Interview

規格外のスケールを誇る剛腕・赤塚 健利(中京学院大中京)の能力を引き出した「2つの教え」【前編】

2019.10.08

 今年のプロ志望届を提出した投手の中で、スケールの大きさでいえば、中京学院大中京赤塚 健利だろう。193センチ103キロの規格外の体格から投げ込むストレートの最速は148キロ。今は高校生でも赤塚と同じく140キロ後半の速球を投げる投手は多くなったが、赤塚の角度のあるストレートは他の投手にはない大きな武器だ。甲子園では4試合を8イニングを投げ、4失点の力投。成績以上にインパクトのあるピッチングが印象に残った高校野球ファンも多い。そんな赤塚の成長ストーリーをお届けしたい。

中学生では既に身長は180センチ台。サッカー部、バスケ部からの誘いも

規格外のスケールを誇る剛腕・赤塚 健利(中京学院大中京)の能力を引き出した「2つの教え」【前編】 | 高校野球ドットコム
赤塚 健利(中京学院大中京)

 甲子園が終わり、周囲の目が変わった。

 学校がある岐阜県瑞浪市を歩くと、声を掛けられることも多くなった。周囲の反応に赤塚は恐縮しきり。また性格は自他ともに認めるシャイボーイ。

「マウンドに上がると緊張しませんが、それ以外では緊張するんです…」と語る赤塚の野球人生を振り返ると、身長の大きさにまつわるエピソードがまず話題に上る。

 赤塚はJリーグ・ジュビロ磐田の本拠地である静岡県磐田市出身。赤塚も幼稚園までサッカー少年だった。だが、祖父が巨人ファンでいつも巨人戦の中継を見たり、兄が野球をやっていた影響で、小学校1年生から野球を始める。そして身長は小学校3年生で150センチもあった。赤塚だけではなく、兄も現在は188センチと身長が高く、母の照美さんもバレーボール経験があり、172センチあるという。順調に身長が伸び、中学生の時点で180センチを超えた。掛川シニアでは4番投手として活躍し、当時からバスケ、サッカーの誘いがあった。

 それでも野球にこだわった赤塚は、小学校、中学校、高校の先輩・平 秀匡(現・拓殖大3年)に憧れ、中京学院大中京に進む。そして中京学院大中京野球部に所属しても、他部活からの勧誘は絶えなかった。

「中京はサッカー部のコーチが外国人の方なのですが、そのコーチが僕に会うたびに『サッカー部に入らないか?』と誘ってくるんですよね。ずっと断っていたんですけど(笑)」

 実際に野球以外だとバスケのリバウンドが得意だ。193センチの長身を生かして、次々と止めるという。バッテリーを組む藤田健斗

「体育の授業でバスケをやるんですけど、あいつ(赤塚)はリバウンドが得意で、いつも止めるんですよ」

と藤田が言うと、赤塚は「リバウンドしかやらないですね。ドリブルも苦手ですし」と笑う。

 入学当初はなかなか自分の実力を発揮できず、苦しい日々。1年生秋からベンチ入りを果たすも、思った活躍ができず、2年生秋が終わった。そこで投手担当の森昌彦コーチから投球フォームの変更を薦められる。東海大会が終了した10月下旬から翌年の春までの半年間、トルネード投法で投げることになったのだ。

[page_break:飛躍のきっかけとなった「トルネード投法」と「腕を振らない感覚で投げる」]

飛躍のきっかけとなった「トルネード投法」と「腕を振らない感覚で投げる」

規格外のスケールを誇る剛腕・赤塚 健利(中京学院大中京)の能力を引き出した「2つの教え」【前編】 | 高校野球ドットコム
赤塚 健利(中京学院大中京)

 赤塚は自分の投球フォームの課題についてこう語る。

「僕は腕の振りが横振りになり、193センチの長身を生かせていませんでした。トルネード投法は体を大きく使って投げますし、角度を使って投げようと意識しました。春の時点では完成度はまだまだでしたが、徐々に縦振りで投げられるようになり、春ではトルネード投法をやめて投げるようになりました」

 そして赤塚の急成長をもたらす出来事があった。5月に寮で感染症が蔓延し、寮が閉鎖。野球部だけ休学となり、実家に帰らざるを得ない状況となった。だが、赤塚はこの機会をチャンスと捉えた。

 静岡の実家に戻った赤塚はインターネットで投球フォームの研究を行い、そこで1つの答えを見つける。

「ある方の教えがハマりました。その人の教えは「腕を振らない」ということ。どういうことかと説明すると、投手は腕を振ることをかなり意識しますが、僕も縦振りを意識していて、力んでしまうことが多かったんです。だからその人の教えは、『体幹を使う意識で投げて、軸足を蹴り上げる』。そうすると腕を振ることを強く意識しなくても自然と腕が振れると書いてありました。実際に試してみると力の入れどころが分かったんです」

 感覚をつかんだ赤塚の球速は春から夏にかけての短期間で急激に上がり、春は140キロそこそこだったのが、夏の岐阜大会では146キロに。そして甲子園では148キロまで速くなった。正捕手・藤田も赤塚の進化を感じ取っていた。

「ボールも速くなりましたし、低めに伸びるようになりました。非常に良くなったと思います」

 こうして赤塚は岐阜大会で6試合に登板し、自責点0の好投を見せ、優勝に貢献。自身初の甲子園出場を決めた。

 そして規格外のスケールを誇る赤塚は甲子園でベールを脱ぐことになる。

前編はここまで。後編では甲子園やドラフトについて語ってもらいました。

(取材=河嶋 宗一

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アイツは真ん中に構えるだけでいい。剛腕・赤塚健利の持ち味を引き出した藤田健斗の操縦術【後編】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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