府内屈指の右腕を日本代表入りの怪腕にさせたドラ1先輩のアドバイス 吉田大喜(日本体育大学)
9月7日にWエースとしてしのぎを削り合った北山比呂と共に、プロ志望届けを提出した日本体育大学の吉田大喜。
大学3年の春のリーグ戦で最速150キロを計測し注目を浴びると、その後は大学日本代表に選出され、9月21日の大東文化大戦ではリーグ戦初完投初完封も記録。現在、ドラフト上位候補と目されている。
大学4年間で大きな成長を遂げた吉田だが、成長の要因はどこにあるのか。4年間の歩みに迫った。
松本、東妻の二人から多くのことを学んだ
吉田大喜(日本体育大学)
高校時代は最速146キロのストレートを武器に、大冠を最後の夏で大阪府大会ベスト4に導き、府内では指折りの好投手だった吉田はプロ志望届けを出すも指名漏れ。日本体育大学への進学を決断したのは、高校時代の恩師である東山宏司監督からの勧めがあったことを明かす。
「監督さんが日本体育大の卒業生で、繋がりがありました。また明石商だった松本航さん(埼玉西武ライオンズ)など、いい選手が多いということで決めさせていただきました」
日本体育大学に入学後、吉田がまず感じたのは、大学生の投手は直球の質の高さと変化球の幅の広さが全く違うことであった。高校時代はストレートとスライダー中心の配球で組み立てていたが、それだけでは通用しないことを痛感した。直球や変化球、コントロールなど、すべての面でレベルアップの必要性を迫られた。
「すごくレベルの差を感じましたね。高校生の頃はストレートと遅い球(スライダー)で抑えていましたが、大学生ではカットボールのような中間球を投げたり、真っ直ぐのキレや伸び、コントロールが全然違います。レベルの高さを痛感しましたね」
キャッチボールをする吉田大喜(日本体育大学)
また、レベルの高さを感じたのは技術面だけではない。吉田の一学年上には、松本航、東妻勇輔(千葉ロッテマリーンズ)のプロに進んだ二枚看板が在籍しており、吉田は「二人から多くの学んだ」と振り返るが、なかでも最も勉強になったと語るのが松本の精神面であった。
「人は誰でも気持ちの浮き沈みがあると思うのですが、松本さんは浮き沈みがないというか、やる気がないときでもこれだけはやるということを決めて練習されていたので、そこがすごいなと思いました」
「心技体」のすべてにおいて、大学野球のレベルの高さを痛感した吉田。ここが大学日本代表入りへのスタート地点であった。
一気に伸びた球速と不安定な握りで投げるスプリット
高校日本代表戦での吉田大喜(日本体育大学)
そうした中で、吉田が「手応えを掴み始めた頃」と振り返るのが、大学3年時のキャンプであった。大学2年の秋から3年の春にかけて、球速が大きく向上した吉田であるが、そのきっかけに松本からのアドバイスがあったこと吉田は明かす。
「キャンプで松本さんに『右足の使い方が下手』と言われ、右足の蹴る動作を改善したら球速が一気に上がりました。
体重移動する時は前に行くものですが、上体が前に行くのを右足の内転筋で踏ん張る感覚を意識するようにしました。それでキャンプの時に149キロくらいまで上がり、短い期間で球が速くなったことで、手応えを掴めるようになりました」
また変化球でも、スプリットを覚えたことで投球の幅が大きく広がった。
落ちるボールは高校時代にも、大学の下級生時代にもほとんど投げていなかったが、ストレートに自信が持て始めた大学3年時にスプリットも習得。そしてそのコツを掴むきっかけにも松本の存在があった。
「(スプリットを)教えてもらったわけではないですが、松本さんにツーシームを教えていただいた時に『不安定な握りで思い切り投げる』と仰っていました。がっちり握ると力んでしまうためだそうです。不安定な握りのまま投げるという感覚が、いいなと感じてはいました」
吉田大喜(日本体育大学)
この「不安定な握りで思い切り投げる」感覚を、吉田はスプリットにも応用した。
これまでは「速い球速で落としたい」といった気持ちから、深く握って力んだ状態でスプリットを投げていたが、力まないように、リリースの瞬間に力を抜くということを意識。すると、これまではボールが浮いて抜け玉になっていたスプリットが、真っ直ぐと同じ軌道から落ちるようになったのだ。
「今ではスプリットも大きな武器になっていますね」
こうして大学野球トップレベルの実力を身に付け、ドラフト会議を目前に控えてる吉田。だがプロでの活躍は「まだそこまで想像できない」と語り、松本や東妻がプロの世界でもがく姿を目の当たりにし、改めてプロのレベルの高さを痛感していることを明かす。
「よく松本さんが投げてる試合を見るんですが、甘いボールが打たれるという意識があるので大学の時より初球から厳しくにいっています。そういった部分でプロの打者のレベルの高さを感じます」
大学野球でも、レベルの高さを痛感したところが吉田のスタートラインだった。次のステージでも、逆境を乗り越えていく吉田に期待したい。
(記事=栗崎 祐太朗)