「綺麗さ」と「力強さ」を兼ね備えた投手へ!古谷拓郎(習志野)の優先課題は「体づくり」【前編】
10月25日のドラフト会議にて、千葉ロッテマリーンズからドラフト6位指名を受け、見事にプロの扉を切り開いた古谷拓郎(習志野)。184センチ77キロの長身から最速146キロのストレート、曲がりが鋭いカーブを武器にする右の本格派である。何よりスカウト、小林徹監督からも絶賛される投球フォームの完成度の高さによって高次元のピッチングを生み出している。
鎌ヶ谷二中時代は県大会ベスト8が最高だった古谷が、なぜ高卒プロへたどり着くことができたのか?その歩みを追っていく。
3年間、常に重視してきたのは体づくり
古谷 拓郎
小学校2年生の時から野球をはじめ、当時所属していたチームの人数が少ないということもあり、投手を始める。そして習志野に進むきっかけについて古谷は「僕に最初に声かけてくれた学校ですし、僕のおじさんが大の習志野野球部のファンで、小さいころに試合を何度もみていたので、憧れは強かったです」と話す。
こうして、習志野野球部の門をたたくことになった古谷。実際に入学するとレベルの高さを実感する。
「自分が今まで教わったことがないことをたくさん教えてもらいました。まず頭で考えて動けないほど、いろんな練習をしたので、それに慣れるのに大変でした。状況別でどう投げるべきか、点差、場面を考えての配球は中学生の時まではやっていなかったので、野球の奥深さを習志野で学んだと思います」
ピッチングと同時に行っていたのは体づくりだ。小林徹監督も、古谷自身も「重点的に行ったのは体づくり」だという。小林監督はさらにその方針を説明する。
小林 徹監督
「古谷の投球フォームは本当に綺麗で、フォーム面の指導はほとんどしたことがありません。理想は強くて綺麗ですが、下級生時代の彼は綺麗だけど力強さがなかった。彼が高いレベルで勝負するには綺麗な動きの中でどう力強さをつけていくのか。そこを追求した3年間だったと思います」
古谷は先輩、同級生のライバルとの競争に負けまいと、練習試合で結果を残し、1年秋にベンチ入りを果たす。秋の公式戦では初登板するが、「まだ制球力も低く、完成度も低かった」と振り返る古谷。2年夏には130キロ後半の速球を投げるまでに成長したが、古谷は投げながら夏の大会の怖さを実感する。
「投げる前の緊張がすごかったですね。試合が始まるとあまり感じないのですが、ウォーミングアップの時がすごく緊張しました。秋や春とは比べ物にならないです」
夏が終わり、古谷は小林監督からの勧めで、もう一度体を鍛え直した。地区予選ではベンチ外だったが、県大会ではギリギリでベンチ入り登録。秋は4強入りに貢献する好投を見せた。
高卒プロを意識し、普段の練習から取り組む姿勢を変えた
中央学院戦での古谷 拓郎
「トレーニングを行って少し体重が増え、そこからメンバーに戻ることができて球速も短期間で上がってきました。この期間があったからこそ成長できたかなと思います。夏に比べると球威も少しは増したと思います。しかし、秋は自分の失投で点を取られたり、点を取った次の回に失点したりと、試合を作ることができなかったので悔いが残っていますね。」
準決勝の中央学院戦では大谷拓海に本塁打を打たれ、「まだまだ自分のボールでは厳しいと思いました」と、球速アップしなければならないと実感した古谷は、冬も「筋力アップ」をテーマに臨んだ。そして一冬超えて、小林監督と進路相談を行い、高卒でプロに行きたいことを訴えた。小林監督は、「春頃からプロを意識し取り組みが変わってきたのです。その中で本気で目指すならもっと真剣に取り組まないといけないと話をしましたが、彼の意思は固かったです。」
プロにいく決意を固めた古谷は、小林監督にこう伝えられたという。
「プロのスカウトは、はじめはいいところを見ているけどだんだん悪いところを見てくる。フィールディングや走っている姿を見られていると思ってプレーしないと、リストから削られていく。削られないためには細かいところを意識するようにと言われました。普段からフィールディング練習は行っていましたが、それからは守備練習でも全力で取り組むことを心がけるようにしました」
前編はここまで。後編はドラフトにかかるために、古谷選手が駆け抜けた高校野球最後の1年。そして今後のビジョンを語ってもらいました。後編もお楽しみに!
文=河嶋宗一