大分のライバルが恐れる日高翔太(大分工) 自慢のストレートの凄さが数値でも明らかに!【後編】
大分の各校を取材すると、多くの学校が日高を警戒している。ある学校の監督は「憎たらしいぐらい目ざとさを持った投手で、ボールも速くて、変化球も良い。敵ながらあっぱれです」と語るほど。前編では日高翔太のクレバーさに迫ってきたが、後編では明豊戦で発揮した緻密な駆け引きを行った投球術や進化を見せたストレートを語りたい。
小さな大投手・日高翔太(大分工)。ウリは「動きを言語化できる抜群の野球センス」【前編】
明豊との試合でつかんだもの
日高 翔太投手
注目の明豊戦。試合前、明豊打線のレベルの高さに不安な心境だった日高だが、この試合でも持ち味の投球センスの高さを発揮する。
「この試合のテーマはいかに緩急が使えるか。スイングが速い打者が多かったので、チェンジアップもうまく使えたのですが、さらに僕は球速が遅いストレートも使いました。ストレートと同じ腕の振りで少しだけ球速と落とすのですが、これがうまい具合にはまってくれました」
また怪物打者・濱田太貴に対しては「初打席、カーブで空振りを奪ったのですが、非常にスイングが速くて、簡単に攻めたら打たれると思いましたので、モーションに変化をつけました。クイックで投げたり、いつもよりゆっくり投げたりと工夫をしていきました」
5回まで3失点を喫していたが、創意工夫を凝らしたピッチングで6回以降は無失点ピッチングを続け、延長戦まで持ち込んだ。延長11回表に勝ち越し点を与えたが、日高にとっては投手としてのスキルを大きく高める試合となった。
「打者との駆け引きはこの試合で学ぶことができましたし、延長11回でばててしまったように、体力面が課題となった試合でした」
夏の大会を糧にさらにステップアップし、秋の九州地区予選に臨んだが、準々決勝で日本文理大附に敗れてしまった。
「この試合は雨が降っていて、スライダーが全く曲がらず、ストレート主体になったのですが、力みすぎてしまい、甘く入ったところを打たれてしまった試合でした。制球力、投球術などに課題が出た試合となりました」
こうして迎えた冬場はもう一度、フォームや投げる感覚を見直した。すると、日高のストレートは本人でも驚くほどの成長を見せていたのだった。
8割の力でも140キロ台を連発!
日高 翔太投手の武器であるストレートの握り
まずはフォームの修正点を語ってもらおう。
「僕は突っ込み気味のフォームになるので、左足を挙げたとき、しっかりと後ろで溜めて投げることを意識しています。またストレートの握りも工夫しました。縫い目に対してしっかりと握って、ボールの下側に置く薬指と親指はチェンジアップと同じく輪っかを作っています。その握りだとしっかりと弾くことができて強いストレートが投げられます」
そして8割程度の力で投げた方が回転力の高いストレートを投げられることに気づいた。
「最近やっと気づいたんですよね。力を入れない方が良いストレートを投げられるということに」
それは数値としても現れている。取材日、ミズノ社の計測アプリ「MA-Q」を使いながら投球練習を行ったところ、驚くべき数字が出ていた。
日高 翔太投手がマークした最高球速と回転数
ストレート47球中、23球が140キロ越え。平均球速139.38キロ、最高球速143.1キロ、2411回転と、高校生としてはハイレベルな数値をたたき出していたのだ。捕手を座らせてからはほぼ140キロをたたき出しており、低めに回転力が高いストレートをしっかりと投げ込んでいたことからも、完成度の高さがうかがえる。
取材日でのブルペンはストレートのみだったが、変化球の精度も高いという評判なのだから恐ろしい。その後、他の学校の投手も測定してみたが、数値的なものは日高が一番だった。日高自身、140キロ越えが出たことについては驚いていた。
「本当ですか!秋までのマックスは138キロだったので、143キロが出ていて嬉しかったです!」と笑顔を見せる。受けた正捕手・今宮啓斗も「秋と比べてもかなり速くなっていると思います。強豪校と勝負ができるストレートになっています」と手ごたえを実感している。
1年秋、練習試合で投手を志願しなければ、今の日高はない。成長をもたらしたのは日高のたゆまぬ努力と自分の動きを言語化できる表現力があるからだ。
夏に繋げるためにも春の優勝を目指す!
最後に、今年に向けての意気込みを語ってもらった。
「まず春は、大分高と明豊は九州予選に出場しませんが、そういう大会だからこそ優勝して、夏につなげていきたいです」
ピッチング練習後、ノックではセカンド、ショートの守備に入り、軽快な動きや無駄のない連係プレーを見せた日高。恐ろしい野球センスを持った選手である。
実力だけではなく、目鼻立ちが整った顔立ちはスター性があり、このまま順調に成長を遂げていけば、夏には全国を熱狂させる投手になるかもしれない。
文=河嶋 宗一