140キロを記録した遅咲きのエース 伊藤諒成(唐津商)
NHK杯佐賀県高等学校野球大会で、140キロを記録した伊藤諒成。実は高校入前のポジションは捕手だった。遅咲きのエースがいつ投手に転向したのだろうか?
140キロを記録した伊藤諒成の巻き返し
伊藤 諒成(唐津商)
伊藤は、高校に入学するとポジションを二塁手に変更し、その後再度捕手に戻っている。ただ唐津商の捕手と言えば、1年の夏から公式戦でマスクをかぶっている土井克也がいる。このことについて伊藤は、「同じキャッチャーに土井がいて、この先どうなるんだろうと思った」と語っている。
そんな時に、吉富俊一監督が伊藤に言った。
「お前ピッチャーしてみろ」
全くピッチャーをやるということは考えていなかった伊藤にとって、驚きの言葉だった。
もちろん、急造投手がいきなり勝てるほど甘くない、「初めのうちは自分のせいでサヨナラ負けとか、負けたのはほとんど自分のせいでした。」と伊藤は語っている。
ただし、伊藤の巻き返しはここからはじまる。
「吉富先生が自分のためのランメニューなどを作ってくれて、冬の走り込みとか自分だけプラスアルファでメニューを組んでくれたので、スタミナが2年の夏と比べて変わりました。投げていて、疲れなどを含めて全然違いました。」
と冬場の練習を通して着実にステップアップしていく。
フィジカルだけでなくメンタルも成長していく。その転換点となったのは2年生の夏の大会だ。準々決勝で鳥栖と対戦して後2アウトで勝利というところまで来て、逆転負けをしている。
伊藤は当時についてこのように話してくれた
「9回表1アウトまでとっていて、あと二人アウト取ればというところで野手のエラーからピンチを作って。自分が降板して違うピッチャーが投げて試合に負けたんですが、野手のエラーなどの後にピッチャーが抑えないといけないというのを身にしみて感じました。その後から意識が変わりました。」
急造投手が、フィジカルを鍛え、マウンドでの経験を活かし、メンタルを鍛えながら急成長して、いつの間に唐津商のエースに駆け上がっていった。
そんな、遅咲きのエースの成長速度に、吉富監督も期待している。「彼は本当に伸びましたね。伊藤はさらに伸びます。」と次のステージでの期待を隠さない。
伊藤もまた、自分の成長を止まらせる気はない、「則本 (則本昂大・楽天)選手のようになりたいです。球速アップもそうですし、球のキレとか、低めの制球力とかもつけたいと思います」と力強く語った。
現在の伊藤について、球を受けていた土井は、「伊藤は、結構球種が多くコントロールが良いです」と話す。伊藤自身は自信のある球種について、「変化球のツーシームです 。自分の得意な変化球になります。130キロのツーシームで、ストレートとさほど変わらないスピードです。変化量なども結構自信があります」と語る。これが、伊藤の現在地である。
最後に、伊藤はバッテリーを組んでいたプロ注目の土井に
「ここからはチームメイトでなくなります。いつか土井と戦ってみたいという気持ちはあります。土井のことは、抑えます!」と力強く言った。いつか土井と勝負するためにも、さらなる成長を続ける覚悟だ!
編集後記
伊藤諒成と唐津商の縁は切っても切れない、伊藤の父と兄も唐津商でプレーしていた。本人も「小さい頃から唐津商業と言うのが染み付いてる」という。唐津商魂を胸に今後の成長に期待したい!
取材=田中 実