ガムシャラさから脱力を追求 荻野貴司(千葉ロッテ)の走塁術【前編】
今年の千葉ロッテマリーンズは藤原恭大(大阪桐蔭)をドラフト1位指名を行い、交渉権を獲得。近年、千葉ロッテの野手は充実とした布陣となってきたが、そんな中、外野手最年長の荻野貴司選手はフルシーズンの活躍が求められている。
奈良郡山、関西学院大、トヨタ自動車を経てプロ入りした荻野選手はプロ1年目からレギュラーとして活躍。驚異的な俊足を武器にプロ1年目からここまですべて二けた盗塁を記録し、通算173盗塁。恐るべしは8割を超える盗塁成功率である。そんな荻野選手はいかにして走塁術を磨いてきたのか。
大学3年から始まった俊足・荻野の道
愛用のコウノエベルトスパイを手に取る荻野貴司選手(千葉ロッテマリーンズ)
ーー 荻野選手は奈良県の郡山高校出身ですが、まず進学されたきっかけを教えてください。
荻野貴司選手(以下、荻野) 中学の時はクラブチームに所属していましたが、そこで試合に出られなくて、勉強の方を頑張らないといけないと思って、奈良県の中でも勉強ができて、野球も強く、文武両道をモットーにしている学校でしたので受験しました。
ーー 実際に郡山高校に進まれていかがだったでしょうか。
荻野 野球の面では成長をさせていただきましたが、それ以外にも、人として成長させていただきました。挨拶、礼儀を全部教わった感じなので、行けて良かったと思います。
ーー 荻野選手は2年生からショートのレギュラーを獲得され、3年夏には奈良大会準優勝を経験しました。当時、自分はどんな選手だったのか、覚えていらっしゃいますでしょうか。
荻野 あまりずば抜けたものがなく、すべてにおいて無難にこなす選手だったと思います。その中でも守備を重視していて、高校の時はある程度、守備に自信があったと思います。
ーー その後、荻野選手は関西学院大に進まれますが、入学当初、最終目標をプロにおいていたのでしょうか?
荻野 いや、そこまで強い思いはなかったですね。少しでも長く野球ができればいいかなとは思っていました。
ーー そんな荻野選手は大学3年生時に、重たいペットボトルをもってダッシュに取り組んだというエピソードがありますが、この時から走塁に目覚めたという感じでしょうか?
荻野 そんなこともありましたね。この時、冬のメニューでかなりの量を走りましたね。またチームとして走塁を重視する方針となっていました。関西学院大は強豪校から選手がきているわけではなかったので、そんなにたくさんホームランを打てる選手もいません。何人か足が速い選手がいたので、それで足を生かしていこうと思いました。そこからチーム全体で足を強化する流れになっていきました。
ーー そして荻野選手は4年春(2007年)には17盗塁で23年ぶりとなるリーグ新記録を樹立します。この時、盗塁技術は確立されていったのでしょうか?
荻野 相手にスキはないかなと思って探していました。でも全然で、勢いと足の速さで勝負していて、まだ技術で勝負できる選手ではなかったです。
ーー 4年時の活躍によってプロから注目された荻野選手ですが、プロを選ばず、名門・トヨタ自動車へ入社されます。社会人野球は駆け引きが優れ、ハイレベルな環境です。走塁術を発揮する難しさは感じましたか?
荻野 そうですね。おっしゃる通り、社会人では簡単に走らせてくれない。投手のクイックも速いですし、捕手のレベルも高い。だから社会人の時は足でかき回すことはできなかった記憶があります。
[page_break:社会人に入って本格的に走塁技術を磨く]社会人に入って本格的に走塁技術を磨く
走塁技術について語る荻野貴司選手(千葉ロッテマリーンズ)
ーー では社会人に入ってどう走塁を磨かれてきたのでしょうか?
荻野 トヨタ自動車の先輩から学んだことが多かったと思います。本当に優秀な先輩たちばかりでしたので。やはり学んだのはスタートです。1、2、3歩目を意識して、どうすればスピードにうまく乗ることができるか。そのことを考えて取り組んでいました。
ーー そのスタートを良くするために、荻野選手はどういうことを意識されましたか?
荻野 昔は脚力に頼っていて、力んだ状態で走っていたと思います。社会人で走れる選手になるために意識したことはどれだけ脱力するのか。必要な時に力を入れて、走ることを意識しました。
ーー 盗塁するとなると、投手の観察の仕方も大事となります。観察面で変化したことはありますか?
荻野 走るためには投手の癖を盗む。そう考えていて、社会人になるまでは、投手のフォームの一部分を見ていたんですけど、社会人の投手は癖が出なくなりますので、投手の全体の動きを見て何となくモーションを盗むやり方に切り替えました。
ーー 勢いのまま走っていた走塁から、考えて走る走塁へ転換した荻野選手ですが、すぐに実践はできるようになったのでしょうか。
荻野 いやすぐには実践できなかったですね。意識していると語りましたけど、今でも理想の走塁ができるよう、勉強中です。まだ完成したわけではないので。
前編はここまで!後編ではプロ入り後の走塁術やパフォーマンスの向上に繋がった「コウノエベルトスパイク」についても迫っていきます。
文=河嶋 宗一
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