甲子園を経て大器となれ!150キロを投げる可能性を秘めた右腕・狭間 大暉(明豊)
好投手が多い明豊だが、潜在能力では一番なのが狭間 大暉(たいき・新2年)だ。177センチ77キロと均整がとれた体格から投げ込む速球の最速は140キロを計測する。
川崎絢平監督は「まだ課題は多いですが、将来的に140キロ後半~150キロを投げられる潜在能力の高さはあります」と評価されるように、角度良く振り下ろすストレートの勢いは大きな可能性を秘めている。
全国大会で実感した自分の未熟さ
キャッチボール中の狭間大暉
才能は中学時代から光っていた。小学校1年生から野球をはじめ、彦ノ内少年野球部に入部した狭間は小学校4年で投手をスタート。津久見市の大分南シニアに入団すると1年冬には129キロまでスピードアップ。その後、体幹トレーニングを中心に行っていき、みるみると球速を高めていく。
また狭間にとって成長のきっかけになったのが、2年冬の台湾遠征だ。九州選抜に選ばれた狭間は、台湾の舞台で台湾の強豪や各県の選抜相手に登板。2試合を投げて、計10イニングで4失点とまずまずの成績を残した。
「2試合とも台湾のチームに投げたのですが、甘い球を打たれる怖さを実感しましたが、厳しいコースを投げ続けて抑えることができました」
この経験を糧にトレーニングに打ち込んだ狭間は中学3年生になると、最速138キロをマーク。エースとしてチームを牽引し、全国大会に出場したものの、初戦敗退。
「速いだけでは通用しない。全国の厳しさを実感しました」と振り返る。そして明豊に進むきっかけとして、「大分から日本一をとりたい」と思いで明豊に入学を決めた。投手を担当する赤嶺部長、豊田コーチから投手のスキル、トレーニング方法などを学び、1年秋にベンチ入り。球速も140キロに達した。
ピッチング練習をする狭間大暉
狭間の投球フォームで特徴的なのがステップ幅が狭く、角度良く振り下ろすオーバーハンドであること。狭間自身、角度あるストレートを投げたい思いがあった。
「重心を下げすぎると角度がなくなってしまうので、勿体ないと思っていて、それで重心を下げないフォームで投げることを重視しています。そのため、マウンドの傾斜を使って投げることを大事にしています」
そして狭間にも大舞台で投げる機会が巡ってきた。神宮大会出場がかかった九州大会決勝だ。
「同級生の若杉が頑張っていたので、なんとか優勝したいと思っていたんですけど、うまく投げきれなくて悔しかったです」
3回を投げて1失点の力投だったが、狭間自身は全く満足していない。全国レベルの強豪校に通用するために、今、何が足りないのかを実感する試合だった。
全国の舞台で通用するための課題
強気なピッチングでライバルたちを抑えていく!
川崎監督は主力投手の若杉と狭間を比較しながら、課題をこう指摘している。
「若杉は1試合通して、どう打ち取ればいいのか、どう投球を組み立てていけばいいのか、それをピッチングに実行できる視野の広さがあります。狭間は経験の少なさもありますが、まだ目の前の打者に向かうことで精いっぱいな状況です。そこを乗り越えていけば、全国レベルの投手になる可能性は秘めています」
川崎監督は「将来、150キロを投げられる投手」と狭間の潜在能力を高く評価しているが、勝てる投手になるには実戦力を身につけなければならないと厳しく見る。狭間自身も投手陣の先輩からアドバイスを受けながら、選抜へ向けて準備している。
「大畑さんから、ピンチの場面では強い気持ちで投げ切ることが大事だと言われました。強い気持ちで攻めのピッチングをしたいです」
まだ出番は少ないが、能力の高さは誰もが認める。果たして、全国の舞台でベールを脱ぐことができるか。
文=河嶋 宗一