追い求めないことにより自然と出た151キロ 全てをぶつけて日本一を掴む!原田泰成(東海大)【後編】
前編では原田泰成投手が野球を始めたきっかけから、高校時代までを振り返った。後編では大学での飛躍のキッカケや大学野球ラストイヤーへの想いを語ってもらった。
全ての練習をピッチングに繋げる!151キロ右腕が辿ったエースへの道のり 原田泰成(東海大)【前編】
1つのトレーニングが151キロまで飛躍させた
投球練習をする原田泰成(東海大)
原田泰成に転機が訪れたのは2年生の時。チームスタッフが交代となり安藤 強監督が就任。コーチ陣も入れ替わったことで練習メニューも変わったのだが、そのなかに飛躍への大きなきっかけとなったトレーニングがあった。それは投球に必要な動作を一つひとつ確認しながら体を動かすものなのだが、原田投手に詳しく聞いてみた。
―― この練習のやり方を教えてください
原田 泰成選手(以下、原田) ピッチングをする時は足を上げてから投げますが、まずはその足を上げる時の動作だけを切り取って練習します。大切なのは、足を上げる時にしっかりとお腹に力を入れて上げることです。
お腹に力が入っていることを確認しながら右足と左足を交互に上げて一歩ずつ進んでいくのですが、コツとしては足を上げるというよりも、軸足の方を地面に突き刺すような感覚で体を動かします。そして、自分は右投げなのでピッチングをする時のように右足を上げる時はホームプレートがある方向へ顔を向けて、実際にボールを投げるイメージを膨らませています。
―― セットとなる別の動きがもう一つあるそうですが、そちらのやり方も教えてください
原田 バッターの方向へ力を伝えていくために、横へ体を動かします。やり方は、まず実際に投げる時の、足を前へ踏み出す直前のポジションを作ります。その体勢から、一度、手を叩き、それを合図にしてバッターの方向へ体重移動をして力を伝えていきます。この動作を何度か繰り返すのですが、コツとしては足をきちんと踏み出して、頭と足の間に距離を作るようにするのが良いでしょう。
―― この練習をすることで、どのような効果が得られるのでしょうか?
原田 実際にボールを投げる時にどのように力が伝わっていくかを感じながら、体に覚えこませることができます。そして、下半身と上半身を連動して動かす訓練になるので、最終的には力を入れなくてもスムーズに腕が振れるようになります。また、同時に自分のフォームを安定させて、しっかりと固めることができます。
こうした練習の成果が出たのは2年夏。社会人のJFE東日本と行ったオープン戦で自己最速となる151キロを記録すると、その後も150キロ超えを何度もマークしている。「高校生の頃は速いボールを投げたいと考えていましたが、今、球速についてはあまり気にしていなくて、151キロが出た時も『自然に出た』という感じだったんです」。
この原田投手のストレートに対してはバッテリーを組む海野 隆司捕手も「原田は真っすぐで押していける投手でリードがしやすい」と絶賛しており、大きな武器となっている。
大学4年間のすべてをぶつけて日本一を狙う!
原田泰成(東海大)
その翌年となる3年春のシーズンは防御率1.77の好成績で3勝。首都大学リーグの最優秀投手に選出された。「シーズンの入りは悪くて、帝京大との開幕戦でリリーフ登板したんですが、2回で5失点してしまったんです。でも、そこで逆に吹っ切れた感じがあって、それ以降はビビらずに投げることができました」。
すると、2日後の帝京大との3回戦では7回無失点の好投。リベンジを果たして勝利投手となり「自信になった」という。さらに躍進は続き、翌週の日体大戦では昨年、ドラフト1位で西武に入団した松本 航投手と投げ合い、8回2/3を無失点。15奪三振の好投で投手戦を制し、「この試合が自分のベストピッチだと思います」と振り返っている。
そして、この冬のオフシーズンでは真っすぐの質にこだわってきたという原田投手。「キャンプは良かったのですが、その後、投球のバランスが少し崩れてしまったので、これまでやってきたことを繰り返しつつ、ランニングやウエイトトレーニングをしてきました」
現在も本調子ではないというが、武蔵大との開幕戦では149キロを記録したストレートを中心に7回2/3を投げて1失点と勝利を飾り、「チームのためにやるべきことをしっかりとやり、今年に大学での4年間のすべてをぶつけて日本一になりたい」と抱負を語った。
そして、今秋のドラフトに向けては「プロになるためには真っすぐの質もコントロールも上げていかなくてはいけないと思います。それからスライダーやフォークといった変化球でも勝負できるように、しっかりと投げ込んでいきたい」と話した。
東海大といえば、OBには日本を代表するエース・菅野 智之(巨人)らがいるが、同じ右の本格派として原田にも大きな期待がかかっている。
文=大平 明