質のいい基礎を追求し全国で通用するショートに 勝連 大稀(興南)【前編】
昨夏の甲子園で、球に逆らわないバッティングで広角に鮮やかなヒットを放ち、8打数5安打と結果を残し、守備でも好守でチームに貢献したことは記憶に新しい。そんな勝連 大稀(かつれん・ひろき)の、走攻守に迫る。
基本練習を目的をもって取り組む
バットを担ぐ勝連 大稀(興南)
勝連の強みは、基本となる練習を大切にする点だろう。大切にすると言っても、数を多くやるなどではなく、とにかく質を重要視している。
どのように練習を本番と同じ状態に持っていけるのか?
どれだけ中身の濃い練習に昇華できるのか?
目新しい練習をするわけではなく、ごくごく基本的な練習の中に質を追求するのである。それは勝連の言葉の端々から伝わる一貫した考え方である。
では、打撃・守備・走塁とそれぞれのパートでの練習内容を見てみよう。
目的のある素振り
ヒットを放つ勝連 大稀(興南)
まず、打撃練習に追いて勝連が重要視しているのは「素振り」だ。
「特に変わったことはしてないのですが、素振りを全力で振るということを心がけています。ボールは打ってないのですけども、素振りの中でもここにボールがあるなとイメージして、自分が思ったところを振れるようにしています」
実際のボールをイメージして素振りしていることは理解できると思う。ただし、勝連はもう一歩進んで考えている。
「スコアリングポジションでランナーがいた時に必ず返せるような、高打率を残せてまた長打も打てるような、そんなバッターになりたいです。勝負強いバッティングができるようになりたいです」
と語ってくれたように、勝連の目標は、「勝負強いバッティング」である。その勝負強い打者になるために、「スイングスピードを上げることとミート力を磨いていきたい」と話してくれた。
実は、素振りの前に、この目標設定をしているというのが勝連らしさなのである。
実際のボールをイメージしながらの素振り、という点は確かであるが、勝連はその上で、「スイングスピードとミート力を上げる」というところに意識をおいて、素振りをしているのである。意識がおいてあるかどうかで、効果は大きく変わる。そこが勝連の凄さである。
勝負強いバッティングということならば、試合の状況設定もしているかもしれない。勝連は、素振りをここまで昇華して、質を上げているのである。勝連の素振りは、「目的のある素振り」である。
[page_break:基本の守備練習から意識する質]基本の守備練習から意識する質
守備の基本練習を繰り返し行う
次に勝連の守備練習について掘り下げていきたい。
勝連が守備練習の目的を話してくれた。
「守備範囲の広さというのがショートのポジションで大切なので素早く動けるようなりたいです」
「正確なプレーを心がけています」
素振りと同様、まず目的があるのが勝連である。そしてそのための練習がついてくる。
守備範囲を広くするために、意識している練習はトスワークだ。(左右に振られるように転がされるボールを捕球する練習)。
「ダッシュするという時に手を抜かない。最短距離のダッシュを心がけています」
勝連は、目的を意識しながら、トスワークで身体をいじめ抜いている。また、正確なスローイングは、キャッチボールから意識している。
「スローイングはキャッチボールの中に含まれているので、キャッチボールもしっかり相手の胸をめがけて投げます」
と、こちらも目的があるキャッチボールについて話してくれた。
目新しい練習でなく、基本練習ばかりである。ただ、基本練習にも、事前に目的・計画を入れることで、練習の質を上げているのである。
目的を明確にした練習だからこそ、練習後に修正ができるのだ。その繰り返しによって、練習の質が徐々に上げられて行くのだろう。
前編はここまで!後編ではこだわりの走塁や、憧れの選手について伺いました!
文=田中 実