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第786回 挫折と学習繰り返し「プロで長くできる」右のスリークォーターへ 市川 悠太(明徳義塾)2018年10月22日

【目次】
[1]センバツの失敗を糧にして覚えた「シュート」
[2]「高知商戦」と「侍ジャパン」で学んだこと
[3]明徳義塾で学んだ「人間性」をプロの世界で活かす
2017年秋、王者・大阪桐蔭がシーズンで唯一取れなかった「明治神宮大会」の優勝投手に輝いた明徳義塾の絶対的エース・市川 悠太。2018年はセンバツ3回戦でサヨナラアーチを浴び、夏の高知大会決勝戦で9年連続甲子園出場を高知商に阻まれるなど挫折が多かった半面、7月の最速149キロ到達、初の侍ジャパン選出と収穫も多かった日々を過ごした。
では、プロ志望届を提出しドラフトを目前に控える彼は今、どんなことを考えて夢の世界に進もうとしているのか?「侍ジャパンU-18代表」の秘話も含め、市川 悠太の2018年と未来への展望を聴いた。
センバツの失敗を糧にして覚えた「シュート」

神宮大会時の市川悠太(明徳義塾)
――昨年末にお話を伺った時から半年以上が経過しました。
その際は甲子園春夏連覇を目指し、高い意気込みを語っていましたが、今すべての公式戦を終えてみての収穫と反省はどうでしょうか?まずはセンバツからいきましょう。
※昨年末行ったインタビュー:前編中編後編
市川 悠太投手(以下、市川):センバツの前にはシンカーとスローカーブを練習してきました。練習試合までではうまくいっていましたが、センバツでは使えるボールにならなかったです。数球は投げましたけど。スプリットも1年生の時はよく投げていたんですが、スライダーの球速とキレが昨秋以降増したので、頼りすぎてしまった部分があります。
加えて昨秋はアウトコース・インコースに悪い中でもストレートを投げ切れたことが明治神宮大会優勝につながりました。
けど、センバツの初戦・中央学院(千葉)は僕が調子が悪くない中でもうまく対応してきました。谷合 悠斗の逆転サヨナラホームランはタイミングが合っていたので「これは出るかもな」と思っていましたけど。
逆に日本航空石川(石川)との3回戦は前半にスライダーが全く曲がらず、制球力も苦労していたころを調節していたのに8回まで3安打無失点。自分では「どうしてこんなに打たれないんだろう」という違和感がありました。
――その不安は最終回、的中してしまいます。
市川:9回表にウチがサインミスで点が取れず、9回裏先頭・右打者井川 隼吾選手の初球に、練習試合だったらスライダーを投げるところでストレートを選択して安打を打たれた。ここから歯車が狂っていきました。同じ右打者の原田 竜聖くんに打たれた逆転サヨナラ3ランも、初球スプリットが落ちないところを捉えられたんですが、それまでの打席でインコースを見せていたらあんなに踏み込まれることもなかったんです。打たれた瞬間に「やられた」と思いました。
――このセンバツに敗れたショックは大きかったと思います。みんなが「勝たなければいけない」と思っていただけに。
市川:そうですね。組み合わせも厳しかったですけど。試合後はみんな落ち込んでいました。
――そこから夏に向かう上で市川投手が進化させたものはありますか。
市川:シンカーは相手打者にとってはストレートのタイミングになっても半速球になるので、最終的にはスプリットとシュートを多く使うようになりました。シュートは5月の県総体後、ブルペンで(馬淵 史郎)監督さんから「お前、シュートは投げられないのか?」と言われて、「投げたことがないです」と答えたら教えてもらって、覚えたんです。縫い目に人差し指と中指をかけると真ん中低めを狙うとシュートして、高めを狙うとナチュラルに沈む。これは僕がサイド気味のスリークォーターだから出来る軌道だと思います。
そして相手は僕のストレートが速いのを解っているから、右打者からは詰まって内野ゴロが取れるし、シュートがあるのを見せておけばスライダーも思い切って投げられる。自信のあるボールになりました。

- 市川 悠太(いちかわ・ゆうた)
- ポジション:投手
- 身長:184センチ75キロ
- タイプ:右投右打
- 明徳義塾