目次

[1]高速テンポ投球で打者を幻惑
[2]中学2年から始まった技巧派右腕への道

 11月12日、明治神宮大会準決勝。札幌大谷太田 流星は8回まで無安打。第5回大会の金子隆さん(日大山形)以来のノーヒットノーランがかかっていた。しかし9回裏に安打を打たれ、大記録は途絶えたものの、初出場で決勝進出の原動力となった。全道大会でも4試合で防御率1.04と安定した数字を残して、初優勝に貢献し、欠かせない投手となった太田。そんな太田の投球の神髄、そしてその投球をもたらしたルーツに迫っていく。

高速テンポ投球で打者を幻惑



太田流星(札幌大谷)

 投手には様々な打ち取り方がある。速球で圧倒する投手もいれば、魔球と呼べる変化球で三振を奪う投手もいれば、抜群の制球力を活かして出し入れのうまさで勝負する投手もいる。札幌大谷太田 流星は、テンポの速さとボールの出し入れで勝負する投手だ。

 サイドスローとしてはやや低く、アンダースローとしてはやや腕を離す位置が高い。だが体を沈み込ませた時、左手の手のひらを上向きにして、体を旋回させながら腰を旋回させていく使い方は、アンダースローに分類していいだろう。

 球速は120キロから125キロぐらいと速くない。しかしストレートのスピードとあまり変わらないシュートは手元で沈み、そして115キロぐらいのスライダー、カーブを使いながら出し入れをする。手元でボールが動くので、芯で捉えることは難しい投手だ。

 また特徴的なのはテンポの速さだ。なんと捕手からボールを受け取ってから三秒ー四秒で投球モーションに入る。まさに打者の考える暇を与えない。
太田自身、それを考えている。
「もちろん打者に考える時間を与えたくないというのもありますし、早く投げてベンチに帰りたいんです(笑) また守備の時間を短くして、攻撃の時間を長くしたいんですよね」

太田の思惑は十分にはまった。筑陽学園福岡 大真は太田の投球についてこう評する。
「 まず見たことがないボールの軌道で、ストレート、シュートも打ちにくい。テンポが速くて、全く自分の間合いで打席に立てないですし、狙い球が絞れない。本当に素晴らしい投手でした」

そして4番江原 佑哉は「本当にタイミングが取れない投手でしたね。全く考える時間がありませんでした」と太田攻略に手を焼いた。