Interview

柳田悠岐2世を襲名し、2020年の高卒ドライチを狙う!来田涼斗(明石商)【後編】

2019.04.14

 今春のセンバツ大会で4強入りを果たした明石商の不動の核弾頭を務めた来田涼斗(2年)。4試合で残した数字は14打数5安打8打点、打率.357。準々決勝の智辯和歌山戦(試合レポート)では先頭打者本塁打&サヨナラ本塁打を記録。春夏を通じ、史上初の快挙を達成し、注目度をさらに高めた。ここではセンバツ大会直前に敢行した来田選手のインタビューの後編を紹介したい。

 今春の選抜の顔・来田涼斗(明石商)!今、明かされる小・中学時代の伝説!【前編】

1年春からつかんだ名門のレギュラー

柳田悠岐2世を襲名し、2020年の高卒ドライチを狙う!来田涼斗(明石商)【後編】 | 高校野球ドットコム
センバツ準々決勝の智辯和歌山戦でサヨナラホームランを放った来田涼斗 ※写真=共同通信

 中学卒業後は兵庫・明石商業に進学。50校近い高校からの勧誘が舞い込む中、地元の公立校を選択した理由は「狭間監督の存在が大きかった」。
 「選手一人ひとりと真剣に向き合いながら熱心に指導する監督さんの姿を見ていて『この人の下で高校野球生活を送りたい』と思いました」

 兄・渉悟さん(現日本体育大)が明石商の野球部出身だったことも選択を後押しした。
 「兄は最後の夏に兵庫大会決勝まで勝ち進みながら甲子園出場を果たせなかったので。その無念の思いを兄と同じ高校に入って晴らしたいという気持ちもありました」

 「1年春からレギュラーを獲る」。そんな強い思いを引っ提げ、明石商野球部の門を叩いた来田は1年春から背番号20をつけ、1番打者としてヒットを量産。これ以上ない順調な高校野球生活のスタートを切ったが、来田は「あの頃が一番精神的にしんどかった…」と苦笑いを浮かべながら回想した。
 「3年生がいるチームでぼくが1年生で1番を打っていたので…。3年生の分の思いも背負っていたのでなにがなんでも結果を出さなければという一心でした。最初から自信があったわけではなく、とにかく無我夢中でやるしかなかった…」

 プレッシャーと戦う15歳を救ったのは、当時の3年生部員から贈られた言葉の数々だった。
 「『1年生なんやから。結果なんか気にせんと思い切りやれ!』とか『ちゃんと実力で選ばれてるんだから。上級生のことは気にしないで堂々とプレーしてこい!』といった言葉を先輩方がたくさんかけてくれて…。それはもう、すごく嬉しかったです。いいチームに入ったなと心から思いました」

 1年夏には背番号16をつけ、甲子園に出場。チームは延長の末、8対9で八戸学院光星に惜敗を喫し、初戦で姿を消したが、来田は1番・レフトでフル出場し、2安打をマーク(試合レポート)。決勝点につながる失策も記録するなど、攻守に貴重な経験を積んだ。

 「球場の声援もすごかったですし、緊張しましたが、打席に入って集中した途端、すべての音が消えました。初球からフルスイングできたこと、そしてストレートを狙っていたところにきた変化球に対応できたことが嬉しかった。でも最終回のエラーは今でも忘れられないです」

[page_break:自慢の俊足をさらに生かすために]

自慢の俊足をさらに生かすために

柳田悠岐2世を襲名し、2020年の高卒ドライチを狙う!来田涼斗(明石商)【後編】 | 高校野球ドットコム
インタビュー中に笑顔を見せた来田涼斗

「練習試合で2回アウトになってしまいましたね…」

 高校入学後の盗塁事情を尋ねたところ、来田は少し残念そうな表情を浮かべながらそう語った。小、中学時代に一度も盗塁死を経験することなく、高校野球の舞台に辿り着いた男ならではの返答だと思った。

 高校入学時に6秒フラットを計測した50メートルタイムは、現在5秒9にまで短縮。「公式戦では送りバントのケースが多いので、盗塁数はそんなに多くないですが、単独で盗塁を決める自信はあります。練習試合ではガンガン走ってます」。

 盗塁テクニック面において、現在、強く意識しているのは「スライディング」だという。
 「お尻の部分が土で汚れるような滑り方をしてしまうとスピードが落ちるので、折りたたんだ側のヒザの横だけが汚れるような滑り方を意識しています。あとはできるだけ足を伸ばし、つま先をベースに当てていく感じで入っていけるように滑ること。つま先が足の中で一番ベースに着くのが早いので。スライディングは高校に入ってだいぶうまくなったと思います。盗塁テクニック面の課題ですか? リード幅がまだ小さく、もっとリードを大きくとれる余地があると感じているので、今後はそこをしっかり詰めていきたいですね」

来田涼斗が描く理想の選手像、そして夢

 「監督さんには『タイミングの取り方が下手だ』とずっと言われてきました。自分もそれは思いますね」

 トークテーマを「バッティング」に移すと、来田は自らそう切り出した。
 「昔から自分は足を上げてタイミングをとるタイプなんですけど、中学の頃はストレートの比率が高かったので、真上に上げて、ドーンと下ろす感覚でも問題なかったんです。でも高校では変化球の割合が増え、しかも変化にキレがあるので、体勢を崩されることが多くなった。確率高く対応していこうと思えば、なにかを変える必要がある。そう感じていました」

 高校初のオフシーズン、狭間監督のアドバイスで「軸足である左足に右足を寄せながら足を上げるフォーム」に取り組んだところ、いい感覚が宿った。
 「監督さんから『足を真上に上げるんじゃなく、まずは右足を左足に近づけてから上げたほうが、体勢も崩れにくく、ブレを抑えられるのでは』と言われたんです。試してみると、前の上げ方よりも軸足にしっかり体重を乗せた状態でボールを打ちに行けることに気づけました」

 足を上げるタイミングには一定の法則を作った。
 「テークバックに入ったピッチャーのボールが最もセカンド方面に行った時に軸足に体重がしっかり乗った状態を作り、ピッチャーがリリースした瞬間に合わせ、足を下ろしていくことを意識しています。あまり早く足をあげすぎてしまうと体勢が崩れやすくなりますし、遅すぎると、立ち遅れてしまう。今、タイミングという面ではいい感じになってきていると思います。ボールをとらえる確率は以前に比べ、明らかに上がりました」

柳田悠岐2世を襲名し、2020年の高卒ドライチを狙う!来田涼斗(明石商)【後編】 | 高校野球ドットコム
高卒ドライチを目指して今も練習に励む来田涼斗

 昨年の11月、教育実習のため、母校を訪れた松本航(西武)直伝の体幹トレーニングをチーム全体で採り入れた明石商。来田は「1か月続けた時点で成果を実感できました。バッティング面でもプラスになっている」と嬉しそうに話す。
 「明らかに軸がぶれにくくなりました。頭もぶれにくくなった分、ボールもぶれず、よく見えるようになったので、『あとはバットを素直に出せばいい』という感覚が生まれた。軸がぶれなくなったことで、以前よりも楽に飛ばせるようにもなった。『力感を出さなくても打球は飛ぶ』という感覚を得られたことも大きかったです」

 来田が未来に描く「理想の選手像」は明確だった。
 「柳田悠岐選手のように、走れて、守れて、ホームランも打てて、打率も残せる。そんな選手を目指したいです」

 最後の質問として選択したのは「将来の夢」。即答だった。
 「プロ野球選手になることです。高卒でのドライチを狙ってます」 

 現実化の可能性は十分。逸材二年生の「これから」に要注目だ。

文=服部 健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】