大阪桐蔭撃破のキーマン・東妻純平(智辯和歌山)細やかな準備が勝利を呼ぶ !
10月28日、智辯和歌山は近畿大会準々決勝で大阪桐蔭に5対2で勝利し、ベスト4進出。智辯和歌山は大阪桐蔭に公式戦初勝利となった。今回は大阪桐蔭の撃破のキーマンに迫っていく。それが東妻純平(智辯和歌山)だ。高校通算17本塁打、スローイングタイム1.8秒~1.9秒台のコンスタントにたたき出す強肩を備え、ドラフト候補として注目される東妻純平に、大阪桐蔭戦を振り返ってもらった。
投手陣と呼吸ぴったり 大阪桐蔭撃破へ
捕手・東妻純平
冷静だった。これが勝てる捕手たる所以なのか。
捕手・東妻純平は大阪桐蔭に勝利を果たしたが、特別な喜びというものはない。
「特に大阪桐蔭だからといって特別に意識することはなかったです。近畿大会準々決勝は大事な試合ですので、相手がどこであっても絶対に勝つこと。そのことを意識していました」
大阪桐蔭を意識しすぎず、目の前の準々決勝に勝つことを注視してきた。相手に応じての対策をしようと考えていたのだ。
「結構ベースの中で構えていたんですけど、(池田)泰騎がボールゾーンに構えてくれた方が投げやすいといってくれて、それで構えるようになったんですが、それでストライクがしっかりと投げられるようになりました」
また8回2失点の好投を見せた池田泰騎は「今まで甘めに構えていただいたんですけど、コーナーぎりぎりに構えてもらうことで投げやすくなりました」と、ストライクを取るためにバッテリーで工夫したことが分かる。
また池田泰騎自身も投げる意識を変えた。「今まで急いで投げようとする意識があったんです。それで体が突っ込んでしまって。だけど今日はゆっくりと落ち着いて投げることを意識しました。」
それにより、速球、変化球の制球力が増した。特に良かったのはスライダー。大阪桐蔭の打者は直球が強いと感じていた。そのためには変化球でどうストライクを取るのかがカギと考えていたが、スライダーでストライクが取れたことでリードがしやすくなった。
「本当にストレートのコントロールが良かったですし、変化球も低めに集めることができたので、丁寧に全部投げてくれました」と後輩の好投を称えた。
また、試合途中もたびたびピンチを迎えることはあった。それでも東妻は「一歩引いて周りを見る余裕を心掛けた」と扇の要として、冷静な判断力が失わないように努めた結果が大阪桐蔭打線を抑えたことにつながった。
「2対1」で勝負することがバッテリーのあるべき姿
捕手・東妻純平
秋の近畿大会で大阪桐蔭に敗れ、選抜・近畿大会決勝と3連敗だった。当時コーチだった中谷仁監督から厳しくリード面の指導を受けてきた東妻。そこで指摘されてきたことは「準備不足」だった。大阪桐蔭のような強力チームを抑えるために、答えとして出てきたことは投手との考えをしっかりと共通させることだった。
「配球の意図を試合前に共通させることができたと思います」
中谷監督は相手打者を抑えるためにバッテリーに伝えていることは、投手と捕手と合わせて「2対1」で勝負すること。お互いの意志疎通が取れて、2対1となるのだ。東妻は「今日はそれが実践できたと思います」と語った。
また、普段から厳しく指導する中谷監督も東妻のリードを称えた。
「冴えているといいますか、初回自分のミスで失点した形でしたし、どういう心理状態になるのかなと思っていましたが、彼は怯むことなく、胸元にボールを要求していましたし、良い配球をしていました」
これで去年に続いてベスト4入り。東妻は正捕手ではあるが、4番を任されている。新チーム直後から本塁打を量産。本人曰く本塁打を打つ打ち方、感覚を覚え、高校通算17本塁打まで伸ばしてきた。それでも勝つ捕手に徹するつもりだ。
「もちろん4番を任されているので、打撃でも貢献したい。だけど、みんなが打ってくれているので僕は捕手に徹して投手をサポートしたいと思います」
強力打線・智辯和歌山。上位下位まで切れ目ない打線は伝統通り。だが投手陣に絶対的なエースはいない。それでも勝てるのは、常に冷静沈着なリードを心掛ける東妻純平がいるから。
どんな相手に対しても全力で準備し、勝利をもたらす。その積み重ねが名捕手へつながっていくのだ。
文=河嶋 宗一