冷静な自己分析能力とメンタルコントロール 藤原恭大(大阪桐蔭)の真価が見られるのはこれからだ!
9月3日から開幕した第12回 BFA U18アジア選手権。2大会連続のアジア制覇に燃える侍ジャパンU18代表の選手たちをピックアップしてインタビューしていく。今回は藤原恭大(大阪桐蔭)。ドラフト1位候補と噂される走攻守三拍子揃った大型外野手の活躍の背景とは?
ケガをプラスに 「4スタンス理論」で打撃理論を深める
藤原恭大(大阪桐蔭)
きっかけは長く痛めていた膝のけがにある。選抜ではまだ完治しきれていない中、優勝に貢献。夏の大会に合わせて藤原は大阪大会ではベンチ外となった。この治療期間で藤原は自分の打撃を見つめ直した。
「ケガがあったから自分の打撃を見つめ直すことができました。あまり下半身が使えていなかったので、下半身を使うことを意識した打撃に改造しました。ケガをプラスととらえ、自分を変えることができました」
結果、藤原はこの夏大暴れを見せた。
北大阪大会 22打数14安打 2本塁打15打点 打率.636
夏の甲子園 26打数12安打 3本塁打11打点 打率.462
充実の内容を残し、春夏連覇に貢献した。そしてU-18では浦和学院の蛭間拓哉と同部屋になると、蛭間と打撃理論談義をかわし、部屋で素振りをして見てもらうなど、フォームのチェックを怠らなかった。そして蛭間のアドバイスで「4スタンス理論」に出会った。藤原は「B2タイプ」。
この理論は藤原にとって大きな気づきがあった。
「そういえば、ホームランを打った試合を見ると、後ろ重心になっているんですよね。それに気づいてから打撃練習でもこだわっていますし、打球も飛んでいます」
打撃練習では人一倍鋭い打球を連発し、試合になればヒットを記録する藤原だが、「調子はまだ上がっていないんです」と繰り返していたが、韓国戦の前の打撃練習で良い感覚をつかんだ。
「調子のよいときと比べると、足をゆっくり上げすぎていたところがあったんです。でも、韓国の投手は球速が速い投手だと聞いていましたので、足の上げをぱっと上げてすぐに踏み出す。そうすると、しっくり来て、良い感覚で入ることができました」
スリランカ戦(左)韓国戦(右)
強力な韓国投手陣にも屈しなかった。2打席目、左腕のキム・ギフンに対し、「ストレートはあまり角度を感じなかったので、ストレートに狙いを絞っていました。コースではなく、球種で絞っていたので、インローにも対応できました」
インローのストレートを振りぬくと、打球はライトの頭を超える長打に。全速力でベースを駆け抜けた藤原は「二塁ベース付近で行けるなと思い」と三塁に陥れた。そして第4打席は、140キロ後半の速球を投げ込んでいたウォンティンに対してもストレートを振り抜き、右前安打。多くの選手がウォンティンの速球に苦しむ中、藤原は「あまり速さを感じませんでした」と頼もしいコメント。そこでこう質問してみた。
速く感じないというのは、打撃フォームが良くなって、感覚が良くなったことでボールがよく見えているのでは?
「自分にとって打撃の感覚が良いときは投手のボールが遅く感じる、見えているのかなと思います」と手ごたえを感じていた。
打撃の要がこうして調子を上げているのは頼もしい限りだ。宿敵・韓国に負けたとはいえ、藤原は次のスーパーラウンドへ切り替えていた。
「この試合、勝っても負けても終わりではありません。だけど、みんな負けて落ち込んでいて、『切り替えていけよ』と声をかけました。スーパーラウンドへつなげていかなければなりませんし、あとは3連勝するしかない。僕の中では得られたものが大きく、収穫があった一戦です」
このコメントの後、いつもより藤原の顔がより精悍に見えたものだ。
国内合宿・代表戦を通じて7試合連続安打を放っている藤原恭大。この高い自己分析能力、メンタルコントロールを見ると、真価を発揮するのはこれからとなるだろう。
取材=河嶋宗一