Interview

伸びのある快速球のルーツは中学2年秋。変化球の重要性を感じた甲子園 篠木健太郎(木更津総合)【前編】

2019.06.15

 今年の高校2年生はスラッガーが多いが、投手でトップクラスの実力を誇るのが木更津総合篠木健太郎だ。177センチ68キロと細身の体型から投げ込む速球は最速146キロを誇る。そのストレートは球速表示以上にキレを感じるが、そのストレートを生み出すのは、上半身と下半身の動きが連動した投球フォームは「美しい」と形容できる。篠木と公式戦で対戦した打者は口を揃えて、「速球、変化球も素晴らしく、今まで対戦した投手の中でもトップクラスでした」と語る。

 1年夏に甲子園デビューし、今年の関東大会では超強力な東海大相模打線に対し、7回まで被安打3、1失点の好投。8回裏に安打を浴び、降板したが、がっぷり四つの投球を見せ、さらに評価を高めた。2016年から続く千葉4連覇を目指し、キーマンとして期待される篠木はどんな野球人生を歩んできたのか?

エースに登りつめたストレートの改良

伸びのある快速球のルーツは中学2年秋。変化球の重要性を感じた甲子園 篠木健太郎(木更津総合)【前編】 | 高校野球ドットコム
篠木健太郎(木更津総合)

 群馬県出身の篠木が野球に初めて出会ったのは幼稚園の時だ。
 「父はサッカーをやっていたんですが、そんな父と小学3年生まで一緒に遊びでやっていたんです」

 ボールを追いかけるのに楽しさを感じていた篠木は小学3年生の春休みに、地元にあった明和ジュニアヒーローズに入団。本格的に野球を始め、当時はピッチャーだけではなくサードやショートを兼任していた篠木は意外なことを告白してくれた。

 「正直、投手は嫌いだったんです。元々コントロールが悪くて、試合を壊してしまうこともあったんです。なので、内野を守っているときの方が楽しかったです」

 その後、明和中学校に進学した篠木は小学校の先輩がいたこと、そして練習環境に惹かれて館林ボーイズ(硬式)に入団する。

 館林ボーイズでは週3、4日の練習をこなしていく日々。篠木は中学時代もピッチャーを続けたが、下級生までは、同じ学年の中では3番手投手の位置付けで、外野手がメインとしての活躍が続いた。

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これが篠木健太郎の「ストレートの握りだ!

 転機となったのは中学2年生の秋。篠木はある決断をした。
 「自分の中でストレートと変化球を天秤にかけて、どちらを先に極めるか考えた結果、ストレートを磨こうと決めたんです」

 「当時、自分の体は周りに比べると小さかったので、指2本で普通にリリースしていても勝てないと思ったんです。だから親指も使ってボールに回転をかけて、ボールのキレを上げました」

 篠木のストレートの握りは少し独特だ。
 人差し指と中指の第一関節をしっかり縫い目にかけつつ、ボールと指の隙間をなくしてがっちり握る。そしてリリースの時に、ボールをつぶすようなイメージでリリースするようにした。こうすることで親指と人差し指、そして中指の3本の指でボールに回転をかける。その結果、ボールのキレや伸びといった質が向上した。

 進化したストレートに加えて、カーブやスライダーがある程度ストライクゾーンに収まるようになった篠木。これらの成長があり、3番手投手から最後の夏はエースにまで上り詰めた。

[page_break:初めての甲子園はただただ緊張した]

初めての甲子園はただただ緊張した

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キツいランメニューの合間にも笑顔を見せる篠木健太郎(木更津総合)

 ただ当時を振り返ると、「ストレートのキレや伸びが武器でしたが、まだストレートしかなかったです。変化球はコントロールもキレもまだまだでした」と篠木は語る。篠木のもう1つの武器、スライダーの習得は木更津総合に入ってからである。

 なぜ群馬出身の篠木は、千葉の強豪・木更津総合を希望したのか。それは全国で活躍を続ける好投手たちの存在がある。

 「実際に練習の様子を見たこともそうですが、甲子園の活躍も大きいです。早川隆久さん(現早稲田大)や山下輝さん(現法政大)のような好投手に自分は憧れたんです。目標というよりは夢のような存在なんですが、自分もその2人のような世代を代表するような投手になりたいと思って進学を決意しました」

 偉大な先輩の姿に影響された篠木は晴れて木更津総合に入学。高校野球の世界に飛び込んだが、そこで感じたのが1つのプレーへの執念だ。

 「高校野球は1球1球を無駄にしてはいけないじゃないですか。そういったところは中学野球と違うので驚きました。なので、自分も1球1球を大事にしようとか、時間を無駄にしないように意識しましたし、練習の時から試合と同じ緊張感で取り組みました」

 そして篠木は入学してまだ1、2週間程度でAチームの試合でマウンドに上がると、昨年の春季関東大会や夏の東千葉大会でも登板し、チームの3連覇に貢献し甲子園の舞台へ進んでいった。

 初の全国の舞台に進んだ篠木は当時を振り返ると、緊張と反省を口にする。
 「マウンドに上がる前にキャッチャーの山中稜真さんに声をかけてもらいましたが、甲子園の独特の空気に飲まれて緊張していました。正直、どんなボールを投げて、何を打たれたのか憶えていないんです。ただ悔しい内容だったという感じです」

 篠木が投げたのは3回戦下関国際戦。8回からマウンドに上がり2点を失う内容だったが、この試合を通じて「改めてストレートだけでは通じない」と感じ、新チームがスタートと同時に課題としていた変化球の改良に踏み切ることにした。

 前編はここまで。21日公開予定の後編では、最大の武器・高速スライダーの秘密に迫ります。お楽しみに!(続きを読む)

文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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