名将も認める「稀に見るキャプテン」 近藤大樹(西日本短大附)vol.1
今年の西日本短大附について西村慎太郎監督に聞くと「非常に楽しみなチーム」という答えが帰ってきた。その楽しみなチームの中心にいるのが、近藤大樹だ。
西日本短大附を17年率いて、2度の[stadium]甲子園[/stadium]出場に導いている西村監督をして「稀に見るキャプテン」と言われる近藤について迫ってみたい。
キャプテンとしての近藤大樹
近藤大樹(西日本短大附)
西日本短大附のキャプテンと言えば、今までもチームをまとめるキャプテンシーのある選手が選ばれる。つまり野球が上手い選手でなく、チームをまとめキャプテンという役割を担える人物が選出されるのである。だからこそ、西日本短大附のキャプテンは毎年しっかりしている。
近藤はというと、そのキャプテンシーだけでなく、プレーヤーとしての実力も備えた選手になる。
「近藤みたいにプレイヤーで引っ張りながら、なおかつ周りの子に気を配ったり、または色んな目配り・気配り・心配りができるタイプというのは あまり最近は見たことがないです。彼が入ることによってチームが本当にまとまっているなというのは感じますね」
名将にここまで言わせるキャプテン・近藤はさらなる高い目標を持っている。
「みんなで上のレベルに行って10試合やって10回勝つチームにしたい。西村(慎太郎)先生を[stadium]甲子園[/stadium]に連れて行きます。監督はベンチに座っているだけで自分たちで考えて勝つ野球を作ります」
非常に驚かされるコメントである。近藤は選手個々が考え、自分たちで動けるチームを目指している。
自分で考えプレーする力を伸ばすことは、個人でも難しい。そんな中、近藤は自分以外のすべてのメンバーが自分で考えプレーできる事を目標にしているのである。つまり他者の成長まで近藤は背負ったのである。
そんな近藤を西村監督は、「責任感が強い」と評する。
「すごく責任感が強いんです。チームの勝敗まで自分で背負ってる部分もありましたね。『自分がキャプテンをさせてもらっていて、うまくいかなくて皆に申し訳ない』と言ってるところがありましたね。だから『お前バカか、それは監督の仕事だぞ』という話はしていたんですけども。それくらい彼は責任感が強いタイプです」
このコメントには近藤のキャプテンとしての考えをよく示している。近藤は他者の成長を自分のことのように考えられるのである。名将西村監督に「稀に見るキャプテン」と言われるのがよく分かる。
近藤のキャプテンシーとは?その答えは、他者の成長まで背負える責任感と言えるだろう。ここからは、現在のチームの現状を近藤に解説していただきながら、近藤のキャプテンシーをさらに掘り下げていきたい。
[page_break:言ってやらせるよりも気付かせるように]言ってやらせるよりも気付かせるように
近藤大樹(西日本短大附)
近藤は、現在のチームの雰囲気は決して悪くないと語り、一定の手応えを口にする。
「勝ちという気持ちがとにかく強くて、とにかく声が出るチームで、雰囲気は悪くないと思っています。練習試合でも、絶対負けないとみんな言っているチームです」
だがその一方で、[stadium]甲子園[/stadium]を目指す上では一つだけ足りていないものがあると近藤は考える。それは、日頃の学校生活だ。日頃の生活や態度をしっかり行っていけば、それがより自信になっていくと近藤は考えているが、まだチームが子供であることが大会での負けに繋がっていると近藤は分析する。
近藤はキャプテンとして、チームの日頃の生活を整えていくために、次のようなアプローチを試みていることを明かす。
「今は言ってやらせるよりも、気付かせるようにしています。自分たちで気付かないと、人から言われてやっても、本当に分かったことにはならないので。何も言わずに、気付いて欲しいと思ってやってます」
「何も言わない」アプローチができる主将が、高校野球にどれだけいるだろうか。
近藤が考える強いチームは、キャプテンが引っ張っていくチームではなく、個人個人が自律してチームのために動いていけるチームなのだ。
こうした近藤のキャプテンシーは、西村監督だけでなく、チームメイトも認めている。西日本短大附の主砲である神宮隆太は、チーム内での近藤の存在の大きさを強く語る。
「近藤がいるだけでチームが締まります。キャプテンとして本当に大きな存在だと思います」
チームメイトからの信頼は、他者の成長を背負っている証だろう。西日本短大附の屋台骨となっているのは、間違いなく近藤だ。
vol.1はここまで。次回は、U-15日本代表の経験や西日本短大附への進学した経緯についても迫っていきます。vol.2もお楽しみに!
文=栗崎 祐太朗