笠谷俊介に柳裕也、ドラ1候補・森下暢仁(明治大)のプロ入りへの意思を明確にした類まれな環境
大学ナンバーワン投手の名を不動のものにした明治大学の森下暢仁。
2年次から大学日本代表に選出され、3年春のリーグ戦からは主戦としてマウンドに登る。主将として臨んだ4年春のリーグ戦ではチームを5季ぶりの優勝に導き、4勝1敗、防御率2.03の成績を残してベスト9も初受賞した。
9月14日の大安にプロ志望届も提出し、盤石の状態でドラフトを迎えることとなるが、そんな森下に今、改めてプロ入りに向けての思いを伺った。
プロ入りへの思いを明確にした多くの先輩の存在
森下暢仁(明治大)
大分商時代よりスカウトからも高い評価を受けていた森下だが、四年の時を経てようやくプロ野球の扉の前に立った。
プロ志望届提出時の気持ちを、森下は素直に語った。
「ずっとプロに行きたいと思ってやってきたので、やっと自分の番というか、今年出せるのかという思いでした」
森下が初めてプロ入りを意識し始めたのは、高校2年の秋。一学上の笠谷俊介がドラフト4位でソフトバンクホークスに指名をされた時に、プロ野球の世界を身近なものとして捉えるようなった。
大学進学後も、柳裕也(中日ドラゴンズ)や星知弥(ヤクルトスワローズ)、齊藤大将(西武ライオンズ)、また大学日本代表の選手などなどプロに進んだ多くの先輩の姿を見てきたことで、その想いはより明確なものになっていった。
森下暢仁(明治大)
「一学年上に笠谷さんいう先輩がいて自分もプロに行きたいなと思ったのと、大学に入ってからは明治大学でも他大学でも、色んな先輩がプロに行く姿を見てプロが身近になってきました。自分も絶対プロに行きたいなという気持ちになりましたし、行動や言動を見てこういう人たちが上で野球をやるんだなと感じました」
中でも森下が、非常に大きな影響を受けた先輩として名前を挙げたのが、3年前に明治神宮大会で日本一に輝いた時の主将であり、エースでもあった柳裕也だ。
森下も現在は主将として、エースとしてチームを引っ張る立場にあるが、同じ立場にあった偉大な先輩の姿に多くのことを学んだと振り返る。
「自分達が1年生ときの4年生がその時の世代が一番強かったので、自分たちもと思ってやってきました。今うまくいってるんじゃないかなと思っています。
柳さんは人間としても素晴らしい方で、そこに結果も残すので、みんなついて行っていました。そういった姿を見て。自分も言葉でも行動でもそうならないといけないなと思ってやっていました」
入学してからフォームはほとんど変えていない
森下暢仁(明治大)
そんな森下の投手としての4年間の成長を振り返っていくと、下級生の頃から一歩ずつ階段を上り順調に成長を遂げてきたことが感じられる。
森下自身も「二年、三年と徐々に良くなっていった」と振り返り、入学当初から目指していた「縦回転の綺麗な真っすぐ」にも自信を持つことができるようになっていったと語る。
「年を重ねていくごとに、二年三年と良くなっていったなと思います。入学してからフォームはほとんど変えていないので、体作りの面で成長したことで良くなっていったと思います」
また大学進学後からは、本格的に投げ始めたカーブが大きな武器となった。
110キロ前後で大きく割れるような変化をする森下のカーブは、カウントを取るボールにも決め球に使えるボールで、真上から腕を振り下ろす森下のフォームとも非常に相性が良い。ストレートやカットボールと、速いボールも得意とする森下にとって効果的なボールになった。
森下はカーブを投げるコツについて解説する。
「投げるときは、昔のドロップのように日本の指でしっかり引っ掛けて、最後は親指で弾くイメージで投げています。まっすぐの回転とは逆の回転でかけるイメージで、リリースポイントは真っすぐと同じところで投げるイメージをしています」
高校時代からドラフト上位候補として名前の上がる存在であったが、即戦力でプロ入りを目指して大学進学を選んだことを明かす森下。その目標通りに、現在では押しも押されもせぬドラフト1位候補となり10月17日を目前に控えている。
だが、森下に浮ついた気持ちは一切ない。
現在はラストシーズンである秋季リーグ戦も佳境に入っており、そしてこれがドラフトに向けた最後のアピールの場でもある。森下は、大学野球の総決算となる秋を迎えて心境を語る。
「今までやってきたことを、全部出すことができればいいなと思っています。そこでしっかり結果を出せばドラフトでも結果がついてくると思ってるので、まず自分がやるべきことをしっかりやって評価されればいいなと思っています。後は何が何でもリーグ戦で優勝して、神宮大会でも優勝したと思ってるのでそこに向けてしっかりやっていきたいなと思います」
一歩ずつ地道に成長してきたからこそ、人生の岐路に立っても自分がやるべきことだけに集中できる。この胆力こそが、森下が4年をかけて培ってきた最も大きな能力であろう。
大学野球ナンバーワン投手と呼ばれる実力とブレることのない強い胆力を携え、森下はドラフトを迎える。
(取材=栗崎 祐太朗)