Interview

中川卓也(早稲田大)が今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方【前編】

2019.07.06

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタートし、17日連続で記事を掲載していきました。15日の大阪桐蔭初戦に合わせ、前年主将の中川卓也選手のインタビューです!動画では後輩たちへメッセージを送っていますよ!こちらも必見です!!

 昨年は第100回の記念大会となった夏の甲子園を制するなど春夏連覇を飾り、高校野球界に覇をとなえた大阪桐蔭(大阪)。その歴史に名を刻んだチームで主将を務め、現在は東京六大学の名門・早稲田大でプレーしている中川卓也選手に昨季のチームについて振り返ってもらった。

チームを良くしていく意識を互いに持っていた

中川卓也(早稲田大)が今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方【前編】 | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭時代を語る中川卓也(早稲田大)

 昨秋のドラフトで1位指名を受けた根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)をはじめ、4選手がプロ入りするなどスター軍団と呼ばれた昨季の大阪桐蔭。入団当初から、その実力は際立っていたという。

 「入寮した次の日にバッティング練習があったんですが、根尾や藤原はスイングスピードが速くて、既に別格でしたね。あと、一番すごいと思ったのは小泉(航平、NTT西日本)で、打球の音が違いました。自分も自信を持って入部したんですけれど、『この先、やっていけるかな』と心配になりましたね」

 しかし、持ち前の打力を活かしてレギュラーポジションを掴んだ中川選手は2年春にセンバツ優勝を経験。最上級生となった同年秋には主将を任せられた。
 「小中学校の時もキャプテンをしていたのですが、高校は学校も寮もメンバーと一緒に過ごすので、24時間、気を緩めることができなかったですね。やっぱりキャプテンとして普段の私生活からしっかりとしていなければいけませんでしたから。でも、主将をやるからには、きっちりとやってやろうと決意していました」

中川卓也(早稲田大)が今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方【前編】 | 高校野球ドットコム
トスを上げる中川卓也(早稲田大)

 そんな中川選手のもと、チームメートたちはどのようにしてまとまっていったのだろうか。
 「自分たちの代はずっと『我が強い』と周囲から言われていたのですが、裏を返せば『勝ちたい気持ちが強い』ということなので、その気持ちを良い方向へ持っていければと考えていました。それから、元々、同期の仲は良かったのですが、1学年上の先輩たちが夏の甲子園で負けてしまい『仲が良いだけでは勝てない』ことを経験させてもらったので、仲が良いなかでも言うべきことは言えるチームにしていきたいと思っていました」

 そこで、メンバーに選ばれた選手は、メンバー外になった同級生のために。メンバー外の選手はメンバーになった同級生のため、互いに声を掛け合い、行動を起こした。

 「自分たちが『何をしたいのか』を考えたら、『春と夏の甲子園で勝ちたい』という答えになりますから、優勝するためにベンチ入りしたメンバーは練習を怠ることなんてできないですよね。
 そして、メンバー外の選手も『チームが勝つために自分は何ができるか』を考えて、率先してバッティングピッチャーを務めたり、チームを活気づけるための言葉を掛けたり、ミーティングで話をしたり。もちろん、メンバーの方からメンバー外の選手に対してガツンと言うこともありましたが、とにかく『チームを良くしていこう』という意識を互いに持っていたんです」

[page_break:選抜優勝後も危機感「このままでは夏は勝てない」]

選抜優勝後も危機感「このままでは夏は勝てない」

中川卓也(早稲田大)が今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方【前編】 | 高校野球ドットコム
打撃練習の様子

 秋季大会では大阪大会、近畿大会ともに優勝した大阪桐蔭。ただ、中川選手は「毎試合、不安で前日の夜は眠れないこともあった」という。そして、11月の明治神宮大会では準決勝で創成館(長崎)に4対7で敗戦。
 「秋季大会は個の力だけで勝っていました。でも、創成館に負けたことで、チーム力を向上させていかなければいけないと全員が気持ちを新たにすることができたんです」

 冬のオフシーズンは精神的な面も一から鍛え直した。
 「それまではピッチャーが打たれしまった時や、バッターが凡退した時など、集中力が切れてふてくされているような仕草をすることもありましたし、エラーがあっても声を掛け合うことができていませんでした。だから、そういった部分を直していくことを課題にし、『継続力』を付けていったんです。ウエイトトレーニングにしても、連続ティーにしても、最後まで気を抜かずにやりきる。そうすることで粘り強さが生まれていきました」

 また、個人練習の時間も多くとられたというが、「周りから言われたからやるのではなく、自分からやる気になってほしかったので、『勝ちたかったら、練習をやればいい。やらなければ、ベンチに入れなくなるだけだ』と、あえて突き放すような言い方をしてハッパをかけました。でも、明治神宮大会での負けをきっかけにみんなが意識を高く持ってくれていたので良いムードで練習できましたし、秋に比べて質の高いトレーニングができたと思います」

中川卓也(早稲田大)が今、振り返る濃密な1年間 「我が強い」チームとの向き合い方【前編】 | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭時代の中川卓也(早稲田大)※写真は明治神宮大会のもの

 春を迎えて練習試合が解禁になると、しばらくは勝ったり負けたりを繰り返していたというが、センバツ大会を直前にした浦和学院(埼玉)との練習試合で一皮むける出来事があった。
 「ダブルヘッダーの1試合目は自分たちの思ったようなプレーができずに負けてしまったのですが、2試合目の時に橋本(翔太郎)コーチから『積極的に振っていこう』と声を掛けられたんです。その一言でチームがグッとまとまった感覚があって、その試合に勝つことができたんですが、冬の間に高めてきた技術に加えて、簡単に三振をしないとか、強い打球に対して体に当ててでも前に落としてアウトにするとか、そういったボールに食らいつく執念が出てきて、練習試合を重ねていくうちにどんどんと自信が付いていった感じです」

 こうして臨んだセンバツでは見事に優勝。
 「冬のミーティングでは『秋の負けを、どうやって春につなげていくのか』と口うるさくずっと話し続けてきたのですが、その悔しさを大会にぶつけることができました。もちろん優勝は意識していましたが、目の前の相手に足元をすくわれないように先を見据えることなく一戦必勝の気持ちで戦ったのが良い結果につながったと思います」

 ところが、センバツを終えたあとの野球ノートには危機感を訴える言葉が並んだという。
 「自分は『このままでは夏は勝てない』と書きました。センバツに優勝したことで、他校からターゲットにされますし、これからレベルアップしなければ負けてしまうと。でも、その気持ちはみんなが共通して持っていたんです」

 前編はここまで。後編では選抜甲子園以降のチームの状況や、大学野球での苦悩についても迫りました。後編もお楽しみに!

【後編を読む】不屈の闘志を胸に 西谷野球の体現者、中川卓也(大阪桐蔭-早大)という男【後編】

文=大平 明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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