Interview

飛躍の夏、我慢の秋。西純矢と創志学園が来夏に笑うために必要なこと

2018.11.04

 野球選手の成長は我慢がつきもの。つらい経験があってこそ伸びるもの。そういう辛苦に対し、しっかりと向き合ってきた選手が最高の結果をもたらす。[stadium]甲子園[/stadium]で16奪三振、無四球完封と鮮烈デビューを飾った西純矢。だが、この秋の戦いはかなり苦しいものだった。7失点の試合がこの秋だけで3回もあった。中国大会準決勝の広島広陵戦でもエラーが絡み7失点。西、そして創志学園が乗り越えなければならない課題が見られた試合だった。そんな西と中心選手の声を聴きながら、創志学園の課題を考えていきたい。

2018年秋季中国大会準決勝 対広陵戦試合後のインタビューより

下関国際戦の敗戦から取り組んできたこと

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西純矢(創志学園)

 最速150キロのストレートに加え、切れ味鋭い縦横のスライダーを投げ分ける。打力が上がる夏の岡山大会で28回を投げ、34奪三振、4失点の好投。[stadium]甲子園[/stadium]でも無四球完封。何もかもうまくいった夏に見えた。だが、敗れた甲子園2回戦の下関国際戦では9回に崩れ、5失点の逆転負け。この負けから西と創志学園の課題は見え隠れしていたかもしれない。創志学園の野球は一気に畳みかけるときは畳みかけ、守備も投球も穴がない。しかし夏やこの秋、それ以前の試合を見ても一気に崩れやすい。そういう傾向が見える。

 それはチームも、そして西自身もわかっていた。秋のピッチングで象徴的なのはガッツポーズを一切しなくなったということだが、それも含めて今秋は、「自分が思うようにいかない状況でも、粘ってチームの勝利に導くことができるか」ということをテーマとしていた。

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ポジショニングに指示を出す西純矢(創志学園)

 感情の浮き沈みが激しい西がガッツポーズを少なくして、気持ちの波を少なくするための1つの方法だが、隙をなくすために行ってきたことがまだある。試合中、西は選手に対し、ポジショニングの指示を出す。これは敗れた下関国際戦の反省から行っているものである。

 「あの試合も、(打たれたのは)外野の頭を超えたものではなく、外野の前に落ちたものでした。対戦してみて、後ろに抜かれることはないと思う相手には前進守備をさせたり、そうではないときは後ろにさせたりしています。今日は鋭くライナー性の打球が外野の前に飛ぶ傾向にあったのでその指示を出しました」

 また練習中ではノックでもショートを守る練習を繰り返してきた。
「投手は投げるだけではないので、投げたら「9人目の野手」なので、新チームに入ればショートに入って守備練習を繰り返した結果、練習試合では投手に入って、バント処理からフォースアウトにしてきました」と上達を見せた。そして調子が悪ければ変化球を多めにしてしのぐことを繰り返してきた。岡山大会準決勝、3位決定戦では7失点を喫する苦しいピッチングがあったが、中国大会では準決勝まで2試合、14.2回を投げ、16奪三振、自責点3、3四死球と安定したピッチングを見せていた。そんな中で迎えた広島広陵戦。まず先頭打者の四球を悔やんだ。

 「ストレートが良くなく、スピードは出ていても、空振りが奪えるものではなかったです。それでもどう抑えるのかを大事にしていたのですが、初回は先頭打者に四球を与えてしまってよくなかったです」

 その後は抑えて無失点に抑えたものの、先頭打者を出したのは8イニング中、5回。また走者を出したのは7回。その中でも、7回まで1失点。よく抑えた方ではある。
 「今日はストレートの走りが良くなかったですし、広島広陵打線はストレートをしっかりとヒットにできる力があり、狙い球も絞っている雰囲気がありましたので、変化球の割合を増やし、勝負をしていきました。そこはしっかりと粘れたと思います」

[page_break:野球は9人で戦うことを認識し、最後まで遂行できるか]

野球は9人で戦うことを認識し、最後まで遂行できるか

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ガッツポーズする西純矢。広陵戦なので自然に気持ちが入ったと振り返る

 縦横のスライダーを増やし、広島広陵打線を抑えるプランを立てた。変化球についても捕手・横関 隼は「高めに浮いていたこともあり、あまりよくはなかったです。スライダーがもっと良いときは消える感覚になるので」と、変化球の精度も満足いくものではなかったが、それでも7回まで1失点に抑え、これまでの取り組みがしっかりと現れた7イニングだったといえる。また、5回裏には150キロを2球計測。それでも本人は「意識はしていなかった」と、自己最速のスピードにも手ごたえを感じていなかった。

 そして8回裏、先頭打者に安打を許すと、その後、西自身のバント処理ミス、さらに内野手のバント処理ミスをきっかけに大量失点。スクイズ、エラー、長打が絡み、一挙6失点とコールド負けで西の秋は終わった。

 「8回は少し気持ちが切れていたと思います。自分の甘さが出てしまい、このような結果になって申し訳ないです」とうつむきながら試合を振り返る西。バント処理のミスが傷口で広げてしまうのはあり得ること。その後、ミスが2つ出てしまったのは痛かった。

 西のピッチングを見ると、テーマにしていたことは実践していた。だが西のピッチングをさらに引き立たせるには、8人の野手の存在がとても重要だ。捕手がリード面で持ち味を引き出し野手がここぞという場面でしっかりと守り、打って点を取って精神的に楽にさせて、ピッチングに勢いをもたらせる。そうやって勝ちを目指していくものだが、何人もほころびが出れば、ゲームは崩れていく。それが今回の広島広陵戦に現れてしまった。

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西純矢(創志学園)

 もちろん創志学園は西頼みのチームにしないことをテーマに、打撃・守備強化を行ってきた。中国大会準決勝はいわばその成果が試される試合だった。終盤に崩れてしまったことは西、チームをふくめて、しっかりと捉えなければならない課題である。リードする横関も、主将の川畑透人も8回を悔やむ。

 「もう少し自分が西をコントロールできていれば…。本当に申し訳ない」(横関)
 「全然打てなくて、まだ西に頼っているところが本当に出た試合でした。このままではいけない」(川畑)
 西は夏へ向けて切り替えていた。
 「選抜が厳しい状況になったのは、自分の責任です。夏へ向けて、この冬はもう一度、体づくりをしていきたいですし、ピッチングのすべてをレベルアップさせたい」

 同じような負けは二度としない。

 試合に出る9人がそれぞれの課題と役割を理解し、それに向けて、真剣に冬に取り組むこと。来年、笑える夏にするには、まずそれを遂行することが大前提となる。ぜひ来年は変貌した創志学園ナインを心待ちにしたい。

文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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