来年、日本のエースになるために。修行に臨む金沢の怪腕・奥川恭伸(星稜)
9月3日から開幕する第12回 BFA U18アジア選手権。2大会連続のアジア制覇に燃える侍ジャパンU18代表の選手たちをピックアップしてインタビューしていく。今回は奥川恭伸(星稜)だ。2年生ながら唯一、代表に選出された奥川。最速150キロのストレート、キレのあるスライダーでコンビネーションにするピッチングは今年の3年生右腕を混ぜてもトップクラス。初めて世界の舞台を戦う右腕はどんな気持ちでこの大会に臨むのか。
アジア大会を勉強の機会として
奥川恭伸
2019年のドラフト候補は投手が豊富だ。154キロ右腕・佐々木朗希(大船渡)、甲子園で150キロを計測した井上広輝(日大三)、奥川恭伸(星稜)、岡山大会で150キロを計測した西純矢(創志学園)など140キロ後半の速球を投げる投手が多数。その中で2年生ながら代表に選出されたのが奥川である。
奥川は合宿初日の意気込みについてこう話している。
「2年生1人だけで、かなり緊張していますが、先輩とはどんどん話して仲良くしていきたいですし、先輩投手は僕にとって、全員がお手本になる存在。どんどん盗んでいきたい」と、今回のアジア大会を勉強の機会として捉えていた。
そしてピッチングの面では「いつも通りのピッチングができれば」と話していたが、先発した明治大戦はそれができなかった。
いきなり三者連続安打を浴び、無死満塁のピンチ。その後、二者連続三振を奪ったものの、和田慎吾に適時打を打たれ、先制点を許してしまう。さらに2回表にも2点を失い、2回まで被安打5、3失点。だが、奥川はここから持ち直した。3回以降、カットボール、内角攻めを増やし、3回、4回を0点に抑え、5回表には内野ゴロの間に1点を失ったが、それでも、集中打は打たれず、5回を投げ切った。
奥川は「改めて大学生のレベルの高さと自分の実力不足を痛感した試合でした。しのげるのがスライダーしかなかった。ストレート、スライダー以外の変化球の精度の低さが課題となりました」と打たれた要因を淡々と振り返った。
奥川はこの1年、上出来ともいえる内容を残した。まず選抜ではストレートの強弱をつけた完成度の高いピッチングで、8強入りに貢献。夏の石川大会では15イニング無失点。そしてこの夏の甲子園では最速150キロをマークし、12イニング5失点と及第点といえる結果を残した。
勉強のために臨んだ今回のアジア大会。大会前に大きな宿題が見つかった。奥川は「ストレートがまだまだであるということ、練習し始めたチェンジアップ系の変化球はしっかりとマスターしたいですし、カット系の変化球や、そのほか制球力を含めてすべてレベルアップしたいと実感しました。」
奥川にとって悔しい結果かもしれないが、奥川の成長を考えればこれ以上ない経験だ。高校3年間のうちに東京六大学・明治大学のレギュラー相手に投げられる経験はそうはない。改めてどういう投球をすれば抑えられるのか、理解をしたはず。それが実践できるのは1年後になるかもしれない。
来年、星稜のエースとして、そして2019年U-18ベースボールワールドカップのエース候補として、このアジア大会を大進化のきっかけにしたい。
取材=河嶋宗一