Interview

奪三振率の高さを生み出す「強い信念」と「明確な自己分析」 豆田泰志(浦和実)

2019.07.05

 村田賢一春日部共栄)や飯島一徹東農大三)など、好投手の活躍が非常に目立った今年の春季埼玉県大会。その中で、2年生ながら大きな存在感を放ったのが浦和実豆田泰志だ。
 130キロ後半のキレのある直球を軸に、完成度の高い投球を披露して、チームの県大会準優勝、そして関東大会出場の原動力となった。

 そんな豆田の飛躍の土台となったのは、ハイレベルな環境や支えてくれる仲間の存在、そして自分の特性を理解した明確な自己分析にある。今回は、そんな飛躍の背景を紹介していきたい。

ハイレベルな環境とのびのびとした雰囲気が土台を作る

奪三振率の高さを生み出す「強い信念」と「明確な自己分析」 豆田泰志(浦和実) | 高校野球ドットコム
豆田泰志(浦和実)

 小柄な体を目いっぱい使い、下半身主導のフォームから抜群のキレのある直球を投げ込み、この春大ブレイクを果たした豆田。その才能の片鱗は、すでに中学時代から見せていた。

 越谷市立千間台中学出身の豆田は、中学生にしてすでに球速は138キロを記録しており、「東日本最速」の呼び声もあったほど。また中学3年時には、埼玉県の選抜チームである埼玉スーパースターズに選ばれ、現在春日部共栄で3番打者を務める平尾柊翔や、市立川越のショートを務める髭大史らと共に、代表チームも経験した。

 「平尾柊翔髭大志も、力もあって守備が上手くとても印象に残っています。
 選ばれた当時は、埼玉の代表という感覚がわからなかったのですが、1000人ぐらいいる中の代表なので、それなりの結果は出したいなと。周りもレベルが高かったので、とても刺激になりました」

 高いレベルを経験したことは、進路選択にも強い影響を与えた。県内外の甲子園の常連校から、多くの誘いを受けたことを豆田は明かすが、そんな中で選んだのは浦和実だった。
 豆田は浦和実を選んだことを次のように振り返る。

奪三振率の高さを生み出す「強い信念」と「明確な自己分析」 豆田泰志(浦和実) | 高校野球ドットコム
豆田泰志(浦和実)

 「浦和実には、兄がいたこともありますが、強豪校を倒して甲子園に行きたい気持ちもありました。当時、浦和実はベスト8くらいの実力があり、『簡単には甲子園には行けないけど、チャンスはある』といったチームでした。どこが浦和実に決めた理由です」

 だが、この選択は豆田にとって非常に良い選択であった。
 「強豪校を倒して甲子園に行く」という現実的な目標を目指せるだけで無く、厳しい上下関係もなくのびのびと野球ができる環境は、豆田に非常にフィットしていた。
そんなチームの雰囲気は、この春の快投にも大きく影響していたことを豆田は明かす。

 「準々決勝昌平戦では良いピッチングが出来ましたが、実はその前の2試合では、あまり良い投球ができていませんでした。
 結構足を引っ張って、ずっと落ち込んでいたのですが、昌平戦の前に先輩方から『大丈夫だよ』と声を掛けていただいました。その言葉で『やらなきゃな』という気持ちが強くなりましたし、その後から自分の調子もだんだん戻ってきたかなと思っています」

 春季埼玉県大会準々決勝の昌平戦では、7回までノーヒットノーランの快投を見せた豆田だが、その裏にはチームメイトの的確で温かいフォローがあったのだ。
 埼玉スーパースターズのハイレベルな環境に加えて、浦和実ののびのびと野球が出来る雰囲気。これまでのこうした環境が、豆田の大ブレイクに繋がっていったのだ。

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回転数と高卒プロ入りへの信念

奪三振率の高さを生み出す「強い信念」と「明確な自己分析」 豆田泰志(浦和実) | 高校野球ドットコム
春季関東地区大会での豆田泰志(浦和実)

 そんな豆田を語る上で、欠かすことができないのが非常にキレのある直球だ。最速は140キロと驚く程の数字では無いが、奪三振多さが豆田のボールのキレを物語っている。
 春季埼玉県大会準々決勝の昌平戦では8回1/3を投げて11奪三振、準決勝の東農大三戦では6回1/3を投げて8奪三振、そして関東大会1回戦では強打の山梨学院を相手に6回を投げて11奪三振と、豆田は非常に高い奪三振率を誇る。

 豆田はその秘密を、とにかく回転数に拘って投球を行ってることにあると話す。
 「体格的な面を考えても、剛速球よりも球のキレで攻めていくとタイプかなと思っています。そのためにボールに回転数には拘っていますね。YouTubeで色んな投手の映像を見ても、回転数が多いほどボール伸びているように見えます。自分は球速よりそちらの方を求めていきたいと思いました 」

 また豆田は、回転数の高いボールを投げるためには、正しいフォームで投げることも然るべきであると考える。意識するポイントは状態により変わるが、現在は次の2点を意識してピッチングに取り組んでいることを明かした。

奪三振率の高さを生み出す「強い信念」と「明確な自己分析」 豆田泰志(浦和実) | 高校野球ドットコム
トレーニングを行う様子

 「左足をついた時に足が突っ張ることがあるので、もう少し左足の使い方を柔らかくして、より低めにキレのあるボールを投げることを意識しています。
 また腕の振りも、大きく回すのではなく出来るだけコンパクトに回して、腕を引き上げるイメージを持って投げています」

 非常に柔らかな口調で、淡々と理論を語る豆田であるが、自身の特性を理解してブレずにフォームを追求する姿勢は、投手としての大きな強みである。その強い信念こそ、春のブレイクに繋がったのであろう。

 そしてもう一つ、豆田は胸に強い信念を秘めている。高卒でのプロ入りだ。

 「高校から直接プロに行きたいですね。バッターだと高校を卒業するとバットが変わりますが、投手は変わるものはないですし、大学に行って怪我をする可能性もあります。
 行けるなら高校を卒業してプロ入りができたらいいなと思っています」

 豆田の目標は常に明確だ。
 まずはその目標に向けた一歩として、この夏の選手権埼玉大会の優勝を獲りに行く。

文=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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