プロで活躍する歴代のU-18代表の4番打者に続くスラッガーへ 石川昂弥(東邦)【後編】
今年のドラフト候補に挙がる高校生は佐々木朗希、奥川恭伸をはじめとした投手のほうが脚光を浴びるが、野手でナンバーワンの評価を受けるのは、東邦の石川昂弥だ。高校3年間で積み上げた本塁打は55本。そのうち甲子園では3本塁打、ワールドカップでは1本塁打と大舞台で強さを発揮するスラッガーだ。
石川に大会の活躍を振り返りながら当時の胸中に迫った。後編ではワールドカップの活躍のきっかけ、そしてワールドカップで得た経験について振り返ってもらう。
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「自分たちの野球ができなかった最後の夏 石川昂弥(東邦)【前編】
ワールドカップの活躍のきっかけは猛打賞を記録した大学代表戦
WBSC U-18ワールドカップでの石川昂弥(東邦)
U-18代表に選ばれ、8月22日に国内合宿に入ると、木製バットへの違和感はなくなっていた。世界大会の活躍を振り返るうえで最も大きかったのは8月26日に開催された大学代表との壮行試合だ。
「140キロ後半の速球を投げる投手を打席で見られたので、大会に入った時は140キロ後半の投手に慣れていましたね。しかも自分は打てていたので、大きかったですね。」
だからワールドカップに入っても自信をもって打席に入ることはできた。
「日本にはいないような投げ方と球の軌道で少し苦労しましたが、大会中は自分のスイングができていましたし、バットを振ることはできました」
話を大学代表との試合に戻すと、今年のドラフト1位候補・森下暢仁(明治大)をはじめとした速球投手と対戦したが、自分の想定よりも少し遅く感じたため打てたようだ。
「周囲が凄い、凄いというじゃないですか。だから凄い投手だと想像しすぎて、実際に打席に立ってみたらあんまりびっくりしなかったという感じですね」
そう言い切って実際に打ってしまうところに石川の凄さを感じる。特に5回表、亜細亜大の内間 拓馬が投じた内角直球を振りぬいてレフトフェンス直撃の二塁打は見事だった。内間も140キロ後半の速球を投げ込み、東都一部で活躍する速球派右腕。簡単に打てる投手ではない。
「甘かったですよね。スライダー1球ボールになった後のストレートを狙っていました。ただ詰まったのでレフトフライだと思ったら結構飛んでくれました」
結果として4打数3安打2打点。大きな自信をつけてワールドカップ大会に入った。
そして4番打者として本大会に出場した石川は連日の快打。特に一次リーグのパナマ戦では3ランを放った。右投手の内角ストレートを振りぬいたが、インコースが来ることを読んでいた。
「内角が来る感じがあり、狙い通りにきました。うまく振りぬけたホームランでした」
打った経験、打てなかった経験、長丁場の戦いもすべてが財産
石川昂弥(東邦)
ただ9日間で8試合をこなすワールドカップ。代表選手ならば誰しもが初めての長期戦。
石川も二次ラウンド以降は「体力的にきつかったです。あんな連戦は経験がなく、体の切れもなかったですね」と語るように、二次ラウンド3試合では、10打数1安打に終わった。
また、この大会、雨も降って、中断も多く、試合終了も遅れ、宿舎に戻るのが毎回23時〜24時過ぎ。そして次の日も試合。連戦だと分っていても、精神的な疲れがまったく違ったと打ち明ける。
8連戦、雨中の試合、デコボコのグラウンド。プレイヤーにとってはやりにくい環境だったワールドカップも石川にとっては大きな財産だと捉えている。
「プロ野球でも7連戦、8連戦というのは当たり前にあるので、良い経験ができたと思います」
帰国してからは、苦手だった内角をホームランにできたことが自信となり、さらに内角を打つ確率を高めるための練習を積んでいる。
また守備については三塁以外にもこだわっている。
「球団によって違うところを守れと言われると思うのですが、僕はやれといわれたポジションを全うしたいと思っています」
近年、U-18代表の4番打者は岡本和真(巨人)を筆頭に活躍している選手は多い。石川もそれに続きたいと思っている。
「自分、4番を打たせてもらいまして、結果を求められますが、結果を残すことができたのは自信になりました。実は『歴代のU-18代表の4番打者はすごい』という記事をネットで拝見しまして、凄い選手ばかりじゃないですか。自分も4番を打たせてもらって、プロにいって、凄いと言われる選手になりたいです」
石川の高校通算55本塁打を振り返ると、勝負所で放った本塁打が多い。そういう本塁打の積み重ねでスターダムにのし上がった石川は、これからもそんな歩みを見せてくれるに違いない。
(取材=河嶋 宗一)