目指すはトリプルスリー!研究心豊かなスラッガー・山下航汰(健大高崎)【後編】
高校通算75本塁打を誇る山下航汰(健大高崎)選手。後編では苦手のインコースを克服するために打撃改造を行っていく。3年間の成長やドラフトへ向けての意気込みを語っていただいた。
通算75本塁打の礎を作った中学時代と高校1年時の打撃改造 山下航汰(健大高崎)【前編】
冬場にインコース打ちの特訓が実り、さらに打撃開花
鋭いスイングをする山下航汰
――そこからはすぐに修正に取り組めたのでしょうか。
山下航汰(以下、山下): いや、2年秋までには間に合わなかったので、取り組んだのは2年冬の2月ぐらいからです。葛原美峰コーチ(コラム:健大高崎(群馬)葛原美峰コーチ流ゲームプラン立案メソッド 「木」ではなく「森」を視る【Vol.1】)からアドバイスをいただいて、小学生用の金属バットで右手で払う練習をしたり、右足を大きく開いた状態からティーをひたすら打ったり、マシン打撃ではインコースに設定してもらって打つようにしました。大事にしたのは右手の肘をうまくたたんで打てるかということでした。
―― 一冬開けて手応えをつかんだのでしょうか?
山下: 上手くいったと思います。3月上旬に練習試合解禁になるんですけど、その時もその練習をずっとやっていたので、練習の成果を試合で試し、試合で残った反省を練習に生かすというやり方を行いました。試合をやると、練習だけでは分からなかったものが分かるので、比較的インコース打ちはできるようになっていたんです。
―― インコースを打って本塁打にした試合はあったのでしょうか?
山下: 春の県大会の前橋商戦と前橋育英戦です。前橋商戦は自分が苦手にしていたインコースストレートを打ち返すことができて、(前橋)育英戦ではインローのスライダーを本塁打にできたので、完成形だなと葛原コーチに言われました。
――また山下選手はグリップの位置が低い構えをしていますよね。あれはどういう意図があるのでしょうか?
山下選手が構えたとき、グリップ位置が低いのはインコースを打つため
山下: あれもインコースを打つためです。以前はグリップを高く掲げていたのですが、あれだと左肩に力が入りすぎて、バットが出てこなかったんです。そのためグリップを下げ、上体も少し下げてリラックスした構えに今年から変更しました。それもうまくいっていると思います。
――また、山下選手は1番打者を打っていて走塁技術の高さも光りました。
山下: 健大高崎で走塁リーダーをやっていたんですけど、僕は足は遅い方で、今井佑輔や小林大介の方が全然速いですけど、葛原美峰コーチの息子である葛原毅コーチ(関連記事:高崎健康福祉大学高崎高等学校(群馬))から「お前は走塁の勘が鋭い」といわれまして。投手の癖を盗んだり、また直観で「けん制が来るな」「走れる」というのが浮かぶんですよね。それをみんなに教える意味で、リーダーを務めることになって、本来ならば、3、4番を打つ役割だったと思うんですけど、僕以外にも長打を打てる選手が多くなったので、1番を任されるようになりました。
――高校生の投手を見ていると、そういう癖が分かるのですか??
山下: 何かじんわり分かります(笑)僕は盗塁成功率は高いと思います。数で行ったら小林や今井ですけど、いけると思ったら大概成功していました。
――ラストシーズンはいかがでしたか。
山下: 春は県大会まではよかったんですけど、関東では調子を崩していたので、最後の夏の打撃内容は全然でした。まず1回戦の時に前に突っ込みながら打っていたので、後ろに残すことを意識しました。ただ後ろに残しすぎて、ドライブ回転が多くなってそれがずっと修正できないまま終わりました。前橋育英戦では(普段なら)本塁打にできている球も、ライト前に終わってしまいました。
[page_break: プロではトリプルスリーを狙える選手になりたい]プロではトリプルスリーを狙える選手になりたい
山下航汰の座右の銘
―― 夏休みはどういう練習を行ってきたのでしょうか?
山下: 課題である守備も葛原先生に教わって、「マシンで捕れるか、捕れないかのところにボールを飛ばす設定にすることが外野手は一番の練習だよ」と言われて、トレーニング面では、上半身と下半身では下半身が弱いので、下半身の強化として走り込みを行ったり、筋トレもしています。打撃は葛原コーチからインコースの裁きが良くなれば、木製でも打てるといわれて、これからはインコースの裁きも取り組もうと思っています。
―― 葛原コーチに教わって野球観は変わりましたか?
山下: 葛原コーチの指導のおかげで僕は変わったと思います。葛原コーチの教えは「ああしろ、こうしろ」ではなく、「とりあえずやってみようか。そこから継続するかは自分の感覚次第」というやり方で、「どういう感じか?」と聞かれて、「こういう感じ」で答えたら、「その感覚で合っている。じゃあやってみろ」と教えてくれる方です。自分の考えや感覚を聞いて、そのうえでコーチングしてくれる方でした。2人で練習していたのは楽しかったですし、面白かったです。
―― 木製バットの練習はいかがでしょうか。
山下: 木製バットの練習は現役時代から取り組んでいます。ただ木製バットは難しいです。金属バットのようにうまく伸びていかないんですよね。さく越えはなかなか打てないですね。先ほども話したようにインコース打ちに取り組んでいます。
――プロ野球ではどういう打者を参考にしていますか?
山下: オリックスの吉田正尚選手です。自分と変わらない身長なんですけど、すごい飛ばすじゃないですか。吉田選手の動画を見て、研究をしています。
―― では最後に、プロ入りが決まった場合、どういう選手になっていきたいでしょうか。
山下: 打率を残して3割打者、30本塁打、30盗塁も決めてトリプルスリーが決められる選手になりたい。ホームランを打つよりも打率を残す選手の方が僕には合っているかなと思います
取材後記
実際に話をしてみても自分の取り組みを明確に話せる頭の良い選手だと実感した。青柳監督も、指導者陣も「向上心が強く、よく考えて野球をやっている」と山下の姿勢の良さをほめていた。
また後輩の女子マネージャー5人は「山下さんは本当に大人の方です!」と絶賛。2年生の佐藤 優菜さんがこんなエピソードを教えてくれた。
「去年、新チームがスタートした時、A、B、Cとチームを均等にわけて試合をするんですけど、Cチームの主将が山下さんでした。試合をやる前にそれぞれの決意を書くんですけど、山下さんは自分のことだけではなく、Cチームにはいった選手たちにメッセージを書いていたんですよね。激励だったり、その選手へのアドバイスだったり。それを知って本当に大人だなと思いました!」
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文=河嶋宗一