ホームランへのこだわりを秘め、プロ入りを視野に新たな挑戦も 山下航汰(京都外大西)【後編】
上羽功晃監督が「京都一の打者」と評価しているのが2年生にして4番に座る18152(2年)だ。1年春からレギュラーを掴み、既に通算20本以上の本塁打を打っている。そして、山下はプロ入りを目指し新たなポジションにも挑戦中。その長打力の秘密、そして打撃術を存分に語ってもらった。
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9年振りの甲子園へ!名門復活を託された4番・山下航汰に迫る!!
プロ入りを目標に新たな取り組みに挑む
捕手にも挑戦する山下航汰(京都外大西)
さらに取り組んでいるのが捕手の練習だ。昨秋は三塁手、昨夏や春は左翼手で試合に出場したが、上羽監督は将来のプロ入りを見据えて捕手に挑戦させている。練習試合では捕手で出場することもあり、秋以降は捕手として公式戦に出る可能性が高い。
「バッティングをアピールすることもそうですが、キャッチャーとしてもプロに行きたいと思っています。そのためにもキャッチャーとしてのプレーをもっと磨いていきたいです」と山下自身も捕手挑戦に前向きだ。この冬は正捕手の藤井碧海(3年)から様々なことを吸収してきた。
「冬はピッチャーとのコミュニケーションをけっこう取っていました。藤井さんは動きも肩も良くて、配球も凄く良いです。藤井さんからは特に配球を教えてもらいました」
対外試合が解禁となった3月はセンバツ出場を控えた高校とも練習試合を行った。この時期の練習試合では啓新の浦松巧(3年)に始まり、星稜の奥川、センバツ準優勝の習志野、敦賀気比といった強敵から4試合連続で本塁打を放った。奥川から打った本塁打を山下はこう振り返る。
「1ボールからの浮いた真っすぐなんですけど、シンプルに嬉しかったです。甘い球を見逃さなかったのは良かったです。良いと言われていた投手から打つことができて自信になったと思います」
奥川との対戦はこの1打席のみだったが、「ストレートの伸びや変化球のキレは横から見ていても違いました」と高校トップレベルの凄さを実感することができたそうだ。
山下を取材していて気になることがあった。それはスラッガーと呼ばれている類の選手にしては細身であることだ。本人の証言では現在の身長と体重は180㎝、70㎏。「太りにくい体質」という体でいかにして本塁打を量産してきたのだろうか。本人がその秘訣を教えてくれた。
「タイミングですね。バッティングの半分以上はタイミングだと思います。タイミングが合ったら何でも打てると思います」
秋季大会で上羽監督に山下の良さについて聞いたことがあったが、その時に上羽監督は「タイミングを取るのが上手い」と答えている。実際に山下のフリー打撃を見ていると、遠くに打球が飛んでいる時はタイミングをしっかりと合わせて自分のポイントで打つことができていた。体が大きくないが、打球を飛ばせるようになりたいと思っている選手は山下の打撃を参考にしてみてはいかがだろうか。
[page_break:名門復活へ、9年ぶりの甲子園を目指す!]名門復活へ、9年ぶりの甲子園を目指す!
夏に向けて意気込みを語る山下航汰(京都外大西)
夏は9年ぶりの甲子園出場が目標だ。山下はチームの課題は練習試合と同じように公式戦を戦えていないことだと分析している。
「練習試合では勝てているので、もっと気楽にやれば良いと思います。公式戦になると硬くなっているんです。練習試合では自分のバッティングをしているのですが、大会になるとガラッと変わってしまう人もいます」
春は一次戦の代表決定戦で立命館に6対7で敗れている。山下自身は平常心で大会に臨むことができていたが、チームの勝利に結びつけることはできなかった。夏の大会を勝ち上がるためには山下の活躍が不可欠だが、山下は自身の活躍は二の次だと考えている。
「夏は僕が打たなくても、甲子園に行ければ良いと思っています。もちろん、打てたら良いですけど。龍谷大平安などは経験値が違いますが、名前負けせずに勝てると思ってやらないと勝てないと思います」
「僕が打たなくても良い」と話してはいるが、名門復活に向けて山下のバットにかかる期待は大きい。「ホームランにはこだわりを持っている」と公言するスラッガーは、この夏にどれだけのアーチを見せてくれるのだろうか。
文=馬場 遼