プロ入りした先輩も実践。霞ヶ浦メソッドで素質を開花させた大型右腕 鈴木寛人(霞ヶ浦)【前編】
今季2年目ながら一軍デビューを果たし、中継投手として活躍を見せる遠藤 淳志(広島)をプロへ送り出した霞ヶ浦。そこで今季、注目を浴びているのが鈴木 寛人投手だ。
霞ヶ浦伝統の基本動作で球質に変化が出る
ポーズを取る鈴木寛人
小学2年生の時、3歳上の兄の影響で野球を始めた鈴木投手。中学からは筑西田宮ボーイズに入団。監督のすすめで中1から本格的に投手を務めることになり、中3時はエースとして関東大会にも出場した。
「ピッチャーは主役とも言えるポジションですから憧れていました。走り込みの練習は増えましたが、バッターから空振りを奪えると嬉しかったので、続けていきたいなと思っていました」
高校は茨城県内の強豪・霞ヶ浦に進むこととなったが、「入部した頃は投手陣のレベルが高くて、『自分も頑張らないと、どんどん置いていかれてしまう』と感じました」と振り返る。
その言葉の通り、当時は2学年上に今季、広島で一軍デビューも果たした遠藤投手が在籍しており、「(遠藤さんから)フォームを直接、教えていただきました」というが、その教えてもらったことというのが霞ヶ浦に伝わる「立ち」「うねり」「はがし」「受け」の動きである。
「自分は右投げなので『立ち』は左足を上げた時にバランスをとって、しっかりと立つこと。『うねり』は体重移動をしていく際に、体をスムーズに動かすこと。『はがし』はグローブを付けている左腕の使い方で、肩甲骨からかぶせるように動かすことで体が前へ突っ込まないようにします。最後の『受け』は踏み出した左足の股関節に重心をのせることで、投げ終わった後もしっかりと左足一本で立つようにしています。
このフォームを試合中は意識しないでもできるように1年中、いつでも練習しているのですが、自分は長さが30cmくらいの細い棒を振ってシャドウピッチングをすることで身に付けさせています」
この動きを体得するには数ヶ月の時間がかかったという。
「1年生の5月くらいに教えてもらってから、だんだん感覚がつかめるようになり、自分でも『できるようになってきたな』と思えた頃には、もう秋になっていました。でも、このフォームのおかげでボールに勢いが付くようになりましたし、コントロールも安定してきました」
[page_break: 好守と強打、両方を兼ね備える選手
1年秋の関東大会はほろ苦い結果に
インタビューに答える鈴木寛人
霞ヶ浦の投手陣に課せられている練習はもう一つある。それが「立ち投げ」だ。
「立ち投げは30mほど離れた距離からキャッチャーに向かって投げる練習で、3年生の場合は真っすぐを50球、変化球は20球。ボールの勢いやスピンを確かめながら8割の力で腕を振って投げて、伸びや制球力を習得していきます。そして、マウンドに立った時も立ち投げと同じイメージで投げるようにするのですが、立ち投げをしているおかげでストレートの球筋が良くなりましたし、ボールが垂れることなく一直線でミットに収まるようになりました。もちろん、バッターから空振りをとれる回数も増えていると思います」
ちなみに、霞ヶ浦では投手の練習メニューが一週間ごとにしっかりと立てられており、「時期によって変わりますが、水曜に立ち投げをして、木曜と金曜はブルペンで調整。土曜と日曜は練習試合をして、月曜と火曜はノースローというような感じの流れになっています」と、スケジュールのなかに『立ち投げ』がしっかりと組み込まれているほど重要視されている。
そして、1年秋にはベンチ入りメンバーに選ばれ、関東大会で先発する機会にも恵まれた鈴木投手。
だが、「相手打者のレベルが高くて、甘く入ったら打たれてしまうし、厳しいコースに投げても芯で捉えられてしまいました」とノックアウトを食らった。
そこで、「このままではダメだ」と思い、オフシーズンはかなり走り込んだ。「毎日、朝練でポール間を走り、片道を走り終えたらV字腹筋か股関節のトレーニングを10セット。それから、20mほどの短い距離のダッシュを20本。さらに100m、200m、400mのタイム走をしていました」。
さらに、ウエイトトレーニングでベンチプレスやスクワットに励み、筋肉が付いたことで「これまでと同じように投げたのに、ボールの力強さが増して、球速も上がった」という。
前編はここまで。後編では鈴木選手が明豊や明秀日立との試合で見出した新たな課題と収穫。そして取り組んでいる自身のテーマについて語ってもらった。後編もお楽しみに!
【後編】頭脳+148キロを加えた高次元のピッチングで甲子園に導く! 鈴木寛人(霞ヶ浦)
文=大平 明