Interview

山田知輝(東洋大)「フライボールスラッガーは挫折をバネにプロの世界で花を咲かせる」【後編】

2019.10.09

 前編では、東洋大が誇る長距離砲・山田知輝の打者として活躍するまでのストーリーを紹介してきた。後編では、飛躍につながった『フライボール革命』と東洋大OBの金言に触れていきたい。

山田知輝(東洋大)「フライボールスラッガーは挫折をバネにプロの世界で花を咲かせる」【後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
山田知輝「東洋大が誇る急成長株は、強い覚悟と決心をもって打者に挑んでいた」(前編)

飛躍を支えた『フライボール革命』と清水隆行氏の金言

山田知輝(東洋大)「フライボールスラッガーは挫折をバネにプロの世界で花を咲かせる」【後編】 | 高校野球ドットコム
山田知輝(東洋大学)

 2年生の秋に開幕スタメンながらノーヒットに終わった山田。大学ラストイヤーに結果を残すために大事な冬場を迎えた。その中で出会ったのが『フライボール革命』だった。

 「ライナーからフライくらいの高さの打球を打つように意識を変えました。ゴロを打たないようなスイングをイメージしてから結果を残せるようになりました」

 その中で参考になったのが柳田悠岐吉田正尚のスイングだったが、山田の心に刺さったのは柳田のある言葉だった。
 「柳田さんのインタビュー動画で、『インパクトの瞬間にバットを上げる』と言っていたんです。それは参考にしています」

 山田は3年生の春くらいまで、トップを低い位置に構え、レベルスイングで振り始めていく形だったが、フォームを変更。柳田さんのイメージを持ったまま、今のフォームに辿り着いた。だが、山田が結果を残せたのは意識を変えただけではない。

 「杉本監督から『タイミングを取り方が下手だ』と言われて。そこでも杉本監督に色々教わって、試していきました。その中で一番合っていたのが清水隆行さんの教えでした」

 東洋大のOBで、U-15日本代表の監督も務められた清水氏。「清水さんのおかげといっても過言ではないですね」という清水さんからタイミングの取り方を教わり、山田は急成長を遂げる。

 まず指摘されたのが、突っ込む癖だった。
「最初に見てもらったときに『近くに見える』って言われたんです。自分はそれを聞いたときに『突っ込む癖があるからバットとボールが衝突するというか。自分からボールとの距離を縮めている』と解釈しました」

 清水さんからも「いい打者は長くボールを見られる。自分の軸でボールを見られる」とアドバイスを受け、しっかりと距離を作れるように間の取り方をより重要視した。その中である練習方法を清水さんに伝授された。

[page_break:長打と打率を残せるスラッガーとしてプロの世界へ]

長打と打率を残せるスラッガーとしてプロの世界へ

山田知輝(東洋大)「フライボールスラッガーは挫折をバネにプロの世界で花を咲かせる」【後編】 | 高校野球ドットコム
笑顔でポーズをとる山田知輝(東洋大学)

 東洋大OBの清水氏に間の取り方の重要性を教わった山田。自分の弱点である突っ込んでしまうことを修正すべく取り入れたのが片手でのティーバッティングだった。

右手だけでティーバッティング:右肩の開きを抑えることを目的
左手だけでティーバッティング:左腕のたたみ方を覚えるのが目的

 他にも逆手でのティーバッティングで、体をツイストさせることを狙った練習も取り組む山田。こうすることで自分のフォームを修正していき、ライナーからフライを打つことを意識した結果が今春のリーグ戦での飛躍につながった。

 「元々、ピッチャーとして入学したのに勝ち星もあげられず、あまり抑えたイメージもない。期待されて入学したのに、それに応えられずやるせない気持ちはずっとありました。けど春に結果を残せた、諦めないでよかったです」

 大きな飛躍につながった春季リーグ戦。5本のホームランについても、「驚きました。開幕時は5本ホームランが打てればくらいの気持ちだったのですが、打てて良かったです」と本人も納得の結果だった。

 まだ馴染みのない『フライボール革命』や、清水氏のアドバイスなど様々な技術を試行錯誤しながら柔軟に新しいことに取り入れていくことが印象的だった山田。この柔軟な姿勢はどこにあったのか。
 「元々投手だったので、何でもやってみるではないですが、変なプライドがなかったので取り組んでいけたと思います」

 苦労を重ねてきた大学生活もいよいよ大詰め。最後の秋に向けて、「東都大学リーグは熾烈なので、1勝するのも簡単ではない。そういった意味でもまずは後輩に繋げるために入れ替え戦の可能性をつぶして、そのうえでリーグ戦優勝が出来ればと良いと思います」と意気込みを語った山田。

 そのためにも秋はホームラン5本、打率3割。エンゼルス・大谷翔平のような長打と打率の両方を残せる打者を目指すことを誓った山田。ピッチャーで一度挫折を味わい、打者で再び花開きつつある山田知輝。運命の10月17日に吉報は届くのか、その瞬間を楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

東京国際大の新入生は、リーグ戦デビューの二松学舎大附の右腕、甲子園4強・神村学園捕手、仙台育英スラッガーら俊英ぞろい!

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!