最速155キロ以上の「強さ」でNPBの扉へ 鎌田 光津希(徳島インディゴソックス・投手)
シーズン前から「四国アイランドリーグplus発・NPBドラフト指名最右翼候補」の称号を背負い、ワンシーズンを闘ってきた徳島インディゴソックス・鎌田 光津希。特に後期シーズンは入団時の最速149キロから155キロまで伸ばした球速以上に、様々な部分での「強さ」が目を引いた。では、シーズン前のインタビューと比べ、彼はどこが強くなったのか?いよいよ近づいたドラフト会議を前に、その真理を聴く。
前期の反省から「自分の強み」を再認識
インタビューに答える鎌田光津希(徳島インディゴソックス)
――2018年、鎌田投手の四国アイランドリーグplusリーグ成績は17試合登板で4勝3敗1セーブ。その内訳は76回を投げ被安打72・奪三振79・与四死球28・防御率2.49でした。学生時代ではなかった長いシーズンを闘ってみて、鎌田投手の感想はどうでしたか?
鎌田 光津希投手(以下、鎌田):僕にとっては長いようで短いシーズンでした。前期は休んでいた時期もあったので長く感じでしたが、後期は気付いたら始まって終わっていた感じ。いい雰囲気で野球をすることができました。
シーズン前にあげた課題のクリア度は100点中80点。僕は食事もほとんど自炊で栄養バランスにも気を遣い、サイズも今は180センチ91キロで筋量も上がり、しかもシーズンはほぼ先発ローテーションで回っていたので試合をこなすこと自体は苦ではなかったです。
それでも前期はコースを意識し過ぎて自分の長所が出せなかったですが、後期は最初から最後まで「強いボール」を意識して投げることができました。
――「強いボール」これが鎌田投手の真骨頂だと思います。ここに至るまで印象に残る試合はありますか?
鎌田:僕が公式戦先発初登板した4月4日、[stadium]JAアグリあなんスタジアム[/stadium]での福岡ソフトバンクホークス3軍戦(6回3分の0・107球9安打6奪三振3四死球7失点3自責点で負け投手)が一番です。この試合では相手がNPBということでコースに丁寧に投げようとして構えた形になってしまい、その結果制球も乱れ、自分のいいところが出せなかったんです。
でも、自分で最初にそこに気付けたことが、その後の修正につながった。今考えればいい試合だったと思います。
鎌田光津希(徳島インディゴソックス)
――「修正」という部分で具体的に施した点はありますか?
鎌田:より変化球とストレートとの球速差を付けるようにしました。それまではカットボールやフォークといったストレートと球速差の少ない変化球が中心だったのを、カーブ、ナックルカーブ中心に変えたんです。
――しかもナックルカーブ自体も当初は130キロを超えるものでしたが、そこから10キロ落としました。
鎌田:そうなんです。最初は力任せに投げていたものを、ブルペンで引っ掛け方を中指から人差し指に変えるなどして調整していきました。それによって回転数も増えた感触があります。
ケガ明け、前期も終わりの巨人3軍戦で3回を投げた時にこの改良版ナックルカーブを試して「これはいける」という感触を得たことが後期につながったと思います。
――1年間のトレーニングも大きな支えになったと思います。
鎌田:前期と後期の中断期間を含めて、いままでできなかった下半身・上半身のウエイトトレーニングなどをできたし、バランストレーニングも積めました。
そしてブルペンでいろいろと試せたことが後期、状況によって2種類を使い分けるようになった決め球として使えるようになったフォーク、カットボール、2種類あるスライダーを含め、全体的なボールのキレと結果につながったと思います。
]
後期最終戦の「悔い」と石井 貴監督から学んだ「真の強さ」
シーズン最終戦の鎌田光津希
――後期のベストゲームはどの試合ですか。
鎌田:先発ではないんですが、[stadium]タマホーム筑後スタジアム[/stadium]での福岡ソフトバンクホークス3軍戦(8月21日・22日)。2試合続けて9回裏に登板したんですが、ボールのスピード・キレ共によかったです。
――7・8月度は6試合登板で2勝2敗1セーブ。30回3分の1を投げて26奪三振・ 防御率0,89で「月刊グラゼニMVP」を受賞した鎌田投手。チームも前期最下位から一転、愛媛マンダリンパイレーツとの優勝争いを演じました。
鎌田:「負けられない」という気持ちは強くありました。その中で勝ててはいましたが、最後の方は「負けちゃいけない」というメンタルにチームがなってしまいました。
――引き分け以上で優勝だった最終戦。新居浜市営球場での愛媛マンダリンパイレーツとの直接対決。先発マウンドは鎌田投手でしたが……。6回99球8安打6奪三振3四死球3失点。チームも逆転負けで優勝をさらわれてしまいました。
鎌田:勝ち続けていた愛媛マンダリンパイレーツの雰囲気もよかったし、その中で中軸は特に警戒していたのですが、ある程度中軸を抑えても7番(新井 勝也)に3安打されてしまったり……あれは痛かったです。
ここで改めて「次はこういった経験を活かして相手を分析して投げよう」と感じました。このリーグに来て「失敗を活かして次につなげる」能力はすごく高まったと思います。
シーズン最終戦の鎌田光津希
――そこには自分だけでなく、周りの助けも欠かせなかった。特に西武ライオンズで様々なマウンド経験を積んできた石井 貴監督の影響は大きかったと思います。
鎌田:いつも言われたのは「もっと自分をアピールしろ」。自分であれば「ストレートが速いのであれば、そこにもっと磨きをかけろ」。試合で強いボールを投げることで、その大事さを気付かされました。
特に印象に残っているのは先ほど話した4月の福岡ソフトバンクホークス3軍戦の後に言われた「お前はコースの四隅に投げるのではなく、真ん中にストレートを投げろ。それでだけでいい」。
この言葉が6月10日・臺中市台灣人壽成棒隊戦(3回ノーゲーム)での「155キロ」につながりましたし、キャッチボールから70%の力で70%のゴールを投げることに1球1球こだわり、最終的に試合のリリースで100%を込める「強いボール」の源になっています。
――6月末の関東遠征やフェニックスリーグなどではNPB二軍選手との対戦も経験しました。
鎌田:関東遠征・千葉ロッテマリーンズ相手にはストレートがいくら速くてもコースが甘いと打たれる。そこでフォーク・スライダーを使う時にキレが必要なことを感じました。
フェニックスリーグでは常に腕を振る「強いボール」を投げることを意識してきました。
「伊藤 翔」を超えるために
鎌田光津希
――さて、いよいよ最大の目標にしていたNPB入りを決める舞台「2018年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」も間近です。鎌田投手としてはNPBに進んだ時に描いているものはありますか?
鎌田:まずはストレートで真ん中でも空振りを取れる投手になること。そこに変化球が加わる形にしたい。常時150キロ台を出す領域まで行って、ストレートの「強さ」にこだわりたいです。
――ということは四国アイランドリーグplus、徳島インディゴソックス、そしてNPBへの想いも半年前とは異なっているはずです。
鎌田:この半年で急成長できた場所が四国アイランドリーグplusであり、徳島インディゴソックス。他の場所だったらここまでにはなっていなかったかもしれないですし、同じ志を持って真剣にする選手たちと一緒にできてやりやすかった。「竹内 裕太」というライバルも僕に刺激を与えてくれました。本当にここに来てよかったです。
そしてNPBは目標であると同時に入ったら「スタートライン」になる場所。だから、これからも常に努力をしていきたいです。近所・高校の3年後輩である9891(徳島インディゴソックス~埼玉西武ライオンズ)のルーキーイヤー3勝は素直にすごいと思いますけど、いずれは越えていかなくてはいけない目標です。
背番号「14」のみならず、徳島で済む部屋も実は9891と同じ。ただ、彼ははっきりと言った。「9891はいずれ越えていかなくてはいけない目標」。そして2018年10月25日はその志を現実にするスタートライン。鎌田 光津希はこの四国・徳島の地で得た「強さ」の幹をさらに鋼のように太く・強くするために、これからも精進を続けていく。
文=寺下 友徳
注目記事
・プロ野球2018ドラフト特設サイト