Interview

祖父譲りのプレッシャーの強さ!渡辺佳明(明治大)は厳しい環境でこそ輝く

2018.10.18

 今秋の東京六大学野球リーグで打率トップの.419(第6週終了時点)をマークしている明大の渡辺 佳明選手。渡辺選手といえば、横浜高校を春夏通算5度の全国優勝に導いた名将・渡辺 元智氏の孫としても知られ、自身も同校で3年間を過ごしているが、その高校時代から現在までの成長の軌跡を技術面と共に語っていただいた。

祖父と一緒に甲子園と思い名門横浜へ

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インタビューに笑顔で答える渡辺佳明

 幼い頃から寮へ遊びに行くなど、祖父・元智氏が監督を務める横浜野球部に深い縁があった渡辺選手。野球を始めたのも自然な流れで、小2から地元の野球チームに入団。ピッチャーや内野手としてプレーしていた。ちなみに、左打ちは最初からで「初めてバットを持った時には左で打っていたんです。でも、右利きなので小学生の頃は右打席にも立っていたのですが、やはり左打ちの方が一塁ベースに近くて有利なので、中学に入ってからは左打席一本でやっています」。

 その中学時代は中本牧シニアに所属。二塁手としてプレーし、3年春の全国選抜大会で準優勝。ジャイアンツカップも3位と好成績を収めたが、「完全にレギュラーということではなく、それほど活躍できなかったので悔しい思いもありました」と振り返る。

 そして、高校での進学先を考える時期となり、最初に祖父・元智氏に相談した時は「横浜に入っても、レギュラーは取れないぞ」と言われたという。「それで『他の高校へ行って、横浜を倒そう』と考えたこともあったのですが、小さい頃から『祖父と一緒に甲子園へ出たい』という思いがあったので、最終的には『レギュラーじゃなくても、一緒に野球がしたい』と思って、横浜に入ることを決断しました」。

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取材日も快音を響かせた

 このような経緯で名門・横浜の門を叩いた渡辺選手だったが、同級生には浅間 大基高濱 祐仁(共に日本ハム)といった錚々たる顔ぶれが揃っていた。「淺間も高濱もすべての能力が高くて、打ったら飛ばすし、肩も強いし、足も速い。だから、ライバルというよりは、『すごいな』と一目置いた存在で、それに比べると自分の実力は同期のなかでも一番下だと感じていました」。

 そこで、高い実力を持った選手のなかへ割って入っていくために、アピールポイントとして重視したのがバッティングだ。「あれもこれもやろうとして中途半端になるよりは、自分を信じて何か一つに集中して取り組んだ方が良いと思ったんです。それで、ひとまず守備は置いておいて、まずはバッティングを磨き、普段の練習から目立とうと考えました」。

 バッティングを強化ポイントに選んだのには理由がある。「弱点を克服するよりも長所を伸ばした方が良いのではと考え、じゃあ自分が誰にも負けないと思えるところはどこかと言ったら、それがバットコントロールだったんです」。実際、他のバッターが空振りしているボールでも、バットに当てられることが多かったという渡辺選手。こうして打撃強化に励むこととなったが、そのなかで特に大切にしていた練習は素振りだった。

 「ただスイングするのではなく、どういうボールに対してスイングするのか。ピッチャーをイメージしながら素振りをしていました。そして、自分の場合は納得できるスイングが何回できるかをテーマにしているので、例えば5回と回数を決めて最初の5スイングがすべて納得できるものだったら、そこで終えてもいい。もちろん、逆に夜遅くまで一人で黙々とスイングをしていることもあるので、そうやって毎日のスイング練習にメリハリを付けるのも良いやり方だと思います」。

[page_break:諦めないことで成長した3年間]

諦めないことで成長した3年間

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構えに入る渡辺佳明

 また、渡辺選手のバッティングを支える武器となったのが流し打ち。「元々、インコースが苦手だったので、内角のボールも逆方向へ打てるぐらいの技術を求めて練習しました。流し打ちのコツは、打つポイントをできるだけ自分寄りに引きつけて、あえて差し込まれるような形にし、そこからレフト方向へ押し込んでいくことです。この流し打ちに関しては、高校時代から淺間や高濱にも負けていないと思えるところでした」。

 そんな努力が実を結び、1年秋に背番号13を付けてベンチ入りを果たすと「嬉しくて、もっともっと頑張ろうと思いました」と、冬のオフシーズンはさらに振り込み。守備練習にも取り組んで翌春の練習試合で結果を残すと、遂にはファーストのレギュラーポジションを獲得。2年夏と3年春には甲子園にも出場した。「甲子園はすごく良いところでした。神奈川大会も観客は多いのですが、初めてヒットを打った時の大歓声は今も覚えています」。

 逆に高校時代で一番、悔しい思いをしたのも甲子園だ。「2年夏の3回戦で前橋育英(群馬)と対戦したのですが、同じ2年生だった高橋 光成投手(西武)のストレートが速くて完全に力負けしてしまいました」。

 そのため、大会後は速球対策をしたという。「同じ神奈川県内の東海大相模に140キロカルテット[青島 凌也(東海大)、佐藤 雄偉知(Honda鈴鹿)、吉田 凌(オリックス)、小笠原 慎之介(中日)]がいたこともあって、140~150キロにマシンを設定して打席から5~6歩前に出たところからバッティング練習をして、目を慣れさせていました」。

 しかし、最後の夏は神奈川大会の準決勝で、その東海大相模に3対5で敗戦。「個人的には3安打でファインプレーもできたのですが、試合には負けてしまいました。ただ、9回の2アウトの場面で、2年生の時から一緒にスタメンでやってきた川口凌(法大)、高濱、そして自分の3連打で1点を返すことができたのは、とても印象に残っています」。

 高校の3年間では「諦めないこと」を学んだという渡辺選手。「諦めてしまったら成長も止まってしまう。諦めないで野球をやれたから今の自分があるのだと思います」。そして、横浜に入ったことに関しては「負けず嫌いな性格なので、打てない球があっても『打ってやろう』と思ったし、できないことは『やってやろう』とモチベーションに変えて練習することができました。だから、横浜高校というレベルの高いチームに行って良かったと思っています」と語った。

[page_break:厳しい環境でこそ燃えて、楽しい]

厳しい環境でこそ燃えて、楽しい

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ノックを受ける渡辺佳明

 大学も「レギュラーを獲れなくても、上手い選手が多い強いチームでやりたかった」という渡辺選手は東京六大学リーグの雄・明大に進学。当初は投手の質の高さに面食らったという。

 「ストレートを打つのは高校時代にかなり練習していたのですが、変化球の鋭さに驚きました。それで、このボールを打つにはとにかく慣れるしかないと思って、ブルペンで投球練習をしている上原健太(日本ハム)さんや柳裕也(中日)さん、星知弥(ヤクルト)さん、齊藤大将(西武)さんにお願いをして、打席に立たせてもらっていました」。

 1年時はなかなかヒットが打てずに苦しんだものの、2年秋には打率.359を記録し三塁手としてベストナイン。3年秋に2度目の受賞を果たすと、今春は遊撃手として初めてベストナインに選出された。

 「本格的にショートを始めたのはこの冬のキャンプから。サードは速い打球が多いので反応とハンドリングがメインなのですが、ショートは打球に合わせて足を動かし自分で捕りに行くポジションなので、かなり違いを感じました。ただ、上手くなるには、とにかく数を捕るしかないので、ひたすらノックを受けてようやく見られるようになってきたかなというところです。送球に関しては、ずっと自信を持っている部分なので深い位置からでも安定した送球をしていきたいです」。

 また、バッティングについては「春季は3割を打ちましたけれど、打率を求めすぎて当てに行くこともあり、自分としては満足できませんでした。そこで、この夏は力強く振ることを課題に掲げて練習をしたのですが、その成果が出て今秋は振り負けないバッティングができていると思います」。

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厳しい環境に飛び込むことを楽しみにする渡辺佳明

 フォームについては「今、気を付けているのは、体重が前に行かないようにすること。そのために右足を上げることで左足にタメを作り、そのままクルリと回るイメージでスイングするように心掛けています。あとは良い回転の打球を飛ばしたいので、ボールをバットに乗せながら叩くイメージで打っています。そうやって理想通りに打つことができれば、キレイなライナーの打球を飛ばすことができるんです」。

 そして、実力が認められ、昨夏と今夏は侍ジャパン大学代表にも選ばれた。「昨年は楠本泰史(DeNA)さんをお手本にしていました。元々、バッターとしてのタイプが似ているところもあったのでタイミングの取り方などを聞きに行き、一からアドバイスをしていただいたんです。今夏は、日米大学野球ではあまり出番がなかったんですけれど、その悔しさを糧にして続くハーレム大会ではほぼスタメンで出場することができ、チームも優勝できたので自信になりました」。

 そして、10月25日には運命のドラフト会議が控えるが、プロ志望届は秋のリーグ戦が始まる前に早々と提出。「志望届を出すことでプレッシャーはかかりますが、やることは一緒。自分の力を出し切ればいいと思っていますし、むしろ強い思いを持ってリーグ戦に臨むことができると考えていました」と話しており、「プロに入れたら、周りはすごい選手ばかりなので、良いものを見て、聞いて、今よりもすべての部分を伸ばしていきたい」と抱負を語っている。

 「厳しい環境の方が燃えるし、楽しい」という言葉通り、そもそもの出自からプレッシャーを感じてもおかしくない環境にありながら、ここまで成長してきた渡辺選手。その精神的なタフさは、今後も彼の野球人生を支えることになるだろう。

文=大平明

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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