Interview

偉大な先輩たちの背中を追ってきた下級生時代 中野波来(大阪桐蔭)【前編】

2019.06.15

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタート!17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。まずは今年の大阪桐蔭ナインに迫っていきます。

 昨年、史上初二度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭。そこで、最も甲子園に戻るに燃えている選手がいる。それが主将の中野波来だ。打者としては5月末で高校通算13本塁打を放っている長打力に加え、外野手としては抜群の強肩を見せる強肩強打の外野手だ。
 タイプとして青柳昂樹(横浜DeNA)のような選手と見れば、イメージがしやすいだろう。今春はセンバツ出場ができず、センバツ優勝旗を返還した。夏に甲子園出場を目指す中野の野球人生、夏にかける思いを聞いた。

指導者の目が届かない環境で自分を磨き続けた

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大阪桐蔭の主将・中野波来

 兵庫県・淡路島出身の中野。野球は小学校1年生のときにはじめ、淡路島の岩屋フェニックスに入団し、投手と遊撃手を兼任。淡路島といえば、近本光司(阪神)、村西良太(近畿大・4年)、村上頌樹(東洋大・3年)と錚々たる選手を輩出している地域だが、中野はもちろんそういう選手たちに憧れを持っていた。

 「淡路から地方へ出て活躍されるのを見て自分が憧れを持ったように、自分も憧れられる選手になりたいと思いました」

 小学校を卒業後は、明石ボーイズでプレー。船と電車を行き来しながら、1時間かけて通った。明石ボーイズでは投手、外野手を兼任。当時は投手の方に自信があり、中学時代は最速139キロを誇る速球派右腕として活躍を見せた中野がなぜ打者として大阪桐蔭に進むことになったのか。
 「タイガースカップで甲子園でプレーした時、結構打者として活躍したのを西谷先生が見てくださって、それを評価をしていただいたんです」

 こうして大阪桐蔭に進むこととなった中野。入寮して、早くも高校トップレベルの実力を誇る3年生と自分の差の違いを痛感する。
 「自分たちが入寮してすぐ日本一になられて、自分は中学レベルで見たら少し高い方だったと思うのですが、高校に入ってきてピッチングもバッティングも、自分の力の無さというのを一番に感じました」

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打撃練習を行う中野波来(大阪桐蔭)

 最初は全くついていくことができず、Aチームのノックに入ることはごくわずか。
 「3学年でノックするときに、たまにやらせていただくのですが、本当にレベルが高かったです。なので、僕は雨天(練習場)で、隅の方で練習したりという感じでした」

 取材日の練習日でも新入生はノックのボール渡しや、雨天練習場で打撃、実戦練習で走者役を行っているのだが、中野はそういう環境下の中で、どうやって指導者へアピールしたのだろうか。
 「あまり指導者の目にかからないようなところだったので、各自の意識の差が出ると思うんです。見られてるからするんじゃなくて、見られていない時こそしっかりして、出番があるんだったらその一発でチャンスを掴もうという想いで、ずっとやっていました」

 そして新チームがスタートして、Aチームの練習に入り、練習試合に出場するようになる。中野は緊張の連続だった。
 「最初は技術どうこうと言うよりかは緊張して、練習試合でさえ緊張して、なかなかバットが振れなくて自分の力が出せないという状況が続いたのですが、重ねていくうちに緊張が無くなってきて、自分の力が出せてきたかなと思います」

 そして1年秋は大阪大会でベンチ入りを果たすが、近畿大会神宮大会ではベンチを外れた。

[page_break:自分のことよりもチームの目標である優勝できたことが嬉しかった]

自分のことよりもチームの目標である優勝できたことが嬉しかった

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中野波来(大阪桐蔭)

 近畿大会優勝を果たし、センバツ出場も現実的となった大阪桐蔭。中野はセンバツでベンチ入りを果たすために、どんなアピール、練習を行ってきたのか。

 「自分の一番の持ち味は長打力だと思うので、ロングティーや振り込みを多くやりました。きれいなスイングとかではなくて、まず根本的な力をつけようと思ったので、形どうこうというよりはスイングの強さを求めてやっていました」

 そして一冬明けて、中野はAチームでの出場は限られていたが、Bチームで実績を重ね、その後、Aチームで結果を残し、ベンチ入りを果たした。

 「率直に個人的にはベンチに入れて嬉しかったんですが、それよりもチームが甲子園で一つずつ試合をしていって、目指していた日本一を達成できたのが一番嬉しかったです」

 

 そして、センバツ後の公式戦ではスタメン出場することが多くなる。
 「藤原さんが膝の調子が悪くて、背番号も『8』をもらって、そこで出場機会を与えてもらいました。他の二年も入れさせてもらって、その中でAの試合の感覚や公式戦の雰囲気を掴めたと思います」

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(左から)センター・中野波来、中辻志哉

 大阪大会準決勝大体大浪商戦で本塁打を放つ。ようやく自慢の長打力を発揮できた。
 「チームが1点差で勝っていたのですが、苦しい状況だった時に自分が呼ばれて、なんとか1点取ってやろうと思っていて、たまたま振りにいった打球が入った感じでした。最低外野フライを打って、1点だと思っていたので、ラッキーな形で入ってくれたと思います」

 

 その後も懸命にアピールを続け、夏の大阪大会でもベンチ入りを果たす。夏の大会はこれまでの戦いとは違う緊張感だった。
 「一年生の時にスタンドで夏を経験したんですが、全然分からなくて、ただ甲子園に出たというだけで終わっていました。三年生が最後の夏にかける想いというのは、春とは全然違って、相手どうこうというよりは“一球も気が抜けない”というのが夏の怖さだなと思いました」

 そして夏の甲子園優勝を経験し、新チームになり、中野は主将に就任した。主将に就任してからは、重圧の中で戦うことになる。

文=河嶋 宗一

大阪桐蔭特集がスタート!!

 6月17日から大阪桐蔭特集がスタートしています。17日連続で記事を掲載していきます。大阪大会夏3連覇を狙う大阪桐蔭の選手たち、OBたちを取材し、大阪桐蔭の魅力をたっぷり伝えていきます。
6月17日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【前編】「夏の全国連覇を目指して、大阪桐蔭の現在地」
6月18日12時 大阪桐蔭 野球部訪問【後編】「どんな結果でも日本一を追求しつづける毎日は変わりない」
6月19日12時 中野波来主将 インタビュー【前編】「偉大な先輩たちの背中を追ってきた下級生時代」
6月20日12時 中野波来主将 インタビュー【後編】「知られざる主将としての重圧。すべてを乗り越え、夏は大爆発を」
6月21日12時 宮本涼太選手 インタビュー【前編】 名門の道を歩んできた野球人生 転機となった台湾遠征
6月22日12時 宮本涼太選手 インタビュー【後編】 そして憧れる強打の二塁手へ 宮本涼太(大阪桐蔭)【後編】
6月23日12時 西野力矢選手 インタビュー 憧れは中田翔!2年生4番・西野力矢(大阪桐蔭)はチームの勝利の為に打ち続ける
6月24日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【前編】 大阪桐蔭最強世代の2番になるまでの軌跡
6月25日12時 OB 青地斗舞選手(同志社大学)インタビュー【後編】史上初2度目の春夏連覇を達成の影に高校生活で最も厳しい練習があった
6月26日12時 OB 道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【前編】 センバツ連覇で喜ぶ同級生たちをスタンドから見守った
6月27日12時 OB道端晃大選手(同志社大学)インタビュー【後編】「野球は高校野球だけじゃない」恩師の言葉を胸に
6月28日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【前編】「自分の生きる道を考え続けた3年間 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月29日12時 OB 宮崎仁斗選手(立教大)インタビュー【後編】「自分の居場所を見つけて勝負ができれば、チームも強くなる 宮崎仁斗(大阪桐蔭-立教大)」
6月30日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【前編】「甲子園で活躍するための練習、生活を送ってきた 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」
7月1日12時 OB 山田健太選手(立教大)インタビュー【後編】「4年後はメンタリティも、技術もプロに進むのに相応しい選手へ 山田健太(大阪桐蔭-立教大)」

7月2日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【前編】「コントロールで生きる!自身のスタイルを確立させた大阪桐蔭時代 田中誠也(立教大)」


7月3日12時 OB 田中誠也選手(立教大)インタビュー【後編】「研究を重ねてどり着いた回転数の高いストレートと決め球・チェンジアップ」

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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