狙うは北海道ナンバーワン捕手の座! 浅野駿吾(遠軽)【後編】
北北海道に注目の強肩強打の捕手がいる。その名は浅野駿吾(遠軽)だ。176センチ77キロとがっしりした体格は筋肉隆々で、グラウンドに立つと、他のナインと比べてもひときわ存在感を放っている。
打撃では対応力が高く、支部予選の2回戦では最速144キロ左腕・石澤大和(網走南ヶ丘)から4安打2長打を放ち、捕手としてもスローイングタイム1.9秒台を誇る強肩。投手も兼任し、最速146キロのストレートを投げ込む速球派右腕でもある。
後編では浅野の打撃・守備・投球での取り組みについて迫っていく。
前編はこちら!
北北海道注目の強肩捕手・浅野駿吾(遠軽)!2年の経験はすべてが糧になった
打撃・守備・投球のすべてを見直した
キャッチボールをする浅野駿吾(遠軽)
まずワンバウンドを止めるのが苦手だった浅野は捕手陣とともに室内練習場でショートバウンドを止める練習を幾度も繰り返した。強肩がウリの浅野はスローイングフォームも、甲斐拓也(ソフトバンク)をモデルに見直した。
「甲斐選手が日本シリーズで盗塁を刺しまくっていたのをきっかけに、冬から甲斐選手の捕手の動画を見るようになりました。学んだのは左足の使い方です。捕球する前に左足を前に出すやり方は知らなかったので、実際にそのステップを練習して、できるようになってから軽くスナップスローしただけでも、強いボールを投げられるようになりました。力任せで投げていた2年秋までと比べると大きく変わったと思います」
そして不振に終わった打撃は結果にこだわりすぎて、打撃が小さくなっていたことを反省。結果にかかわらず自分のスイングにすることをこだわった。打撃も手元でボールを呼び込んで打つ打法に転換し、見極めを良くした。
「打撃は結果が出なくて、非常に迷いがありました。秋が終わって結果はいいので、しっかりと自分の打撃をしようと思いました。自分の打撃は手元までボールを呼び込んでセンター返し。それを実践できるよう、行っていきました」
その結果、春先のオープン戦から快打を連発。打撃の調子も上がっている。
1年時から投手を兼任していた浅野はピッチングについても見直した。1年の時から134キロを投げるなど肩の強さには自信があった浅野。ただ、力任せで投げていたことに気づいた。そこで、浅野は冬場に外部の投手コーチから指導を受け、投球フォームの修正、変化球を磨き直した。
オフシーズンでは筋力トレーニングや長距離走などトレーニングをみっちりと行い、体を作った。こうして、一冬超えた最初の実戦登板となった沖縄遠征で自己最速の146キロを計測した。
「この日は[stadium]セルラースタジアム[/stadium]で試合で、練習試合でも球速表示が出たんです。ブルペンから調子が良くて、実際に投げてみたら、ベンチのみんなが驚いていて、表示を見たら『146キロ』が出ていて驚いています」
速球が注目される浅野だが、変化球もスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットの4球種を投げる。その中で最も得意なのがスプリット。調子が良い時は130キロ前半を計測することもある。
[page_break:2人のライバルが自分を掻き立てた]2人のライバルが自分を掻き立てた
網走南ヶ丘戦でヒットを放つ浅野駿吾(遠軽)
ここまで自分の実力を高められたのは、主将としての責任感だけではない。同じ北見支部にいる2人のライバルの存在もある。それが網走南ヶ丘の144キロ左腕・冨水大和、網走桂陽の145キロ右腕・冨水大和だ。小・中学時代から対戦や交流経験があり、浅野はこの2人をライバル視していた。
「同じ支部に140キロを投げる投手が2人もいるって信じられないです。彼らは小学校の時から知っていますので、本当に負けられないですし、練習に取り組むモチベーションにもなっていますね」
特に石澤は昨夏に対戦していて無安打に終わった悔しさがある。そのリベンジする機会がこの春に実現。支部予選の初戦となった遠軽は網走南ヶ丘と対戦。浅野はいきなり右前安打、そして第2打席はセンターフェンス直撃の二塁打。その後も第5打席に単打を放ち、8回裏、第6打席で打席に回った浅野は2度目のマウンドに登った石澤から左中間を破る適時二塁打を放ち、4安打3打点。本塁打が出れば、サイクルヒットの大活躍だった。
網走南ヶ丘をコールドで破り、リベンジに成功した浅野は無我夢中で戦っていたと振り返る。
「狙い球どうかではなく、打席に入ったときは必死でチームにつなぐことをかんがえていて、打てたのもうまく反応ができて良かったと思っています」
また主将としてこの試合を振り返った浅野は「ベンチの声だけではなく、スタンドの声援も大きく、チームが一体となっていたと思います」と弾けた笑顔を見せていた。
そして準決勝・北見工、決勝の北見北斗を破り、4年連続の全道大会出場を決めた。全道大会は自分の名を高める大きな大会となる。
「今年は全国に良い捕手が多くて、正直、自分では到底かなわない人たちばかり。ただ、やるからには北海道ナンバーワンキャッチャーになりたいです」
これまで挫折を味わいながらもしっかりと自分を見つめ直し、実力を高めてきた浅野。春の全道大会、そして夏の支部予選・北北海道大会は飛躍の大会とする。
文=河嶋 宗一