Interview

プロで生き残るために「吾道一貫」を胸に刻む 渡邉勇太朗(浦和学院)【後編】 

2018.10.19

 後編では甲子園や侍ジャパンの経験や学んだことを語っていただき、そしてプロへ向けて意気込みを述べてもらった。

甲子園から自分のピッチングができた

プロで生き残るために「吾道一貫」を胸に刻む 渡邉勇太朗(浦和学院)【後編】  | 高校野球ドットコム
千葉黎明戦の渡邉勇太朗

 充実のオフになったが、春先に肩を痛め出遅れ。県大会はベンチ外。それでもチームは優勝し、関東大会で実戦復帰。千葉黎明戦では、球数制限がある中で先発。5回一死まで投げて2失点の力投。最速も142キロを計測したが、渡邉自身、全然ダメだったと振り返る。

 その後、渡邉は夏を戦い抜く体力づくりを一から始めて、ケガの再発をさせないため、最大100球の投げこみを実施しながら、調整を続けた。しかし夏に入ってもなかなか復調ができなかった。

 「全然ダメでしたね。夏の県大会も全然合わせられなくて、リリースのタイミングが合わず、自分のイメージ通りに投げることができませんでした。結果的には抑えた試合もありましたけど、あまり記憶にない大会です」

 夏までは自分のイメージ通りに投げる練習を行った。

 「夏の大会前にリリースのタイミングとかを崩していて、あまり良くないまま入って、夏の南埼玉大会でも直せずに終わってしまったので、リリースを意識した練習をやってから甲子園入りしました。でも甲子園に行っても最初はダメだったんです」

プロで生き残るために「吾道一貫」を胸に刻む 渡邉勇太朗(浦和学院)【後編】  | 高校野球ドットコム
渡邉勇太朗

 だが渡邉にとって幸運だったのは初戦が8月12日で、2回戦からの登場だったということ。

 「自分としてはけっこう助かりましたし、チームとしてもすごく良かったと思います」

 初戦の仙台育英戦では、ようやく本来のピッチング。6回無失点。さらに自己最速の149キロを計測。変化球も高精度で、前評判通りのピッチングを示してくれた。

 「南埼玉大会では“甲子園に出なきゃいけない”というプレッシャーを感じたんですが、もう甲子園に出たので、あとは楽しむだけだと思って、思いきりいった結果があのピッチングだったと思います。
 初めての甲子園のマウンドはすごく楽しかったです」

 また3回戦の二松学舎大附戦でも、5安打10奪三振の完封勝利。この試合で光ったのは、ツーシームだ。140キロ前後のスピードで打者の手元で急激に曲がっていく。これは甲子園で使い始めたものだ。

 「夏の大会前に覚えたんですが、南埼玉大会は調子を崩して真っ直ぐもちゃんと投げられていなくて、ツーシームを使える状況じゃなかったので、埼玉大会では使わなかったです。甲子園から使いだして、すごく良かったです。僕自身、変化球は器用に投げられると思っていて、ツーシームは1日で覚えました」

[page_break想像以上だった大阪桐蔭打線 ]

想像以上だった大阪桐蔭打線 

プロで生き残るために「吾道一貫」を胸に刻む 渡邉勇太朗(浦和学院)【後編】  | 高校野球ドットコム
渡邉勇太朗

 甲子園で好投を続けていた渡邉だったが、準々決勝の大阪桐蔭戦では、6.1回を投げて自責点5と敗戦した。大阪桐蔭はこれまでにはない強さを感じたという。ここも一問一答で聞いてみよう。

―― まず大阪桐蔭打線の印象はいかがでしたか? 

渡邉勇太朗(以下、渡邉):甲子園での前の戦いぶりを観て、大阪桐蔭はあまり調子良さそうな感じがしてなかったので、自分の今までの投球ができればいけるかなと思ったんですが、自分たちとの試合から調子が上がったというか。今までと違った感じがしました。

―― 2回の根尾君のホームランについてはいかがでしょうか。 

渡邉:僕が投げた球は甘かったんですけど、あそこ(左中間)に入れられるとは思わなかったです。

―― 藤原君にはインコースをずっと攻めていましたね。

渡邉:もう、張られてましたね、あれは。「張ってた」と本人も言ってましたし。張ってたとしても、自分の、見逃したらボールかストライクか分からないようなギリギリのコースを一発で仕留めてホームランにしたので、やはり凄いなとは思います。あのコースをホームランにされたのは初めてです。

―― 大阪桐蔭打線はこれまでと何が違うのでしょう? 

渡邉:コンパクトなスイングでも飛ばせるというところではないでしょうか。
 これまでのチームは長打力があって大きいのを狙う選手がいても、体が開いてドアスイングをするイメージがあるので、かわせば抑えられますので、自分の中では得意でした。ただ大阪桐蔭はコンパクトで、甘い球を仕留めてくるので。やはり違いますね。

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甲子園での渡邉勇太朗 ※写真=共同通信

―― 甲子園で3試合投げてみての感想を教えてください。

渡邉:一言で言うと「楽しかった」です。負けた瞬間は悔しかったですけど、すぐに吹っ切れて次に頑張ろうと思えましたし、すごく自分を成長させてくれた場所だなと思います、甲子園というのは。
 甲子園に出てなかったら絶対にジャパンにも入れてなかったと思いますし、これだけプロの球団のスカウトからも目をつけていただいているということはここまで無かったですし。やはり甲子園というのは、自分を成長させてくれました。

―― そういう意味でも、甲子園は想像以上の力を出してくれたと感じていますか?

渡邉:そうですね。最後の夏の甲子園で投げたボールは、高校3年間の中でも一番良かったと思います。

[page_breakジャパンの経験は自分の足りないところを気づかせてくれた]

ジャパンの経験は自分の足りないところを気づかせてくれた

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U18代表での渡邉勇太朗

 甲子園後、侍ジャパンU-18代表に選ばれた渡邉。渡邉は貴重な体験だったと振り返る。

 「レベルが高い選手と野球ができるというのは、すごく貴重な体験ですし、全国にたくさんいる球児の中で、ほかの8人の投手は僕にとって一番のライバルだと思います」

 ピッチングを振り返ると、1試合の登板に終わった。そこで感じたのは国際大会とナイターで投げる難しさだ。

 「ジャパンの時はあまり照準を合わせられなかったです。慣れないナイターで自分の体とメンタルをどう合わせるのか。その難しさを実感しました。国際試合はこれまでの大会と違い、テンポも違います。日本の野球文化と全然違うので、そういうのにけっこう苦労しました。ただプロ野球ではあのリズムで試合が進むと思うので、すごくいい経験にはなったと思います」

 そして国体終了後にプロ志望届を提出した。今年の甲子園の快投が提出のきっかけとなった。今、一番の課題だと感じているのは体の強さだ。

 「これが一番ですね。投球術はもちろんですけど、まずプロに行って身体を作って、投げながら打たれながらしっかり覚えていくというのが、僕には必要だと思います」

 体の強さがまだ足りないと感じたのは、大学代表と試合を行い、大学代表の投手を間近で見たことが影響している。

 「大学のジャパンというだけあって、プロの一歩手前の実力を持った人たちばかりでしたので、その人たちを間近で見て試合ができたというのは、すごく大きいことだと思います。
 今の僕は身体の厚み、投球術と、すべてにおいて高校生クラス。今のままでは全然通用しないので、プロに行って一から叩き直そうと思っています」

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先発ローテーションでリーグ優勝を目指す!

 将来は先発ローテーションに入ってリーグ優勝に導きたい思いがある。

 そして渡邉はこれからの野球人生で大事にしたい言葉がある。それは浦和学院の校訓『吾道一貫』だ。

 「『吾が道一つをもってそれを貫く』という意味なんです。簡単に言うと自分の道を貫くという意味なのですが、聞き入れることも大事なんですが、いろんな人からいろんなことを教わる中で、自分に必要なことを自分で判断して実践するということが大事だと思います。

 自分に合わないことも、教えてくれることはすごくありがたいことなんですが、すべて実践するのではなくて、自分でいいと思ったことを入れて実践してみて、あまり合わないなと思うことは心の片隅に置いて、その置いておいたものが実際に使えることもあるので、全部捨てるわけではなく、自分で合う合わないを判断してやるというのは、すごく大事だと思います」

  この言葉は、渡邉が厳しいプロ野球で長く生き残るための道標となるはずだ。

文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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