと」と話す玉村。以前は私立の強豪校を相手にすると、初回から全力で投げることが多かった。だが、それを続けているうちに相手打者の目が慣れて、次第に痛打されるようになったという。実際に昨秋も福井工大福井と準々決勝で対戦しているが、この時は15安打8失点と打ち込まれている。そこから抜きどころを覚えるようになったことで、相手に的を絞らせない投球ができるようになっていた。

 最近では高校野球の球数制限や試合日程が話題になることが多いが、今夏の丹生も2回戦から決勝までの4試合を6日でこなすハードスケジュールだった。その中で玉村は準々決勝以降を一人で投げぬいたが、常に全力投球をしなかったことで、「キツくはなかったです」と元気な状態で最後まで戦うことができていた。

[page_break:目指す選手像は楽天の松井裕樹投手]

目指す選手像は楽天の松井裕樹投手

軽く投げる感覚を掴んだからこそ厳しい夏の大会を投げ抜けた 玉村昇悟(丹生)【後編】 | 高校野球ドットコム
玉村昇悟(丹生)

 決勝では春の北信越大会準優勝の敦賀気比と対戦。この試合でも10三振を奪ったが、3回の3失点が響き、0対3で敗戦。甲子園には惜しくも手が届かなかった。それでも試合終了直後は悔しさよりも達成感が勝っていた。だが、徐々に悔しさも湧いてきたという。

「負けた時は力を出し切ったので、あまり悔しくはなかったんですけど、今思うとあと1勝で甲子園に行けたと思うと悔しいです。できれば甲子園で投げてみたかったですね」

 甲子園で投げる姿を拝むのはプロ入り後にお預けとなった。引退後は春木監督の後押しもあり、夏休み中にプロ志望届の提出を決断。今は「体作りをしっかりすることと、指先の感覚をなくさないように基礎の反復練習をしています」とプロ入りに向けて準備が進んでいる。そして、目指す投手像についても語ってくれた。

「勝ちを積み重ねられるようなピッチャーになりたいです。目標は年間で10勝することですね。目標にしているのは松井裕樹さん(楽天)です。ストレートで押して三振があれだけ取れる。チェンジアップやスライダーも一級品で目指すところだと思っています」

 目前に迫ったドラフト会議については指名されるかの不安が大きいようだ。18歳の少年にとって、進路を左右するのだから無理もない。運命の日に朗報が届くことを心から願いたいと思う。

(取材=馬場 遼)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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