Interview

小さな大投手・日高翔太(大分工)ウリは「動きを言語化できる抜群の野球センス」【前編】

2019.03.03

 2018年7月12日、明豊をあと一歩まで追い詰めた大分工・2年生エース・日高翔太。168センチながら、最速143キロを誇るストレートは回転数が高く、多彩な変化球を制球力良く投げ分けたピッチングは大人びていている。

 さらに遊撃手・二塁手もそつなくこなし、かつて川崎憲次郎投手(元中日)を指導した山本監督は「野球センスの高さは歴代の教え子でも上位に入ります」と評するほど。なぜ日高は高い野球センスを発揮できるのか?

投手転向のきっかけとなった1年秋の練習試合

小さな大投手・日高翔太(大分工)ウリは「動きを言語化できる抜群の野球センス」【前編】 | 高校野球ドットコム
キャッチボールをする日高 翔太投手

 身長168センチ。今でも身長を伸ばしたい思いはある。日高は背が低い劣等感をバネにして、ここまで成長してきた投手だといえるだろう。そんな日高が野球を始めたのは小学校1年生の時、戸次(へつぎ)少年野球団でのことだった。

 小学校までは投手だったが、中学で大分シニアに進むと同学年には投手が多く、投手はあきらめ、外野・ショートを兼任。最終学年になると3番を打つまでに成長する。その野球センスの高さはチームメイトからも絶賛されていた。

 大分シニアのチームメイトだった大分舞鶴のエース・常廣 羽也斗(つねひろ・はやと)は「足も速いし、肩も強いし、打撃も良いし、野球センス抜群の選手でした」と凄さを語る。大分工でバッテリーを組む今宮も「大分市内では話題の選手でしたし、すごいやつだなと思っていました」と振り返る。ただ日高自身、投手として活躍できなかったことに悶々とした思いだった。
 「体も小さいですし、投手はもうできないかなと思っていました」

 大分工進学のきっかけとして、兄の影響があった。
 「兄は大分工出身でよく応援にもいっていました。伝統もある学校で大分工でプレーしたい気持ちがありました」

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取材日にも内野守備をしていた日高翔太投手

 大分工には遊撃手として入部。1年秋には1番遊撃手のレギュラーを獲得するまでに成長した。県大会では背番号6でベンチ入りしたが、その県大会直前の9月前半、投手に転向する出来事があった。

 大分工は県大会に備え、宮崎日大鹿児島実と練習試合するために遠征を行った。遠征は限られたメンバーだけが行き、2日間で故障をさせないように、投手をやりくりする。試合が進むうちに投手が少ない事態になり、その時、当時の監督が「投手できるやつはいるか?」と選手に求めた。

 そこで志願したのが日高だったのである。遊撃手としてプレーしながらも、投手をやりたい気持ちは諦めきれなかった。
 「自分のウリはなんといっても肩の強さだと思っているので、肩の強さをアピールできる場所は投手しかないと思って、志願しました」

 6回裏から登板した日高は4回無失点の好投。翌日の鹿児島実業戦では8回途中まで無失点。そこから一気に5点を失ったが、久しぶりの投手としての登板で、強豪2校に好投を見せたのは大きな自信になった。

 この好投が認められ、秋の県大会では投手として登板も経験。大会後の練習試合では投手としての起用が少しずつ増えていく。

[page_break:自分の動きを最大限発揮できるようフォーム・変化球の握りも追求]

自分の動きを最大限発揮できるようフォーム・変化球の握りも追求

小さな大投手・日高翔太(大分工)ウリは「動きを言語化できる抜群の野球センス」【前編】 | 高校野球ドットコム
ブルペンでの日高 翔太投手

 ここから投手として技術を追求する段階に入る。まず日高が着手したのはフォーム改造。上半身主導になっているフォームから軸足にしっかりと体重を残し、下半身主導のフォームで投げられるよう、改造を行った。

 「自分は肩が強いので、それに頼る投げ方になっていました。ピッチングフォームは岸孝之投手を参考にしました。岸投手とは身長も、投球のタイプも違いましたが、フォーム全体の流れや、球速ではなく、キレで勝負するところに惹かれ、自分が目指す道だなと思いました」

 投球フォームの流れをつかみ、冬場はサーキットトレーニングなどを行い、一冬超えて、138キロまでスピードアップに成功する。

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日高翔太投手を支える武器・チェンジアップの握り

 今度は変化球習得に入る。今ではスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットと多彩な変化球を操る日高だが、この時、武器と呼べる変化球は投げられなかった。最初に決め球となったのが、チェンジアップだ。チェンジアップの握り方が独特だった。縫い目に合わせて親指と人差し指で輪っかを作っている。この握りの狙いについて聞いてみよう。

 「人差し指と親指を抜くイメージで投げると、球速も落ちて、落ちるボールに近づきました。最初はフォークを投げたい気持ちがあったんですけど、手が大きくなく、握力もなかったので、チェンジアップを投げることになりました。投げていくうちに、縫い目に合わせて人差し指と親指を抜いて投げると感覚が合うことがわかりました」

 チェンジアップを2年春にマスターし、ついに背番号1を獲得する。さらに夏ヘ向けてスライダーを習得した。またスライダーは感覚を変えた。
 「自分の中で肘をひねるイメージがあったのですが、それだと肘に負担がかかりやすくなると指摘されました。そこで僕は人差し指と薬指を縫い目に合わせて、リリースする時、横に切るイメージで投げる。ストレートと同じ感覚で振れるようになりました」

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変化球の投げ方について説明

 変化球を投げる際、どういう感覚で投げらればいいのか、論旨明快に説明ができる。ここが日高の野球センスの高さの所以だろう。山本監督も日高の動作に対して、言語化できる表現力を絶賛する。
 「頭の中で描きたい動きを実現できるということはセンスが高いということなのですが、日高の場合、何をしたいのかが説明ができる。そこが彼の凄さではないかと思います」

 こうして2年夏も背番号1を獲得した日高は、初戦の大分上野丘戦で7回1失点完投勝利。2回戦では東京ヤクルト入りしたスラッガー・濱田太貴など強打者を多く擁する明豊との対決を迎えたのであった。

 前編はここまで。後編では明豊戦で実感した課題。そして着手したフォーム改造について。さらに現在の日高投手のポテンシャルを解析しつつ、春への意気込みを伺いました。後編もお楽しみに!

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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