「勝ち進む中での自信」と「新しい球種」を踏み台に一つ上のステージへ 松倉亮太(佐野日大)【後編】
4月20日に開幕した春季栃木県大会。春の栃木王者の称号を懸けて、熱戦をが繰り広げられている最中であるが、今大会での注目校と言えば秋季栃木県大会を制した佐野日大だ。
昨秋は、エースの松倉亮太を中心に、堅い守りを中心とした野球を展開して、5年ぶりに秋季栃木大会で優勝を果たした。
今回は、そんな佐野日大の秋季大会の躍進の原動力となった、エースの松倉亮太にインタビューを行った。後編では、秋季栃木県大会で優勝を果たした要因や、夏に向けた意気込みを伺っていく。
「打倒・作新」を胸に「制球力とキレ」を磨き続けた 松倉亮太(佐野日大)【前編】
関東大会での好投を生んだ新球・スプリット
笑顔を見せる松倉亮太(佐野日大)
栃木県の高校野球と言えば、作新学院が夏の大会8連覇を成し遂げるなど、「作新一強」の状態が続いており、佐野日大も長く作新学院には勝てていなかった。
そんな中で佐野日大は昨秋、遂に作新学院の壁を破ることができたのだ。秋季栃木県大会決勝で作新学院と激突した佐野日大は、作新学院に会心の逆転勝利を収め、松倉自身も松本翔大とのリレーで作新学院打線を封じこめた。
秋季大会の快進撃の原動力にもなった松倉は、秋季大会で優勝を飾ることができた要因を次のように振り返る。
「大会の初戦は、みんな緊張で思った通りのプレーができていませんでしたが、徐々に試合をやる中で緊張もなくなっていき、意識も高くなって行ったのだと思います。
また、作新学院にはずっと勝ててなかったので、自分も勝ちたいという気持ちが強くありました。そういったところがいいピッチングにも繋がったと思います」
その後、「秋の栃木県王者」として迎えた秋季関東地区大会でも、松倉は存在感を見せた。1回戦の東農大三戦に先発した松倉は、9回を投げ切り2失点と好投。チームも終盤の集中打で逆転勝利を収め、ベスト8に進出を果たした。
秋季関東地区大会での松倉亮太(佐野日大)
東農大三戦での好投で、松倉の名は一気に関東地区に広まった訳だが、実はこの好投の裏には、新球の存在があったことを松倉は明かした。
「実は、関東大会が始まる1、2週間前くらいに、監督さんにスプリット教えてもらいました。それを1、2週間で習得できて、関東大会で投げることができたのでそれは自分の中で大きかったです。スプリットは結構武器になったと思います」
これまでは、ストレートとスライダーを中心に配球を組み立てていた松倉だったが、スプリットを習得したことで、投球の幅もかなり広がったと話す。
勝ち進む中での自信、そして新しい球種を手に入れたことが、松倉が一つ上のステージに上がる為の踏み台になったのだ。
どのチームが来ても一戦一戦自分たちができることをやるだけ
夏への意気込みを語る松倉亮太(佐野日大)
しかし、もちろん松倉はこんなところで満足している訳ではない。秋季関東地区大会でベスト8に進出こそしたが、佐野日大は選抜甲子園は逃した。春季大会での躍進、そして夏の甲子園への出場を目論む松倉は、さらなるレベルアップを誓う。
「終盤になって疲れてくると、真っすぐも変化球もボールが高めに浮いてしまうのが課題です。疲れてくると、やはり手だけで投げてしまい、下半身が使えなくなってしまいます。より下半身を強くして、ピッチングに活かしていきたいと思います」
実は松倉に取材を行ったとき、選抜甲子園の出場校の発表が目前に迫っているというタイミングであった。選抜への出場は当落線上と見られていただけに、松倉にも落ち着かない気持ちがあるのではと予想していたが、松倉は驚くほどに割り切った気持ちで野球に取り組んでいた。
「(選抜甲子園への出場は)ほぼゼロという考えでいます。今は、春の大会でいい成績が残せるように、そこだけを見てやっています」
秋季関東地区大会での松倉亮太(佐野日大)
そう語る松倉の瞳は、とても真っすぐで情熱に満ちたものであった。
秋季栃木県大会優勝の喜びや関東大会で得た手応え、そして選抜甲子園落選の悔しさなど、松倉は昨秋からこの春に懸けて様々な経験をした。その経験の一つ一つが、松倉に強い自信を与えたのであろう。
そんな松倉に、最後に夏に向けた意気込みを伺った。
「どのチームが来ても気持ちは変わらず、一戦一戦自分たちができることをみんなでやって、勝ち上がっていきたいと思います」
今日、春季栃木県大会で今市工を倒しベスト4進出を決めた佐野日大。夏の選手権出場を成し遂げるためにも、まずは二季連続での栃木県制覇を目指す。
文=栗崎 祐太朗