何もかも大谷翔平。渡邉勇太朗(浦和学院)が持つ独特の感性
9月3日から開幕した第12回 BFA U18アジア選手権。2大会連続のアジア制覇に燃える侍ジャパンU18代表の選手たちをピックアップしてインタビューしていく。今回は渡邉勇太朗(浦和学院)。190センチの長身から繰り出す最速149キロのストレートとスライダー、ツーシームを操る大型右腕だ。今回は独特といえる渡邉勇太朗(浦和学院)の世界観、成長の秘訣に迫る。
トップ代表となってWBCで投げられる投手になりたい
渡邉勇太朗(浦和学院)
独特の雰囲気を持った選手だ。吉田輝星(金足農)や柿木蓮(大阪桐蔭)のように、気持ちを出す選手ではない。どこかのほほんとしているが、話してみるとなかなか理論的。また仲間にいたずらしたり、からかって遊んでいる様子を見ると、そのつかみどころのなさは大谷翔平(エンゼルス)と似ている。吉田とは別の意味で自分の世界を持った選手だといえる。
先発マウンドに登った渡邉勇太朗(浦和学院)。先頭打者に粘られたが、9球目はスライダーで空振り三振。そこから「速球主体。速いスライダーと遅いスライダーを織り交ぜました。遅い変化球のほうが合わせられやすいので、速めのスライダーで」と、常時140キロ前半と120キロ中盤の縦スライダー、130キロ前半の横スライダーを低めに集め、三振を量産。3回まで無安打、6奪三振の好投を見せた。
渡邉は「自分の中ではまだ調子は上がっていない。その中でも良い球は投げて抑えることができてよかったです」と振り返った渡邉。次につながる無失点投球だった。
今ではミレニアム世代を代表する剛腕として注目される渡邉勇太朗(浦和学院)だが、今年にかけて140キロ後半の速球を計測するようになった要因。それは4スタンス理論にある。
同じ浦和学院の蛭間拓哉も「4スタンス理論」でパフォーマンスアップを実現した1人だが、渡邉はその恩恵を受けた。浦和学院は新しく来たトレーナーの影響で、今年の1月頃から「4スタンス理論」が浸透。渡邉は「B2タイプ」。その「B2タイプ」の代表する投手が大谷翔平なのである。そこから大谷翔平のフォームを模写して、マネする日々が続いた。渡邉はフォームの力の入れどころが変わった。
「軸足を意識します。右半身を意識して、重心を後ろに残しながら投げるイメージですね」
また4スタンス理論に出会ったことで野球観は変わった。
「変わりましたね。それまでも僕の中では、良いイメージで投げることができたボールはよいと思ったのですが、4スタンス理論を知ることで、投げやすくなりましたし、軸というものを意識するようになりました」
自分の体の使い方を理解し、さらに踏み込んでフォーム改造ができた。そこが、渡邉の成長を生んだ。
ただ[stadium]甲子園[/stadium]のピッチングと比べると、自分のピッチングに満足していない。
「まだ[stadium]甲子園[/stadium]の時と比べるとゾーンに入っていないかなと思います。自分の中でスイッチを入れようとしてもまだまだ。甲子園の時と比べて試合時間も違いますし、雰囲気も違いますし、力量も違う。言い訳になってしまうんですけど、なかなか試合に入りにくいところはあります」
渡邉は「良いイメージ」を大事にして試合に入ることをこだわっており、現役中は、自分が好調な試合の時の映像を見てから試合に入り、スリランカ戦の試合前は大谷が165キロを投げた試合の映像を見て、試合に入った。そこはやはり投手といえる。
この大会について、将来につなげたいと考えている。
「いずれはトップ代表となってWBCで投げられる投手になりたいですし、今回の国際大会はなかなか経験できないので、今回の経験を将来につなげたい」
こうして、初の国際大秋デビューを3回無安打デビューを飾った渡邉勇太朗。次の登板はスーパーラウンド以降。韓国、台湾といった強豪国の対戦が予想される中、渡邉はスイッチが入ったピッチングを見せることができるか。
取材=河嶋宗一