山口が生んだ大砲・前田健伸(山口東リトルシニア)が打ち破った中学野球の壁
2018年8月に行われた第46回日本リトルシニア日本選手権大会。準優勝に輝いた山口東リトルシニアで、大きな存在感を放った長距離砲が前田健伸選手だ。174センチ、96キロという恵まれた体格から長打を量産し、リトルシニア日本選手権大会ではベストナインも獲得した。
今回は、そんな前田選手に独占インタビューを行い、2年5カ月の中学野球で歩んできた道のりや、今春からスタートする高校野球生活について語っていただいた。
壁を打ち破ったのは監督から渡された資料
前田健伸(山口東リトルシニア)
「前田健伸」という名前を聞いて、ピンときた方もいるのではないだろうか。そう、テレビ朝日「ビートたけしのスポーツ大将」に出演し、中学生最強スラッガーとして桑田真澄さんや谷繁元信さんと対戦した、あの前田健伸選手である。
「バスの中ではすごく緊張しました。グランドに入ると、試合通りにプレーできましたが、会場の[stadium]大和スタジアム[/stadium]は、スタジアムなのに人工芝で驚きました。スタジアムの人口芝は初めてだったので」
「中学生最強スラッガー」という冠がついても、やはりそこは中学生である。実際、前田選手と話をすると、愛嬌がありマイペースな性格が感じられ、「最強」から連想される剛毅で血気盛んなスラッガーとはかけ離れた人柄のように感じる。
とは言え、当然ながら努力なしに今の打撃を手に入れた訳ではない。山口リトルシニアに入団した当初は、なかなか結果が出ずに悩んだと前田選手は話す。
「小学校と比べて練習の内容も高い物を求められて、最初はやっぱり不安でした。また、小学校ではソフトボールをやっていたので、マウンドからの距離も違いあんまり結果が残せなかったですね」
そんな中、飛躍のきっかけになったのは、長峰次夫監督から渡される資料だった。山口東リトルシニアでは、長嶺監督が野球の知識やトレーニング方法に関する、様々な資料を定期的に選手に配っている。前田選手はその資料を読み込むことで、打撃技術を向上させることに成功し、中学野球で30本以上の本塁打を放つに至ったのだ。
「特に勉強になったのが、雑誌に載ってるプロ野球選手のフォームの写真をコピーしたものですね。色々と参考になりました」
大谷、根尾の系譜を受け継ぐことが出来るか
左から三奈木亜星、野間翔一郎、前田健伸、瀬尾秀太(山口東リトルシニア)
そんな前田選手は、実は投手としても高い能力を持っている。エースである三奈木亜星投手に次ぐ、貴重なサウスポーとしてマウンドに上がり続け、ストレートは最速131キロを記録。チームの窮地を幾度となく救ってきた。
「自分では、緩急を使って抑えるところが持ち味だと思っています。変化球もカーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークと一通り投げることが出来ます」
目標とする選手には、偉大なるメジャーリーガー・松井秀喜氏を挙げる前田選手だが、高校では投手としての活躍にも意欲を示す。
「バッターとピッチャーのどっちも勝負したいです。ピッチャーとしては、高校だとイニングが多くなるので打たせて取るピッチングをしたいと思いますし、バッターとしてはホームランを50本以上打ちたいと思っています」
「二刀流」という呼称で近年定着しつつある、投打で活躍を見せる選手。大谷翔平や根尾昂が象徴的な存在となっているが、選手としてのタイプに違いはあるものの、前田選手はその系譜を受け継ごうと意欲を見せている。
そんな前田選手も、今春からは関西の強豪校へと進学予定となっており、高校野球の舞台へと踏み出していく。[stadium]甲子園[/stadium]優勝経験もある名門校だけに、気合は十分だ。
「とにかく[stadium]甲子園[/stadium]で優勝したいですね。1年からレギュラーを取って、いずれは4番を任されるような選手になりたいと思います」
スケールの大きなバッティングに、完成度の高い投球術。そして、その野球の能力をさらに引き立てる、素直で純粋な人間性。
「甲子園のスター」の冠が、これほど似合う選手はそうはいない。前田選手が高校3年になる2021年、前田選手が[stadium]甲子園[/stadium]のダイヤモンドを駆ける姿を是非とも見たい。
文=栗崎 祐太朗