Interview

これが9番!?ネガティブを成長に変えた岩手育ちの「大型捕手」 菅原謙伸(花咲徳栄)

2019.07.04

 毎年、好捕手を育て上げる花咲徳栄であるが、今年の正捕手である菅原謙伸は近年の中でもトップクラスの実力を持っているのではないだろうか。
 冷静なリードに加えて、セカンド送球は最速で1.8秒台を記録する強肩も持ち、また打者としても打順は9番ながら、春季埼玉県大会準々決勝では東農大三の好投手・飯島一徹から3安打を放つなど、堅実な打撃を持ち合わせている。

 今回は、花咲徳栄のこの夏のキーマンとも言える菅原に、これまでの成長や夏に向けた思いを伺った。

岩井監督自身も実践する「常に想像して自立して行動すること」

これが9番!?ネガティブを成長に変えた岩手育ちの「大型捕手」 菅原謙伸(花咲徳栄) | 高校野球ドットコム
菅原謙伸(花咲徳栄)

 「最初は全てが大変でしたね。一人で洗濯することも大変ですし、野球も下手くそだったんで。関西出身の人と一緒になると、言葉にも苦労しました。自分はすぐしょぼんとなってしまうタイプで」

 花咲徳栄に入学当時のことを振り返り、菅原は少し恥ずかしそうな表情を見せた。
 岩手県の一関市立千厩中学出身の菅原は、関東地区の名門・花咲徳栄からの勧誘を受けて越境入学を決めた。大きな希望を抱いて埼玉の地に踏み出した菅原だったが、レベルの高さや慣れない寮生活、そして全国各地から選手が集まる環境に、初めはとても戸惑った。

 「とにかく不安でした。今でもみんなによく言われるのですが、『お前よくここまでこれたな』と。自分で考えても、あの時はすべてがひどかったなと思います」

 そんな菅原に成長のきっかけを与えたは、岩井隆監督であった。
 岩手県から出てきたばかりで、まだ右も左も分からなかった菅原に岩井監督が説いたのは、「常に想像して自立して行動すること」。菅原は、当時の岩井監督の指導を次のように振り返る。

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守備につく菅原謙伸(花咲徳栄)

 「自分少しネガティブな所があります。だから岩井先生は頭ごなしに怒るのではなく、自分に伝わるように指導をしてくださりました。
 岩井先生がそのように教えてくださったのは、岩井先生自身が自分のことを想像できているからだと思います。自分がここまで出来るようになり、徳栄の2番を背負うことが出来ているは岩井先生のお陰だと思います」

 今となっては厳しい言葉を掛けられることも増えたと話す菅原だが、それもすべては自分自身のための指導であると理解している。現在も夏に向けて、リードワークやゲームメイクの面で厳しい言葉が飛ぶが、岩井監督への信頼は変わらない。

 「よくよく考えれば、苦しい状況も夏のために作ってくれてるのかなと思います。岩井先生は多分そこまで想像できてる方なので、自分はもっと色々と吸収していかないと駄目だなと思っています」

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[page_break:練習では常に不利な状況を想定]

練習では常に不利な状況を想定

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セカンド送球を見せる菅原謙伸(花咲徳栄)

 そんな菅原を語る上で欠かせないのが、卓抜したセカンド送球だ。無理無駄の無いお手本のようなステップから鋭く丁寧なスローイングを見せ、その最速タイムは1.8秒台を記録する。
 今秋のドラフト候補、韮沢雄也を見に来たスカウトからも好捕手として名前が上がるほどだ。

 菅原は自身のスローイングで、意識するポイントについて次のように説明する。
 「自分は体が開いてしまうと、ボールが全部抜けてしまいます。なので出来るだけ左肩が開かないように気を付けて、壁を作るイメージを持っています。この意識はキャッチボールのときから持っていて、試合になったら勝手にできているのが理想です」

 左肩を開かずに、壁を作るイメージ。
 ボールを投げる動作において、昔からよく使われている表現であり、菅原は奇をてらうような特別な意識を持っている訳ではない。だが、そうした当たり前のことを、試合の中で当たり前に出来るよう常に練習から心掛けているところが、菅原の大きな強みであるのだ。

 また菅原は、実践の中で盗塁を刺す確率を上げるため、次のような意識も持って練習していることを明かす。

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左肩に壁を作るイメージを説明する菅原謙伸(花咲徳栄)

 「ランナーを1塁に置いて左バッターを迎えたときは、バッターでランナーが見えないことがあります。その時に備えて、練習では想定できなかった盗塁を刺す意識も持って練習に取り組んでいます。
 具体的には、ステップをせずにその場で投げるようなフォームで練習します。それが出来れば、実際に投げる時は左足さえ出せば勝手に体重移動ができるようになります」

 常に不利な状況を想定して、その状況に対応できるような練習を積む。ネガティブであることを自虐的に語る菅原であるが、それは捕手としては大きな強みである。こうした思考法が、菅原を花咲徳栄の正捕手へと押し上げていったのだろう。

 七転八倒、千荊万棘の毎日を送ってきた菅原だが、そんな高校野球生活も残りは夏の選手権大会のみとなった。
 今年は選手権埼玉大会の5連覇が懸かっているが、秋季大会春季大会と結果を残すことが出来ていない。菅原はそんなチーム状況を踏まえて、冷静な視点で夏を見据える。

 「5連覇が懸かっていますし、周りからは徳栄は勝つだろうと言われていますが、その雰囲気が一番怖いと思っています。優勝したいのはもちろんですが、秋も春も勝てていませんし、夏までの課題は山積みです。残りの期間で自分を追い込んで、盤石な体制で夏を迎えられるようにしたいと思います」

 その瞳に慢心は微塵もない。危機感と不安感を背負い、菅原は夏を迎える。

文=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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