Interview

若獅子賞受賞し、来季のドラフトで注目の太田龍(JR東日本)の来季の目標とは

2018.10.25

 今年、高卒2年目の社会人選手で、プロ解禁となる来季のドラフトでは注目選手の一人となることが予想されている太田 龍投手(JR東日本)。今夏の都市対抗野球大会では長身から投げ下ろすストレートを武器に、活躍した若手選手に送られる若獅子賞(新人賞)を受賞。大きく飛躍を遂げ、今後の伸びしろも感じさせる太田投手にこれまでの道のりと来季への目標をうかがった。

来季のドラフトで注目の太田龍の高校時代

若獅子賞受賞し、来季のドラフトで注目の太田龍(JR東日本)の来季の目標とは | 高校野球ドットコム
インタビューの答える太田龍(JR東日本)

 小学校の頃はピッチャーとキャッチャー。中学時代は内野手で主にプレーしていたという太田投手。高校は30年以上も甲子園から遠ざかっているれいめい高(鹿児島)に進学した。
 「鹿児島の強豪校といえば鹿児島実高と樟南高ですが、自分は強豪校でプレーするよりも、その強豪校を倒したいという気持ちが強かったのでれいめい高に入りました」。

 入部当初は投手と外野手を兼任。だが、「投手をやるのが一番、楽しいですね。プレッシャーもありますが、ピッチャーが投げなければ試合が始まらないですから、そうやって自分で試合を進めていけるところにやり甲斐を感じています」と話す。

 そして、太田投手といえば190cm、93kgという立派な体格が目を引くところだ。
 「小学校6年生の時は160cmだったんですが、中学を卒業する頃には185cmになり、高校で190cmに到達しました。ただ、大きかったからか、当時は自分のイメージ通りに体を動かすことができませんでした。それに体ができておらず、固かったのでケガをすることも多かったです」。

 その言葉通り、1年の秋季大会で腰椎分離症を発症。「試合中から腰が痛くて投げ切った後は歩けないほどになっていました。それで、病院へ行ったら腰椎分離症と診断されて2ヶ月くらい安静にしていなければなりませんでした」。

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キャッチボールをする太田龍

 そこで、復帰後は故障しにくい体作りに励んだ。「まずは肩やヒジのインナーマッスルを鍛えました。そして、風呂上がりに毎日、ストレッチをするようにしました。これは今でも続けているのですが、特に肩の可動域が広がるようにしていますし、尻周りも固くならないように筋肉をほぐしてリフレッシュさせています」。

 当然、トレーニングも怠らなかった。「グラウンドのすぐ脇に50~60mくらいの坂道があるのですが、そこでヘロヘロになるまでダッシュをしていました。かなりキツかったのですが、いつの間にかルーティンになっていて、逆に走らないと気持ち悪い感じがしたので毎日やっていました」

 また、ピッチングのなかで心掛けていたことがある。「夏の鹿児島大会で優勝するには6試合を投げなければいけないので、全試合で完投するために疲労を抑えなければいけない。だから、1試合のなかで緩急を付けてスタミナを温存しながら投げ、勝負どころで力を入れて投げるようにしていました」

[page_break:JR東日本へ入社するきっかけとサイ・ヤング賞直伝のテクニック]

JR東日本へ入社するきっかけとサイ・ヤング賞直伝のテクニック

若獅子賞受賞し、来季のドラフトで注目の太田龍(JR東日本)の来季の目標とは | 高校野球ドットコム
れいめい高校時代の太田龍

 度重なる故障のため、なかなか背番号1はつけられなかった太田投手だが、3年春のNHK旗で149キロをマーク。最後の夏となった鹿児島大会でも初戦の尚志館高戦で同じく149キロを記録して1失点の完投勝利。続く鹿児島吹上高戦も8回を零封と素晴らしい投球を見せた。

 しかし、好事魔多し。大会中にヒジ痛に見舞われてしまうと、準々決勝の志布志高戦では先発を外れることとなり、マウンドに上がったのは1点ビハインドの9回表、無死一、二塁の場面だった。ここは2三振を奪うなど、意地の投球でピンチを切り抜けたが、チームはそのまま敗戦。甲子園出場の夢は叶わず、進路についても「プロか社会人を考えていましたが、最後の夏にケガをしてしまったのでプロは諦め、志望届も提出せずに社会人野球へ進むことにしました」と、JR東日本へ入社することとなった。

 高校2年のオフシーズンにJR東日本で練習する機会があったという太田投手。
 「ピッチングコーチの方からいろいろと教えていただいて、当時は投げる時にテークバックが大きくなりすぎるところがあったので小さくするように指導されました。
 あと、投げ終わった後に体が一塁側へ流れてしまうことが多かったので『一塁側に倒れるということは重心が外側にいっているのだから、足の内側を意識し、投げ終わったらきちんと左足一本で立ってから右足を着くように』と言われました。すると、実際に良いフォームで投げられるようになり、『自分に合っているな』と感じたので、社会人へ行くならJR東日本でお世話になりたいと思っていました」

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ランメニューをこなす太田龍(前)

 こうして社会人野球の世界に飛び込んだ太田投手だが、1年目は故障もあって、ひたすら走り込みとウエイトトレーニングで体作り。そして、2年目の今季は反射機能・神経筋の向上や筋肉の柔軟性を養う初動負荷トレーニングを取り入れたことで「体が軽くなり、全身を思い通りに動かせるようになりました」と持て余し気味だったフィジカルの能力を引き出すことに成功。

 メンタル面でも今年2月のアメリカ・フロリダキャンプで、サイ・ヤング賞を史上最年少で受賞したドワイト・グッデンから教えを受けた。「常に言われていたのが『アタック(攻めろ)』という言葉でした。そして、『ピッチャーは自分と勝負するのではなく、バッターと勝負するんだ』という意識を徹底されました」。

 技術面では「ストレートは『キャッチャーのミットに突き刺すようなイメージで投げろ』と言われました。そして、カーブは前を大きくして、腕を思い切り振るように指導されたのですが、握りも以前より浅くして回転が多く掛かるようになりました。自分の場合、相手打者から真っすぐにヤマを張られることが多いので、有効なボールになっています」

[page_break:プロを意識するよりもJR東日本でエースになりたい]

プロを意識するよりもJR東日本でエースになりたい

若獅子賞受賞し、来季のドラフトで注目の太田龍(JR東日本)の来季の目標とは | 高校野球ドットコム
プロになる前に、チームのエースを目指す!

 こうして今季は春先から徐々に調子を上げていった太田投手。都市対抗の東京都二次予選では最後の本戦出場枠を懸けた明治安田生命との第4代表決定戦に登板。2点リードの7回裏からリリーフのマウンドに立つと相手打線をノーヒットに抑える好投。9回裏は3つの四死球で二死満塁のピンチを招いたものの、最後の打者はアウトコースのストレートで3球三振に仕留めた。

 「自分でピンチを作ってしまって『本当にマズい』と思っていたのですが、そこで『打たれたら、どうしよう』ではなく、逆に『やるしかない』と気持ちを切り替えて投げられたのが良かったのだと思います」。

 また、この試合では自己最速となる153キロをマーク。「ストレートを投げる時は力んでしまうとコントロールが乱れてしまうので、力を抜いてリリースの時にボールを弾くような感覚で投げています」

 7月の都市対抗本戦では3試合に登板し、通算で11回1/3を投げて無失点。「大会の序盤はなかなかストライクが入らなかったのですが、『自分のできることをやろう』と思って投げていました。準決勝の大阪ガス戦ではやっと都市対抗の舞台に慣れてきたこともあって内容も良かったですし、実力を出し切ることができたと思います」。

 また、力強いストレートに得意のスライダー、チェンジアップのほか、カーブ、スプリット、ツーシームを織り交ぜた投球で11三振を奪い、「今季はチェンジアップとスプリットという球速帯が違う2種類の落ちるボールが使えるようになったのも大きかった」と振り返った。

 来季はドラフト解禁となる大事なシーズンとなるが、プロを意識するよりも先に「JR東日本でエースになりたい」と話す太田投手。
 「どんな状況でもチームを勝たせるのがエース。そのためには心の部分も成長させ、見た目のたたずまいから『エースだな』と周囲から思ってもらえるようなピッチャーを目指して頑張ります。そして、投球面ではストレートとカットボールの精度を高めていきたいです。ストレートは右打者のアウトコース、左打者のインコースへのコントロールを極めたいですし、カットボールは最近になって投げ始めたのですが、カウントが取れたり内野ゴロに打ち取れたりするボールだと思うので、この冬でしっかり投げ込んでモノにしたいです」

 雌伏の時を経て、まさに大器の片鱗を見せ始めている太田投手。来季はさらに成長した姿を見せてくれることだろう。

文=大平明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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