Interview

コントロール重視の投球フォームが生んだ「153キロ」。 岡林勇希(菰野)【後編】

2019.10.11

 菰野の最速153キロ右腕・岡林勇希。計画的なトレーニングや体づくりが功を奏し、2年生で150キロ近くまで球速を上げたが、2年生秋の東海大会で敗退。この大会で制球力が課題となった岡林は投球フォーム変更を決断する。

 後編では2年生秋から3年生夏にかけての成長とドラフトへ向けての意気込みを語っていただいた。

コントロール重視の投球フォームが生んだ「153キロ」。 岡林勇希(菰野)【後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
探究心豊かな速球派右腕・岡林勇希(菰野)。153キロを投げるのは必然だった【前編】

投球フォームの修正に成功し、制球力も球速も向上

コントロール重視の投球フォームが生んだ「153キロ」。 岡林勇希(菰野)【後編】 | 高校野球ドットコム
フォームを確認する岡林勇希(菰野)

 2年生秋、東海大会が終わり、オフのトレーニングシーズンに入った。その間に岡林は投球フォームの修正を行った。
 「東海大会では自滅してしまい、コントロールの大事さを思い知らされた試合となりました。それで投球フォームを見直す必要があると実感しました。修正するには、試合のない冬の時期しかないと思いました。グラブを高く掲げるフォームは速いボールを投げる上ではよいのですが、コントロールが不安定になるので、変更の必要がありました。多少、球速が落ちてもいいので、左手を伸ばした時にグラブの位置を真っすぐ伸ばして、肩のラインを一定にして投げようと思いました」

 そのモデルチェンジが成功し、150キロ超えに成功。さらに変化球も極めた。岡林はスライダー、カーブ、フォークの3球種を投げるが、その中で最も自信があるのはスライダー。指を閉じて投げるストレートと同様に、スライダーの握りも独特だ。一般的なスライダーは人差し指と中指を閉じて投げるが、岡林は指を開いて投げる。ストレートやツーシームのような握りだった。このスライダーをモデルにした人物がまた意外な人物だった。

 「スライダーは伊藤智仁さん(東北ゴールデンイーグルス 一軍投手コーチ)の握りを参考にしました。投げる際に、逆(三塁側)に指を切るイメージで投げます」

 平成初期に活躍した伊藤投手は、その世代の野球ファンにとって大人気の投手。世代の違う投手をも参考にして、自分のモノにする岡林の探究心の高さは素晴らしいものがある。

 ピッチングの総合力を高め、春の東海大会にも出場。大垣日大戦では、5回を投げ、6奪三振、1失点の好投を見せた。岡林は「コントロールを重視して投球フォームを変更したのですが、逆にスピードがアップし、コントロールも凄くよくなりました」と手応えを感じる内容となった。

 戸田監督もピッチングが大人になったと評価している。
 「投手内容はピッチングスタイルといいますか、チームメイトと協調したピッチングができるようになりました。1年生の時は自分1人でやっている野球でしたが、上級生になって、バックを守る選手、ベンチにいる選手、スタンドにいる選手の気持ちを考え、チームと一体となって投げる姿が見られましたね」

[page_break:厳しいプロの世界でプレーする覚悟はできている]

厳しいプロの世界でプレーする覚悟はできている

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意気込みを語る岡林勇希(菰野)

 さらに6月の紅白戦では自己最速の153キロを計測。岡林は150キロを投げる感覚をつかんでいた。
 「だいぶ感覚をつかみましたね。これまで150キロを投げた時は、『あっ150キロ、出ていたんだ』という感覚でしたが、この時は『じゃあ150キロ投げよう』と思えば、150キロを出せるまでの状態になっていました」

 しかし、そのままの状態を維持できるとは限らないのが投手の難しさだ。大会に入ると、思うような感覚で投げられない時期が続く。そして準決勝の三重海星戦では8回を投げて被安打13、9奪三振、6四死球、6失点と悔しい投球内容に終わり、岡林の夏が終わった。
 「準決勝は特に緊張してしまい、体が動かないピッチングになってしまいました。みんなで目指した甲子園を自分のせいで絶たれたのは申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 夏の大会が終わり、岡林はプロ入りを目指すことに気持ちを切り替え、日々の練習に励んだ。そしてテレビで甲子園を見ながら、研究することも怠らなかった。
 「特に星稜奥川恭伸投手のピッチングに注目していました。奥川投手の配球、体の使い方を参考にしながら、日々の練習に生かしていきました」
 ちなみに高校通算21本塁打、50メートル6秒台前半、遠投120メートルと高い身体能力を誇る岡林は野手としても評価されており、野手の練習も行っている。

 そして9月にプロ志望届を提出した岡林だが、これまでの成長にはライバルの存在があった。
 「まず兄に負けたくないと思いましたし、1学年上でプロ入りしたノリさん(田中法彦 現・広島東洋)にもスピード面では負けたくないと思っていました。また、一緒にプロ志望届けを提出した奥田 域太とも競い合うようにやってきた。僕はライバルの存在があったからこそ成長できたと思います」

 ドラフトが近づき、プロで戦う覚悟はできている。岡林はプロの舞台で兄と投げ合うか、兄と同じ広島東洋に入って兄弟リレーを実現したいと語っていたが、取材した2週間後に兄・飛翔は戦力外となった。
 「兄が苦労している話は親を通じて聞いていました。それもあって、プロは想像以上に厳しい世界だと感じていますが、プロの世界でプレーする覚悟はできています」

 

 戸田監督はプロで化けるタイプだと期待している。
 「最近プロ入りした岡林兄やノリと比べると体の成長がまだ遅いです。それでもあのボールを投げるので、潜在能力は素晴らしいものがあります。体ができた時、どんなボールを投げ込むのか楽しみですね」

 

 3年間で体重が大きく増えたとはいえ、175センチ74キロと、投手としてはまだ細身だ。それでも現在は153キロを投げ、変化球も多彩。しかも研究心旺盛。飛躍できる要素は備わっている。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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