注目右腕の魅力は、ずば抜けたアウトプット力! 浅田将汰(有明)【後編】
前編では、浅田将汰の思考についてお伝えしたが、浅田のもう一つの魅力はずば抜けたアウトプット力だと思っている。
九州に現れた本格派右腕・浅田将汰(有明)の思考を読み解く!【前編】
理解して自分の考えをアウトプット出来る才能
インタビューに答える浅田将汰(有明)
インタビュー中も、質問に対して的確な回答が返ってくる。質問の意図をすばやく理解し、自分の言葉で返答しているのである。これをやってのけるのは大人にとっても難しいことだ。しかし、浅田はすでにそれができている。アウトプット出来るということは、ポイントを理解し、自分の意見で返信しているということである。浅田の「理解力」と「アウトプット力」は、すでに高校生離れしている。
この能力は会話だけでなく、プレーでも活きる。プレーの意図を理解して、それに対する自分で導き出したアプローチをアウトプットできるからだ。
浅田は器用すぎる
アウトプット力について、中野賢哉部長のこんな言葉が心に残った。
「浅田は考えることもそうですし、球種もそうなんですけど、器用すぎて、うまくできてしまう。」
「器用なんでかわそうと思えばかわすピッチングをしてしまえるんですね。」
アウトプット力があるからこそ、なんでもそつなく出来てしまう。現在投げている球種も、自信があるストレートを始め、スローボール、スライダー、カーブ、カットボール、チェンジアップを操る。この“何でもそつなく出来る”能力は、浅田の成長の妨げになっているのだろうか?
中野賢哉部長(有明)
この後の中野部長の言葉に答えがある。
「本人も分かっているので心配はしていないんですけど、枠の中でうまく努力しようとかでなく”殻をやぶる”ぐらいなところを行って欲しいなとは思います。」
「自分たちもよく、まっすぐに拘るようにとは言うんですけど。分かっていても打てないボールを投げられるぐらいの選手になって欲しいと期待しています。」
つまり、浅田は器用であり「アウトプット」が出来てしまうが、同時に「理解力」もあるので、高見一茂監督・中野部長が「こじんまりとしないで、殻を破るぐらい大きく成長をしてほしい」と言う思いを理解して、その上で自分が何をするかを考えアウトプット出来るのである。
だからこそ、浅田はストレートに拘る。浅田の中間目標の一つが「佐々木朗希(大船渡)に負けないストレート」なのである。
今回のインタビュー中にも浅田は度々「150キロを超えるための下半身のトレーニング」や「日々の継続した努力」について話してくれた。このことはすべて現在地を理解している浅田が、今アウトプットすべき大事な項目の一つとしてあえて「ストレートに拘る」という、結論に至ったことに結びついている。
中野部長は、「枠の中でうまく努力しようとかでなく殻をやぶるぐらいな ところを行ってほしいなとは思います。」と期待を語っていたが、中野部長の言葉の中に「浅田はその期待も理解して、殻を破ることが出来る選手だ」という信頼が含まれているのを感じた。
[page_break:浅田の成長にフィットした有明高校の環境]浅田の成長にフィットした有明高校の環境
野球部の寮「自彊会館」
有明は、学校の敷地内に球場、寮が完備され移動に時間がかからなく勉強や野球に集中出来る環境が整っている。
野球部の寮の名前は、自彊会館。学校の基本理念「自彊不息(じきょうやまず):絶えず自ら勉(つと)め励む人間の育成」から取られている。
その自彊会館には、個人の課題が張り出されている。中野部長は「チームの目標と個人の目標を明確にして 課題を出して、それを忘れないように寮に張り出していたりします」と語ってくれた。
野球ノートを始め、寮内に張り出される課題など、これらの環境は浅田の目標設定にも良い影響を与えている。有明の環境が浅田の成長にフィットしたと言える。
また、チームの指導方針の「現状に満足しないで、その先を見るようにする」というのも浅田の考えとマッチした。
中野部長は、「甲子園に行くだけじゃなく甲子園で勝つというのが目標です」と話す。同様のマインドは、「プロに入っただけではだめなんで、プロでも活躍できるような投手になりたいなと思います。」と語ってくれた浅田の会話からも感じることが出来る。
チームと選手が同じマインドを持ち、方向性がぶれていないことも浅田の成長を後押ししている。
[page_break:今後の成長を期待せずにはいられない選手]今後の成長を期待せずにはいられない選手
野球ノートを持つ浅田将汰(有明)
浅田の野球ノートについて、中野部長は、
「3年生が抜けてからやっぱり自覚が出てきたと思います。チームのことを書くようになって、それまでは自分がどうだったと自分のことが多かったんですが、チームがこうなれば良いということをかけるようになってきていると感じています」と話してくれた。
今、浅田は個人だけでなく、チーム全体を見られる視点を手に入れようとしている。このことが浅田にどのような化学変化を起こさせるのか、楽しみでならない。
また、「理解力」と「アウトプット力」が高い浅田が今後、更に自分の体を理解して、頭で理解したことを体でその通りに表現できるようになったら、どのような規格外の投手になるのか、想像するだけでワクワクする。
将来、MLBのマウンドで160キロを投げ、大谷翔平と好勝負を繰り広げる怪物投手になっている姿を見てみたい。
取材後記
本格派投手として、注目を集める浅田選手ですが、打者としても注目です!最近は逆方向にも本塁打が出るようになってきたと中野部長が話してくれました。有明高校の野球専用グランドはライトスタンド上部にもネットが張られていますが、そのネットを超えていく打球だったとのことです。投打に注目です!
取材=田中 実