Interview

考え方1つで結果は変わる。伊藤裕季也を急成長させた立正大の4年間

2018.11.14

 平成最後の神宮大会。大学の部を制したのは立正大だった。試合を決めたのは4番・伊藤裕季也。今大会は2本塁打4打点の活躍で優勝に貢献した。そんな伊藤の4年間を振り返っていく。

伊藤を変えた坂田監督の出会い

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抱き合う伊藤裕季也と小郷裕哉

 まさにスターというべき一打だった。立正大vs環太平洋大の一戦。3対4の1点ビハインドで打席に立ったのは4番・伊藤裕季也(4年・日大三)。伊藤は一発を狙っていた。

 「この場面で打つのが自分の仕事。小郷(裕哉)が出塁してくれていて、小郷は足がある選手。ストライクを取りに行くと思いました」
 読みはズバリだった。初球のストレートを振り抜くと、打った瞬間、伊藤は「手ごたえはありました」と本塁打を確信した伊藤は右手を突き上げ、大きく喜びを表した。

 そして9回裏、最後の打者を空振り三振に打ち取ると、立正大ナインはマウンド上で歓喜の輪を作った。そして最後、整列に向かう伊藤の目は潤んでいた。
 「今までずっと苦しい日々だったので、それを思い出しました」
 この4年間、伊藤はどんな成長を描いたのだろうか。日大三時代、レギュラーとして出場して活躍するようになったのは3年夏から。立正大へ入学を決めたとき、前評判の高さは同学年のエース・釘宮光希が高かった。今年の6月、日本代表を決める候補合宿で伊藤に話をしたとき、「自分がこんなところに入れるとは全く想像していませんでした」と振り返る。では、何が伊藤の成長をもたらしたのか。

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伊藤裕季也の打席の様子

 「考え方だと思います」と語る伊藤。その考え方という部分を教えたのが坂田精二郎監督だ。シダックス・セガサミーで捕手として活躍した坂田監督。シダックス時代は野村克也監督の下でID野球を学んだ坂田監督から学んだことは多かった。
 「高校時代の自分は漠然と練習をしていたところがあります。大学に入って思ったのは頭を使って練習をしないとうまくならないということ。坂田監督からいろいろなことを教わって、変わりましたし、考え方1つで、結果にも表れるようにもなりました」

 確かに成績を振り返っても、2年春にレギュラーを獲得した伊藤は3年春には打率.343、1本塁打、9打点の成績を残し、二部優勝を経験している。釘宮同様、立正大に欠かせない選手へ成長した。

 そして3年秋、一部昇格すると、「一部で戦っていく中で、プレッシャーもあった」と語るが、打率.268、2本塁打、5打点と結果を残し、主将に就任した。

[page_break:伊藤を救った4年生たちの存在]

伊藤を救った4年生たちの存在

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ホームランを放った瞬間に喜びを爆発させる伊藤裕季也

 主将に就任してからは苦しい日々だった。チームをまとめきれず、どうすればいいか分からないことがあった。そんな苦しむ伊藤を救ったのが4年生たちだった。

 「4年生がいなければ、僕はずっとキャプテンはできていませんですし、本当に感しています」
 決勝戦後の小郷裕哉のヒーローインタビューを聞けば、その存在が分かる。決勝戦、6回裏に伊藤が失策。それが失点につながったが、小郷は「ミスがありましたけど、絶対にカバーしようと思いました。ミスがあってもカバーすればミスではないので」
 結果、小郷が適時打を放って伊藤にチャンスをつなげたのを見ればどれだけ心強いのかが理解できるだろう。

 よって4年生たちのおかげでチームは徐々にまとまり、雰囲気の良いチームになっていった。とにかく立正の選手たちは雰囲気が良い。またスタンドにいる控え部員のユニークすぎる応援も選手たちを後押しする。伊藤は「スタンドにいる仲間も盛り上げてくれるので、本当に心強いです」と感謝の気持ちを表していた。

 また、4年秋には指導者たちの心強いアドバイスもあった。
「指導者からは試合にいるだけで存在感がある。4本のうち1本は試合を決める一本を打てばいいよといわれまして。今まではチームのことを考えていたんですけど、もちろんチームのことも考えながら、自分がやるべき準備もしっかりと行おうと思いました」

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優勝旗を手にする伊藤裕季也

 結果として伊藤は秋季東都リーグの優勝決定戦では先制本塁打。優勝を決め、初のMVPとベストナインを受賞した。
 神宮大会では読みの鋭さを発揮。まず九州共立大戦では7回裏、犠牲フライを打つつもりで打席に入り、フォークを逃さず、決勝本塁打。さらに準決勝の関西国際大戦では右サイドのスライダーに合わせて、2安打を記録。そして決勝ではカウントを取りに行く直球を逃さなかった。

 最後の最後でスラッガーとして凄みが増した。日本一を目指していた伊藤にとって最高の形で締めくくることになった。
 横浜DeNA2位指名を受け、プロの舞台に飛び込む伊藤。まだ伊藤は「今のままでは通用しないということはわかっているので、今後は自分のために練習をして磨いていきたい」と意気込んだ目指すは千葉ロッテの井口資仁監督のような強打の二塁手になること。井口監督の現役時代はまさに走攻守三拍子揃った大型二塁手だった。井口監督に関する本も読んでいる。

 「足は決して速くないですけど、それでも盗塁ができることは坂田監督が教えてくれました。井口監督のような選手を目指していきたいです」

 4年間で確かな成長を遂げた伊藤。
 「考え方1つで変わる」
 その言葉をしっかりと証明した神宮大会の活躍だったといえるだろう。

取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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