スラッガー・野村の教えを胸に。花咲徳栄の4番を邁進する井上朋也【前編】
一昨年の夏に全国制覇を成し遂げた花咲徳栄(埼玉)で2年生ながら4番を任され、今春の埼玉大会で55得点(4試合)を挙げた超強力打線の中軸を担っている井上朋也選手。右打ちの大砲として実績を積みながら、今後の飛躍も大きく期待されている井上選手にお話を伺った。
1年春の埼玉大会から鮮烈なデビュー!
インタビューを受ける井上朋也(花咲徳栄)
小学2年生の冬に畷ファイターズで野球を始めた井上選手。「自分が通っていた学校のグラウンドで活動しているのを見て、興味を持ったのがきっかけでした。小学生の頃は主にキャッチャーを守っていて、たまにピッチャーやショートをやることもありましたね」
中学では生駒ボーイズに所属。外野手にコンバートされ、3年時は春夏ともに全国大会出場を果たし、8月のジャイアンツカップではベスト16に進出。さらに、2017世界少年野球大会では日本代表の一員に選ばれており、「ケガの影響もあって、ほとんど試合には出られなかった」と本人は悔いを残しているが、そのパワフルな打撃は魅力十分だった。
そして、高校は岩井隆監督と生駒ボーイズの監督が同じ東北福祉大の出身という縁もあって花咲徳栄に進学。入部した当初は「9番打者まで全員が打つチームだったので、『みんなに負けないように頑張らなければいけない』と感じましたし、『気を抜いたら置いていかれてしまう』と思っていました」と振り返る。
ただ、その言葉とはうらはらに1年春の埼玉大会からいきなりライトのレギュラーポジションを獲得して先発出場。準決勝のふじみ野戦では「高校に入ってから一番の当たりだった」という一発を放つなど、この大会で2本塁打を記録する鮮烈なデビューを飾り、井上自身も結果が出せて「ホッとした」という。その後も5月の関東大会では専大松戸(千葉)戦でライトへ逆転の呼び水となる2ラン。7月に横浜(神奈川)と行った練習試合では今秋のドラフト上位候補と目される及川雅貴からレフトへ特大弾を放つなど、スーパー1年生の名をほしいままにした。
もちろん、その裏側では地道な努力があったのだが、なかでも大きな効果をもたらしたのは2学年先輩で甲子園4本塁打のスラッガー・野村佑希(日本ハム)のアドバイスだった。「中学から高校になってピッチャーのレベルが高くなり、速い真っすぐや鋭い変化球を簡単に打つことができず、対応に苦労しました。特にアウトコースのストレートは苦手にしていて振り遅れてしまうことがあったので、野村さんに外角の打ち方やタイミングの取り方をマンツーマンで指導していただいたんです。全体練習が終わったあとの自主練習の時間を使って夜まで振り込んでいたのですが、そのおかげで打率もかなり良くなったと思います」
バッティングフォームの改造に着手
井上朋也(花咲徳栄)
こうして最初の夏を迎えた井上選手。「3年生を負けさせる訳にはいかない」と意気込んで臨んだ北埼玉大会では18打数6安打で打率.333とまずまずの成績を収めたがホームランはゼロ。本人としては「緊張してしまったところがありましたし、相手投手にマークされてしまった」と納得できるものではなかったようだ。
ただ、チームは見事に甲子園出場。その大舞台でも初戦の鳴門(徳島)戦で8回表に殊勲の逆転二塁打を放って勝利をたぐり寄せるなど、2試合に出場して9打数4安打。しかし、敗れた横浜戦では最後のバッターになってしまった。「甲子園でプレーするのは楽しくて、初戦のタイムリーは良かったのですが、横浜戦はボール球を振ってしまって三振。その時は『もっと練習しておけば良かった』と心の底から思いました」
昨秋の新チーム結成後は「4番打者には厳しいコースしか来ない」ということから、ボールの見極めを課題にしていた井上選手。秋季大会では「体が前へ突っ込みがちになっていて、ある程度は打てていたのですが、しっくりと来ていなかった」という。そこで、この冬はバッティングフォームの改造に着手した。「これまでは右脇を開けていたのですが、閉じるようにしました。その影響で直線的な動きだったスイングの軌道も変わって、今はバットをしならせるようなイメージで振るようにしています。」
現在も、このフォームを固めることに励んでおり、「フォームが体に染み付くまでマシンやバッティングピッチャーを相手に打ち込んでいて、全体練習後も3時間くらいバットを振り続けていました。こうしてフォームを変えたことで、バットのヘッドが先に出ていたところを修正でき、落ちるボールへの対応もできるようになったと感じています」と語る。
前編はここまで。後編では井上選手が夏に向けて取り組んでいることについてお話を伺いました。後編もお楽しみに!
【後編を読む】たった1球の甘い球を見逃さないスラッガーへ 井上朋也(花咲徳栄)【後編】
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文=大平明