埼玉ナンバーワン左腕・米山魁乙(昌平)が勝てる投手になるために取り組んだこと
今年は佐々木朗希、奥川恭伸といった高校生右腕の人材の豊富さが目立つ中、左腕の好投手は数少ない。そんな中、評価が高いのは、昌平の米山魁乙だ。速球は140キロ前半ながら、伸びのあるストレートで、さらに120キロ後半のカットボールを織り交ぜ、次々と空振りを奪う。最後の夏は準々決勝まで無失点。16.1回を投げ3失点と抜群の安定感を発揮し、埼玉県ナンバーワン左腕として評価を高めている。
そんな米山は最後の夏へ向けてどんな課題を設定し、取り組んできたのか。また、来たるドラフト会議に向けて、どんな心境で1日を過ごしているのかについても語っていただいた。
春に出た課題を克服し、夏ではリリーフとして活躍
米山魁乙(昌平)
今春の県大会では最速140キロを計測し、県内屈指の好左腕として注目され始めた米山。
ただ、関東大会出場をかけた春季大会準々決勝で浦和実に敗れ、関東大会出場を逃してしまう。その敗戦で、米山は「気持ちが先走ってしまい、感情もボールも、うまくコントロールできなかったのが反省点として残りました」と振り返る。
春季大会のピッチングを見ると、浦和実戦に限らず、米山のピッチングは基本的にストレート中心。そしてムキになって制球を乱す場面も見られた。
制球力の重要性を痛感した米山は練習試合において、シート打撃ではスピードではなく、コントロール重視の投球を心掛けた。
そして11月から取り組み始めたカットボールの精度を高めた。
「カットボールを投げるきっかけになったのは、昨秋の地区予選の花咲徳栄戦での敗戦です。遅い変化球だと徳栄のようなレベルの高い打線では、うまく待たれてしまい、打たれてしまった。速い変化球はずっと必要だと思っていました」
米山魁乙(昌平)
夏前には120キロ後半のカットボールを完成させ、「ピッチングの引き出しが増え、自分の中でバリエーションが広がったと思います」と手ごたえを感じていた。また米山のストレートはナチュラルに動く。
「自分は普通の真っすぐを投げているつもりですが、動くストレートも自分の特性なので、しっかりと武器にしようと思いました」
そして夏の大会では先発ではなく、リリーフ中心の起用。米山は「本心では先発でいきたいという気持ちがありましたが、チームが勝つことが一番なので、リリーフで頑張ろうと思いました」とリリーフ起用で勝つ投球に専念しようと心に決めた。
準々決勝までの4試合で無失点の快投。
「初戦こそばらつきはありましたが、徐々に制球力が高まっていることは実感していました」
自慢のストレートもレベルアップしていることを実感した。
「ストレートで空振りを奪った時、バットがボールの下を振っている空振りも多く見られました。また春日部共栄戦で投げていて実感したことは、インコースに投げ込んだ時に、だいぶ詰まった打球のファールも多くなっていて良かったと思います」
しかし準々決勝の春日部共栄戦では5.1回を投げて、6四死球、3失点と悔しい内容で敗退、夏が終わった。
[page_break:夏が終わってからもレベルアップ。ドラフトへ向けての心境]夏が終わってからもレベルアップ。ドラフトへ向けての心境
米山魁乙(昌平)
そして夏が終わって、米山は連日、チームの練習に参加している。今までと比べると自分の時間が取れるようになり、生活リズムにも変化が出た。
「夏が終わって体力面にも課題があったので、睡眠時間が増えました。食事量は夏前とそれほど変化はありませんが、体重は5キロ増えて83キロになりました」
体重が増えたことで、ボールの質に変化が出ている。
「今はそれほど力を入れなくても、強いボールを投げることができていますし、夏よりも制球力、球威は出ているように感じます」
実際に取材日にブルペンでピッチング練習に入ったが、力のあるストレートを投げ込むことができていた。
そして9月にプロ志望届を提出。ドラフトが近づき米山は
「自分の実力は、上位候補と呼ばれる投手と比べれば、立ち位置は全然分かりません。不安もありますが、これからも頑張って練習を続けて当日を迎えたいです」
プロ入りが実現した時について、「僕は横浜DeNAにいる今永昇太投手とタイプが似ているので、今永投手のように活躍したいです」と決意した米山。
3年間、米山の成長を見守ってきた黒坂監督は
「コツコツと自分の課題に向き合いますし、性格的には、アマチュア野球よりも、プロ野球のほうが生きるタイプだとみています」と期待を込める。
今年の埼玉ナンバーワン左腕の下に吉報は届くのか。
(取材=河嶋 宗一)