アイツは真ん中に構えるだけでいい。剛腕・赤塚健利の持ち味を引き出した藤田健斗の操縦術【後編】
今夏の甲子園でベスト4に勝ち進んだ中京学院大中京。その躍進の原動力となった193センチの剛腕・赤塚健利。角度のある最速148キロのストレートで次々と強豪をねじ伏せるピッチングで評価を挙げた。そんな赤塚の快投の裏には正捕手・藤田健斗のリードや気配りがあった。今回は赤塚と藤田のバッテリー対談で、赤塚の強みと特性に迫っていきたい。
前編はこちらから!
規格外のスケールを誇る剛腕・赤塚 健利(中京学院大中京)の能力を引き出した「2つの教え」【前編】
実はかなり緊張しやすい。だけどマウンドに上がると一変
赤塚 健利(中京学院大中京)
――赤塚投手の岐阜大会、甲子園のピッチングを振り返ると、厳しい場面でのリリーフが多かったですね。
赤塚 確かに甲子園はそういう場面が多かったですね。岐阜大会では点差が広がった場面のリリーフで、あまり動揺することなく投げられたと思います。でも、めっちゃ緊張しました。
藤田 そうです。こいつ、かなりびびっていました。
――甲子園でのピッチングを見ると、とても想像しにくいですが…。赤塚君は緊張しやすいですか?
藤田 そうです。めちゃくちゃ緊張しやすいですよ、こいつ。マウンドに上がると変わってくれるんですけど、上がる前は「どうしよう!どうしよう!」という感じですね。
赤塚 そう、マウンドに上がる前がだめですね。僕は後ろ向きの性格なんで(笑)
――甲子園でもそうだったのですか?
赤塚 甲子園でも緊張しました。
藤田 ピッチング練習とかひどいですよ。ほぼボールでした。だけど打者が打席に立った途端、変わるんですよね。
――甲子園デビューとなった北照戦を振り返ると、ピンチの場面でしたが、そんなことがあったんですね。
赤塚 緊張しましたが、監督さん(橋本監督)から名前を呼ばれた瞬間、「やるしかない」と思いました。
藤田 赤塚の凄いところは、開き直れるところですよね。そこが凄いですよね。
――印象に残ったのは、3回戦の東海大相模戦のピッチングです。東海大相模は出場チームでもトップクラスの強打のチーム。赤塚君はほぼストレートしか投げないことが分かっていた。それでも東海大相模打線をストレートで抑えてしまうピッチングには衝撃を受けました。
藤田 ストレートだけなんですけど、抑えられる確信がありました。
――なるほど。その理由について教えてください。
藤田 まず身長がありますし、赤塚は打者の近くでリリースできるから、より近く感じるんですよね。それでいてストレートは動くんですよ。しっかりと投げていれば打たれることはないと思っていたので。
ストレートが動くから、捕手は捕るのがめっちゃ大変なんですよ! 動くうえにスピードもあるから強力打線を打ち取ることができると思います。この日はキレもあって、コーナーに決まっていたので打ちにくかったと思います。
[page_break:いずれは子供たちが憧れる剛腕投手に]
いずれは子供たちが憧れる剛腕投手に
赤塚健利投手と藤田健斗捕手のバッテリー
――赤塚君は普通のストレートを投げようと思っているんですよね?
赤塚 そうです。自分は普通のストレートを投げようと思っているのですが、動いてしまうんです。握りは普通なんですけどね。
――確かに握りは見せていただきましたが、普通ですね。その指の長さだとフォークはどうですか?
赤塚 普通に挟めますが、投げられないです
藤田 改めて見ると、本当に指長いですね…。実は夏前も投げていたのですが、使えないなと思いました。赤塚は真っすぐがウリなので。その真っすぐをどんどんいかしていこうと切り替えました。
――動く真っすぐが変化球ですよね?
藤田 そうです。あとコースに構えることをやめました。真ん中に構えていれば適当に動いてくれるので。
――そうなのですか?
藤田 そうです。映像で見ていただければわかると思いますが、甲子園の時、僕は真ん中しか構えていないですよ。
――確かに赤塚君以外の投手だとコースに構えていますが、赤塚君だけアバウトな感じがしました。
藤田 はい、赤塚は真ん中に構えておけば、勝手に散らばってくれて、良い感じにコーナーに決まるんです。僕が外角、内角などコーナーに寄って、コーナーで投げる意識が強くなると、腕が振れなくなってしまう。それは1年生からずっと受けてきて分かっていたので、赤塚の場合は真ん中だけ構えておけばいいんです。
――こういう話を聞くと、赤塚君のピッチングの裏には藤田君のリードや気遣いが多かったのですね。藤田君に対して、どんな思いがありますか?
赤塚 そうですね…。いやー、恥ずかしいです!
藤田 言えよ!!
赤塚 まあ、藤田から厳しいことを言われたり、悪いピッチングをすると、速い返球をされることもありましたが(笑) 藤田でよかったと思います。
――それだけ藤田君は赤塚君には大きくなってもらいたい思いがあったのですね。
藤田 最初は伸び悩んでいたので、なんとかしたくて。絶対にあの体格で150キロを投げられないわけがないじゃないですか。でも130キロ後半で、物足りないと思っていました。バッテリーを組む過程で、赤塚を育てようと思って。高校野球をやってきて、最後にああいう形で148キロも出て、僕はめっちゃ嬉しかったです。
――そして赤塚君はプロ志望届を提出しましたが、その決意の理由を教えてください。
赤塚 ほぼ真っすぐだけで抑えて打ち取れたのは、少し自信になりました。そして改めてプロ側は自分に対してどんな評価をしているのかが知りたくなり、プロ志望届を提出しました。
――分かりました。最後に目標をお聞かせください。
赤塚 プロで活躍して、小さい子から「あんなストレートを投げてみたい」と憧れられる投手になりたいです。
インタビューを終えて、改めて赤塚が活躍できたのは、正捕手・藤田のリードや森コーチの指導法があったからだろうと再認識した。
ちなみに赤塚が変化球を投げず、ストレート一本にしたのは森コーチの指導方針だ。
「あいつは先が長いですし、変化球を覚えるのはこれからでも遅くはない」
目先だけではなく、先を見据えた育成。願わくは赤塚を預かるチームは、赤塚の人間性、投手の特性を理解した上で育成をしてほしい。そうすれば、プロ野球ファンがワクワクするような剛腕に育つはずだ。
(取材=河嶋 宗一)
前編はこちらから!
規格外のスケールを誇る剛腕・赤塚 健利(中京学院大中京)の能力を引き出した「2つの教え」【前編】