大学ナンバーワン実戦派右腕・松本 航 投手(日本体育大)が投球フォーム論・変化球論を伝授 vol.2
vol.1では松本航(日本体育大)の大学ラストイヤーに取り組んでいることを中心に迫った。vol.2の今回は彼の投球フォームと変化球に対しての考え方について紹介をしていく。
自分の動きを習慣化させる 大学ナンバーワン実戦派右腕・松本 航 投手(日本体育大)の投球論 vol.1
松本航流 低めに伸びるストレートを投げる方法は?
松本航(日本体育大)のブルペンの様子
――いろいろなピッチャーに訊くと、低めは大事だと言いますが、低めを投げようと思ったら垂れますよね、やはり。松本投手もそういう気づきがあって変えたわけなんですよね
松本:そうですね。調子の善し悪しでは今でも垂れることはありますからね。
――それはいつぐらいから気づいたんですか
松本:考え出したのは大学1~2年の時です。
――松本投手の場合、どれぐらいで身に付きましたか
松本:まだ身についてはいないと思うんですが、投げられることが多くなってきたのは3年の秋ぐらいです。
――松本投手のストレートは、握りはどういう感じですか?
松本:そうですね、あまり変わらないと思うんですが、これぐらいで少し間を空けるぐらいです。
これが150km/h右腕のストレートの握りだ!
――けっこう深く握る人と浅く握る人がいますが、松本投手の場合はどうですか?
松本:僕は深めだと思います。ちょっとだけなのですが。
――リリースの時はどういうことを意識して投げますか
松本:下からパワーが生まれると思っているので、下から身体を使って上げてきたパワーとか遠心力を最後この一点に集めて、リリースまで持っていくような感じで投げてます。
――ピッチャーにとって、フォームの力の入れ加減が大事だと思うんですが、松本投手はどういうふうにリリースまでうまく力を伝達していますか?
松本:僕はONとOFFが大事だと思っているので、フォームの中でもリリースでしっかり100%出せるために、ONにするために、OFFとONをその前の段階で作るというイメージで、僕は脚を上げる時に一回力を入れてONにして、また脱力して、またONにするみたいな。
――脚を上げて力を入れて、ちょっと沈み込む時にOFFにしてから、またONにする
松本:そうです。
[page_break投球フォームは自分の力をしっかりと伝達ができる動きを追求すること]
投球フォームは自分の力をしっかりと伝達ができる動きを追求すること
高校日本代表とのワンシーン
――斬新ですね。人によってはリリースするまでゼロで、リリースの時に100みたいな人もけっこういて、松本投手の感覚はけっこう特殊で、筆者にとっては初めて聞いた感覚なのですが、これはどれぐらいで気づいたんですか
松本:これもやはり大学1年生から2年生ぐらいの時です。まあ“考え出した”というか、いろいろ考えた上で良いんじゃないかなと思って。
――高校時代から松本投手は凄いピッチャーだったじゃないですか。そんな意識でもなかったんですか。
松本:そうです。高校の時はやはり、変化球を投げたいとか、速いボールを投げたいとか。質がどうとかそういうのはあまり意識したことが無かったので。
――今回のキャッチボールを見ていても、短い距離で半身のキャッチボールをやられていました。踏み出す足を普通の人は開くじゃないですか。開かないで投げてましたよね。あれはどういう意図があってやっているんでしょうか?
松本:あれは身体を開かないということと、投球フォームの中でパワーロスをしないように、しっかり打者方向に力が伝わるように右足の送り出しをすることと、あとは自分の芯のちっちゃい動きで大きい力を出すということを意識してやっています。
――これも大学1、2年ぐらいから始めたことですか
松本:これは大学3年生の大学ジャパンの時に、善波さん(現・明治大監督)からアドバイスをいただいて実践をしています。
――それをやることで、力の伝わり方は変わってきたんですか
松本:そうですね。パワーロスがあまり無くなってきたのと、リリースの感覚が感覚的に良くなりました
――これはやはり松本投手のようなフォーシーム、下半身主導のピッチャーの方が合う感じなんでしょうか
松本:どうなんですかね。でも野球はタイミングが大事だと思っているので、下半身の動きと上半身の動きを合わそうとするとけっこう難しいところがあって、その動きが合ってくるとリリースまで力がうまく伝わっていくと思うので、タイミングを意識しています。
キャッチボール中の様子
――取材日遠投を観させてもらったんですが、センターバックスクリーン近くからライトのポール際までで助走無しで投げてノーバウンドは本当に凄いと思いました。
松本:僕、助走をつけるとあまり投げられないタイプで、ノンステップの方が身体をうまく使えるので。助走するとタイミングがおかしくなっちゃうので、助走をつけるのはあまり得意ではないです。
――人によって違いますよね。松本投手は身体の芯でコマのようにうまく回っている感じがしたんです。それでうまく身体の芯が回転して投げられている感じがしたんですが、いかがでしょうか。
松本:僕は遠投は身体を大きく使うという意識でやっているので。意識しているのは胸郭です。胸をしっかり開いて投げることを意識しています。
――その身体の回転が非常にうまいんじゃないかなと見ていて、脚の上げからうまく自分のタイミングを意識してやっているんだろうなと。そこがうまく合っていないと一回下ろして、また合ってからまた投げているように見えたんですが
松本:ああ、そうですね。タイミングを合わせることは意識しています。
――たまにスーッと伸びていくのと、ライナー性以外にも山なりの軌道で投げる時はありますが、あれは何か意味があるのでしょうか?
松本:いや、特にないんです(笑)。何か大きく使いたい時に、身体全体を使ってみたいな感じでゆっくり投げたりする時もありました。
[page_break自分が得意とするのはスプリット、ツーシーム その理由は指関節の柔らかさにあり]
自分が得意とするのはスプリット、ツーシーム その理由は指関節の柔らかさにあり
得意球のツーシーム(左)スプリットの握りだ!
――松本投手は変化球も凄いと思うんですが、何が一番得意なんですか?
松本:スプリット、ツーシーム、落ちる系ですかね。
――スプリット系はどういうふうに投げてるんですか
松本:スプリットはこうやって投げてます。
――意識する時はやはりストレートと同じような感じで腕を振るんですか
松本:そうですね。ストレートより振るぐらい。
――ストレートより腕を振る。
松本:はい。どうしても緩くなってしまうので、ストレートより振るぐらいの感じです。
――松本投手のツーシームは、一見シュートに見えるんですよ。カミソリシュートみたいな。
松本:そうですね。いい時はこっちに曲がるんですけど。ツーシームとスプリットは、基本握りは一緒なんですけど、ツーシームは第二関節で全部持つイメージで、こうやって握ってます。
驚きの関節の柔らかさ!
――第二関節! それは凄いですね。それでどういうふうに弾くんですか
松本:普通に、真っ直ぐ投げてます。(真っ直ぐいってくれ!)と思って投げます。でもいかないので(笑)、それがいいかなと思って投げてます。
――あと松本投手は指の関節がすごく柔らかいですね。
松本:おかしいんです、人間的に。人類的におかしい。脱臼してますもん。でも、だからスライダーが難しくて、なでるような感じになるので、カーブみたいなスライダーになってしまうので、そこは自分の中で嫌なんです。だからカットボールが限界です。
菅野智之さん(巨人)みたいにキレのあるスライダーを投げたいんですが、どうしても投げられなくて。
自分の指だと、挟む球や抜く球の方が合っていると思います。
――確かに。今、プロの主流のスライダーは小さいですもんね。
松本:いかに真っ直ぐな軌道に乗せるかみたいな感じらしくて、僕も意識はしてるんですけど、やはりこうなっちゃうと、プロのレベルの打者だと(あ、変化球)って思ってしまうみたいで。いかに最後まで真っ直ぐの軌道に乗せるかが大事です。
vol.2はここまで!最終回となるvol.3では松本投手がどのように調子をキープするのか。松本投手の独自の調整方法とプロへの意気込みを話してくれました!最終回もお楽しみに!!
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文=河嶋 宗一